3月の添削と寸評をいたします。いつものとおり私なりに解釈し、 |
私なりに添削したものです。一つの考え方、一つの方法であると理解してください。 |
さて、若草句会も3回目になりました。月を重ねるごとに良い句が沢山あります。 |
どうぞ気軽に投句してください。 |
. |
俳 号 |
1 川沿いの足湯に浸かり春の雪 |
さつき |
湯煙のなか雪がひらひら舞っている。湯の街でよくみられる光景。幸せなひとときである。 |
|
. |
|
2 鳥の来て遊べる畑のはだら雪 |
|
はだら雪は春の淡雪。鳥が虫を盛んに啄んでいる。春はもうすぐそこです。 |
浩 風 |
. |
|
3 野良生えの数多(あまた)芥子菜濃き緑 |
初 霜 |
<添削> 野良生えのあまた芥子菜鳶の笛 |
|
「野良生え」で良いと思いますが、広辞苑では「自然生え」とあります。 |
|
芥子菜は丈夫な野菜で荒地でもよく育ちます。漬け物にして食べるとおいしいですね。 |
|
下五の「濃き緑」は説明になるので「鳶の笛」にしてみました |
|
. |
|
4 庭の木々あれよあれよと雪花なる |
媛 香 |
<添削> 庭の木々あれよあれよと雪の花 |
|
「新日本俳句大歳時記」にも「雪花」という季語はありませんが。どんなものでしょう。 |
|
みるみるうちに雪の花ざかりになるという、美しい光景。 |
|
. |
|
5 春の雪犬も喜ぶ散歩道 |
初 霜 |
素直な句です。犬を連れて散歩している親子連れ。和やかな情景。 |
|
. |
|
6 受験生いよかん食べていい予感 |
そらまめ |
<添削> 伊予柑がとどく合格発表日 |
|
原句は詩的情緒に欠けます。「受験生」「伊予柑」は季語で、季重ねになります。 |
|
. |
|
7 日差し浴び梅の香りを潜りゆく |
哲 朗 |
いい句です。探梅行の感じがよくでています。 |
|
. |
|
8 小雀の笑顔夢見て雪払う |
蝋 梅 |
「小雀」「雪」は季語です。季語は原則一つにしましょう。 |
|
原句での景がよく分かりません。ご免なさい。 |
|
. |
|
9 草の芽に大きな名札そっと付け |
いなご |
花にたいする細やかな愛情を素直に詠まれています。楽しみですね。 |
|
. |
|
10 夢二庭オブジェの舟の春深む |
媛 香 |
竹下夢二庭のオブジェの舟に深みいく春を感じたのでしょう。 |
|
. |
|
11 新築の鍵を受け取り苗木植う |
いなご |
ご免なさい。何を詠いたいのか私にはよく分かりません。 |
|
. |
|
12 欄間漏る影絵伸びたる雛灯し |
コスモス |
床の間に飾ってある雛人形の、回り灯籠の灯りが欄間から漏れてくる。 |
|
茶の間ではアニメでもみて楽しんでいるのでしょう。 |
|
. |
|
13 川岸の風に触れ合う猫柳 |
哲 朗 |
猫柳が銀色に輝いて待ち遠しかった春を感じとっている。 |
|
. |
|
14 眉目なき紙の雛の小さいこと |
媛 香 |
素直ないい句です。眉目なき雛がそれぞれの表情をしているのです。 |
|
. |
|
15 春の土草をもたげておりにけり |
浩 風 |
何でもないようなところを平明に詠まれています。 |
|
それでいて春の息吹をしっかり感じさせてくれます。 |
|
. |
|
16 梅まつり口尖らせて種(たね)を吹く |
さつき |
梅祭りでの一こま。口を尖らかせて実を吹く。おもしろい情景です。 |
|
本人は一生懸命なんでしょう。笑い声が聞こえてきます。 |
|
. |
|
17 春昼や口笛軽く童行く |
初 霜 |
