平成17年3月1日〜平成17年3月20日 投句分
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互 選 句
第 3 回  披  講
3月の添削と寸評をいたします。いつものとおり私なりに解釈し、
私なりに添削したものです。一つの考え方、一つの方法であると理解してください。
さて、若草句会も3回目になりました。月を重ねるごとに良い句が沢山あります。
どうぞ気軽に投句してください。
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1 川沿いの足湯に浸かり春の雪 さつき
    湯煙のなか雪がひらひら舞っている。湯の街でよくみられる光景。幸せなひとときである。
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2 鳥の来て遊べる畑のはだら雪
    はだら雪は春の淡雪。鳥が虫を盛んに啄んでいる。春はもうすぐそこです。 浩 風
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3 野良生えの数多(あまた)芥子菜濃き緑 初 霜
 <添削> 野良生えのあまた芥子菜鳶の笛
   「野良生え」で良いと思いますが、広辞苑では「自然生え」とあります。
   芥子菜は丈夫な野菜で荒地でもよく育ちます。漬け物にして食べるとおいしいですね。
   下五の「濃き緑」は説明になるので「鳶の笛」にしてみました
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4 庭の木々あれよあれよと雪花なる 媛 香
 <添削> 庭の木々あれよあれよと雪の花
   「新日本俳句大歳時記」にも「雪花」という季語はありませんが。どんなものでしょう。
   みるみるうちに雪の花ざかりになるという、美しい光景。
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5 春の雪犬も喜ぶ散歩道 初 霜
    素直な句です。犬を連れて散歩している親子連れ。和やかな情景。
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6 受験生いよかん食べていい予感 そらまめ
 <添削> 伊予柑がとどく合格発表日
    原句は詩的情緒に欠けます。「受験生」「伊予柑」は季語で、季重ねになります。
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7 日差し浴び梅の香りを潜りゆく 哲 朗
    いい句です。探梅行の感じがよくでています。
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8 小雀の笑顔夢見て雪払う 蝋 梅
    「小雀」「雪」は季語です。季語は原則一つにしましょう。
    原句での景がよく分かりません。ご免なさい。
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9 草の芽に大きな名札そっと付け いなご
    花にたいする細やかな愛情を素直に詠まれています。楽しみですね。
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10 夢二庭オブジェの舟の春深む 媛 香
    竹下夢二庭のオブジェの舟に深みいく春を感じたのでしょう。
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11 新築の鍵を受け取り苗木植う いなご
    ご免なさい。何を詠いたいのか私にはよく分かりません。
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12 欄間漏る影絵伸びたる雛灯し コスモス
    床の間に飾ってある雛人形の、回り灯籠の灯りが欄間から漏れてくる。
    茶の間ではアニメでもみて楽しんでいるのでしょう。
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13 川岸の風に触れ合う猫柳 哲 朗
    猫柳が銀色に輝いて待ち遠しかった春を感じとっている。
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14 眉目なき紙の雛の小さいこと 媛 香
    素直ないい句です。眉目なき雛がそれぞれの表情をしているのです。
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15 春の土草をもたげておりにけり 浩 風
    何でもないようなところを平明に詠まれています。
    それでいて春の息吹をしっかり感じさせてくれます。
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16 梅まつり口尖らせて種(たね)を吹く さつき
    梅祭りでの一こま。口を尖らかせて実を吹く。おもしろい情景です。
    本人は一生懸命なんでしょう。笑い声が聞こえてきます。
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17 春昼や口笛軽く童行く 初 霜
    近頃は昔ほど口笛を聞かなくなってきた。友達とどこかへ遊びに行くのか。
    口笛も軽やかである。
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18 雪晴れて今朝大いなり峰つづき 峰 生
 <添削> 雪晴や近くに見ゆる神の山
    リズム感がが今ひとつです。
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19 鶯のこゑ城北の裏通り 彰 子
    私の句です。終戦後3年間城北に住んでいました。鶯の鳴くのを聞き昔を思い出しました。
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20 さくら咲く声弾ませて電話口 千 柳
「   さくら咲く」は合格の知らせ。合格の喜びが伝わってきます。おめでとうございます
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21 子供らの声華やぎて山笑う 紫 水
 <添削> 子供らのこだまを返す春の山
   「声華やぎて」と「山笑う」は少し付きすぎ。
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22 菜の花を黄金に染める夕日かな そらまめ
 <添削> 潮の香をまふう菜の花畑かな
    なにもかも言っているので説明になります。つまり余韻がありません。
23 北国の春を見つけに一人旅
 <添削> 一目千本山桜また山桜
    原句は具象性に欠けます。具体的な物に託して詠みましょう。
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24 小雨降るしまなみの橋霞みけり 石の花
 <添削> 船足の速まる主塔かすみをり
    「しまなみ海道」という名詞はありますが、「しまなみ」という名詞はありません。
    すこし無理のようです。
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25 青色の申告おわり堀眺む 菜の花