近頃は昔ほど口笛を聞かなくなってきた。友達とどこかへ遊びに行くのか。 |
|
口笛も軽やかである。 |
|
. |
|
18 雪晴れて今朝大いなり峰つづき |
峰 生 |
<添削> 雪晴や近くに見ゆる神の山 |
|
リズム感がが今ひとつです。 |
|
. |
|
19 鶯のこゑ城北の裏通り |
彰 子 |
私の句です。終戦後3年間城北に住んでいました。鶯の鳴くのを聞き昔を思い出しました。 |
|
. |
|
20 さくら咲く声弾ませて電話口 |
千 柳 |
「 さくら咲く」は合格の知らせ。合格の喜びが伝わってきます。おめでとうございます |
|
. |
|
21 子供らの声華やぎて山笑う |
紫 水 |
<添削> 子供らのこだまを返す春の山 |
|
「声華やぎて」と「山笑う」は少し付きすぎ。 |
|
. |
|
22 菜の花を黄金に染める夕日かな |
そらまめ |
<添削> 潮の香をまふう菜の花畑かな |
|
なにもかも言っているので説明になります。つまり余韻がありません。 |
|
|
|
23 北国の春を見つけに一人旅 |
泉 |
<添削> 一目千本山桜また山桜 |
|
原句は具象性に欠けます。具体的な物に託して詠みましょう。 |
|
. |
|
24 小雨降るしまなみの橋霞みけり |
石の花 |
<添削> 船足の速まる主塔かすみをり |
|
「しまなみ海道」という名詞はありますが、「しまなみ」という名詞はありません。 |
|
すこし無理のようです。 |
|
. |
|
25 青色の申告おわり堀眺む |
菜の花 |
「青色申告」「確定申告」は季語に無いと思いますが。 |
|
. |
|
26 終電車過ぎてより消す雛の部屋 |
コスモス |
終電車過ぎる。お雛さまにお休みのあいさつをしてあかりを消す。幸せな一日に感謝。 |
|
. |
|
27 吹き飛ばすセピア色した梅の実(たね) |
さつき |
やや説明的になります。何かおもしろいところを詠みたいものです。 |
|
. |
|
28 引鶴に空あをあをとありにけり |
彰 子 |
私の句です。鹿児島県出水のなべ鶴が、毎日数百羽ずつシベリヤへ飛び立ちます。 |
|
動物の営みのすごさを感じます。 |
|
. |
|
29 古傷や暖炉見据えてほぞを噛む |
峰 生 |
いくら後悔しても及ばないのであるが、時々思いだしては悔やむのである。人間の弱さ。 |
|
. |
|
30 木漏れ日をあびて童ら笑い顔 |
泉 |
<添削> 木漏れ日の子に歩を合はす落椿 |
|
「木漏れ日」は季語にないようですが。 |
|
. |
|
31 啓蟄を告げて小鳥の飛び立ちぬ |
千 柳 |
「小鳥」「小鳥来る」は秋の季語です。 |
|
. |
|
32 啓蟄の土黒々と道普請 |
コスモス |
農道の工事をしているのでしょうか。土を掘り返すと地虫が沢山 |
|
出てきてそれを鳥が啄む。生物の営み。 |
|
. |
|
33 啓蟄の土持ち上げて蟻の列 |
哲 朗 |
<添削> 裏山に風鳴ってゐる蟻の道 |
|
「啓蟄」は春、「蟻の道」は夏の季語です。 |
|
. |
|
34 寒厨夫(つま)が十八番(おはこ)の夕餉菜 |
石の花 |
<添削> 寒厨夫(つま)が十八番(おはこ)の茶碗蒸 |
|
「寒厨」という季語にはじめてであいました。昨今では家の設備もよくなり |
|
、「寒厨」というイメージはなくなってきました。 |
|
寒いときは鍋物などがいいですね。「夕餉菜」という言葉はあまり耳に |
|
しませんので「茶碗蒸」にしてみました。 |
|
. |
|
35 又光るつららも今は命あり |
峰 生 |
<添削> また光る氷柱も今は命あり |
|
「つらら」を漢字にしてみました。漢字ほうがイメージが強くなるのではないでしょうか。 |
|
氷柱の一瞬をとらえ、そこに生命を感じる。今を大事に生きましょう。 |
|
. |
|
36 晴天に童子思い出す土筆採り |
菜の花 |
<添削> 夫に添い童子にかへる土筆採り |
|
中八音(字)になります。「晴天」はいらないと思います。 |
|
婦唱夫随、夫婦円満の秘訣です。童心にかえって土筆を採る。 |
|
. |
|
37 春雪のどさりと落ちる夕べかな |
浩 風 |
南国では雪はむしろ春先になって降ることが多い。雪質は柔らかく |
|
夕方にはもう屋根には雪がない。雪降ろしなど全く不要。 |
|
. |
|
38 目覚ましを止めてしばしの寒の朝 |
千 柳 |
寒いとなかなか起きにくいものです。思い切りが大切です。さあー、 |
|
今日も一日元気で頑張りましょう。 |
|
. |
|
39 しだれ梅庭を従え毅然たり |
蝋 梅 |
さぞ、立派なしだれ梅なんでしょう。今年も見事に咲いた自慢の梅が庭を独り占めしている。 |
|
|
|
40 残雪や畑に横たうバーコード |
蝋 梅 |
バーコードは日常語になりましたね。残雪をバーコードとみたてたのは |
|
おもしろいと思います。新しい感覚です。 |
|
|
|
41 うら若き初音追ひ越す山路かな |
紫 水 |
うら若い初音が、少し気になります。いつもの散歩コース。 |
|
今年も初音に出会う。清々しい気分になる |
|
. |
|
42 高速の春多工事の片車線 |
石の花 |
「高速の春」を「高速自動車道の春」というのは無理ではないでしょうか。 |
|
. |
|
43 空晴れて菜の花畑に集う波 |
泉 |
私には景がはっきり見えません。悪しからず。 |
|
. |
|
44 囀りやひとり遺りしとき想ふ |
彰 子 |
私の句です。小鳥が力一ぱい囀っている。私はいつまで元気でいられるか。 |
|
妻に先立たれたらどうしよう。 |
|
. |
|
45 六時すぎてまだ日が残る土筆摘む |
そらまめ |
日が長くなってきた。時間のたつのも忘れて、丸くなった背中に |
|
夕日を帯びて土筆をつんでいる。楽しいひと時。 |
|
. |
|
46 老人の蜜柑畑やいぬふぐり |
紫 水 |
<添削> 片手間な蜜柑園なり背伸びする |
|
「蜜柑畑」「蜜柑園」「密柑山」は冬の季語。「いぬふぐり」は |
|
春の季語です。一つの季語を活かして詠みましょう |
|
. |
|
47 道の駅夫の土産に草の餅 |
いなご |
<添削> 最終の土産に添える草の餅 |
|
今日は都合により、夫が留守番。夫は草餅が大好き、それも粒あんを好む。 |
|
土産は「SA」とか「道の駅」とかで買うものです。したがって「道の駅」を省略しました。 |
|
. |
|
48 好々爺や逝きて寂しい春の宵 |
ゆづき |
追悼句は難しいです。「逝きて」「寂しい」とどうしても感情がもろにでて |
|
感傷的になってしまします。なかなかさらりと詠めないものです。 |
|
. |
|
49 大寒の夜空瞬く北斗星 |
ゆづき |
今日は大寒。北斗七星がひときは輝いている。寒いなかしばらく星空を |
|
眺めていると天体にすいこまれそうである。 |
|
. |
|
50 椿さん呼び声高し露店かな |
ゆづき |
<添削> 呼び声に背中押さるる椿祭 |
|
「椿祭」「椿詣」「椿さん」は愛媛県では季語として認知されていますが、 |
|
全国版では季語として扱っていません。 |
|