    「青色申告」「確定申告」は季語に無いと思いますが。
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26 終電車過ぎてより消す雛の部屋 コスモス
    終電車過ぎる。お雛さまにお休みのあいさつをしてあかりを消す。幸せな一日に感謝。
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27 吹き飛ばすセピア色した梅の実(たね) さつき
    やや説明的になります。何かおもしろいところを詠みたいものです。
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28 引鶴に空あをあをとありにけり 彰 子
    私の句です。鹿児島県出水のなべ鶴が、毎日数百羽ずつシベリヤへ飛び立ちます。
    動物の営みのすごさを感じます。
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29 古傷や暖炉見据えてほぞを噛む 峰 生
    いくら後悔しても及ばないのであるが、時々思いだしては悔やむのである。人間の弱さ。
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30 木漏れ日をあびて童ら笑い顔
 <添削> 木漏れ日の子に歩を合はす落椿
    「木漏れ日」は季語にないようですが。
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31 啓蟄を告げて小鳥の飛び立ちぬ 千 柳
    「小鳥」「小鳥来る」は秋の季語です。
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32 啓蟄の土黒々と道普請 コスモス
    農道の工事をしているのでしょうか。土を掘り返すと地虫が沢山
    出てきてそれを鳥が啄む。生物の営み。
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33 啓蟄の土持ち上げて蟻の列 哲 朗
 <添削> 裏山に風鳴ってゐる蟻の道
    「啓蟄」は春、「蟻の道」は夏の季語です。
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34 寒厨夫(つま)が十八番(おはこ)の夕餉菜 石の花
 <添削>  寒厨夫(つま)が十八番(おはこ)の茶碗蒸
    「寒厨」という季語にはじめてであいました。昨今では家の設備もよくなり
   、「寒厨」というイメージはなくなってきました。
    寒いときは鍋物などがいいですね。「夕餉菜」という言葉はあまり耳に
    しませんので「茶碗蒸」にしてみました。
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35 又光るつららも今は命あり 峰 生
 <添削> また光る氷柱も今は命あり
    「つらら」を漢字にしてみました。漢字ほうがイメージが強くなるのではないでしょうか。
    氷柱の一瞬をとらえ、そこに生命を感じる。今を大事に生きましょう。
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36 晴天に童子思い出す土筆採り 菜の花
 <添削> 夫に添い童子にかへる土筆採り
    中八音(字)になります。「晴天」はいらないと思います。
    婦唱夫随、夫婦円満の秘訣です。童心にかえって土筆を採る。
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37 春雪のどさりと落ちる夕べかな 浩 風
    南国では雪はむしろ春先になって降ることが多い。雪質は柔らかく
    夕方にはもう屋根には雪がない。雪降ろしなど全く不要。
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38 目覚ましを止めてしばしの寒の朝 千 柳
    寒いとなかなか起きにくいものです。思い切りが大切です。さあー、
    今日も一日元気で頑張りましょう。
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39 しだれ梅庭を従え毅然たり 蝋 梅
    さぞ、立派なしだれ梅なんでしょう。今年も見事に咲いた自慢の梅が庭を独り占めしている。
40 残雪や畑に横たうバーコード 蝋 梅
    バーコードは日常語になりましたね。残雪をバーコードとみたてたのは
   おもしろいと思います。新しい感覚です。
41 うら若き初音追ひ越す山路かな 紫 水
    うら若い初音が、少し気になります。いつもの散歩コース。
    今年も初音に出会う。清々しい気分になる
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42 高速の春多工事の片車線 石の花
    「高速の春」を「高速自動車道の春」というのは無理ではないでしょうか。
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43 空晴れて菜の花畑に集う波
    私には景がはっきり見えません。悪しからず。
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44 囀りやひとり遺りしとき想ふ 彰 子
    私の句です。小鳥が力一ぱい囀っている。私はいつまで元気でいられるか。
    妻に先立たれたらどうしよう。
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45 六時すぎてまだ日が残る土筆摘む そらまめ
    日が長くなってきた。時間のたつのも忘れて、丸くなった背中に
    夕日を帯びて土筆をつんでいる。楽しいひと時。
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46 老人の蜜柑畑やいぬふぐり 紫 水
 <添削> 片手間な蜜柑園なり背伸びする
    「蜜柑畑」「蜜柑園」「密柑山」は冬の季語。「いぬふぐり」は
    春の季語です。一つの季語を活かして詠みましょう
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47 道の駅夫の土産に草の餅 いなご
 <添削> 最終の土産に添える草の餅
    今日は都合により、夫が留守番。夫は草餅が大好き、それも粒あんを好む。
    土産は「SA」とか「道の駅」とかで買うものです。したがって「道の駅」を省略しました。
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48 好々爺や逝きて寂しい春の宵 ゆづき
    追悼句は難しいです。「逝きて」「寂しい」とどうしても感情がもろにでて
    感傷的になってしまします。なかなかさらりと詠めないものです。
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49 大寒の夜空瞬く北斗星 ゆづき
    今日は大寒。北斗七星がひときは輝いている。寒いなかしばらく星空を
   眺めていると天体にすいこまれそうである。
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50 椿さん呼び声高し露店かな ゆづき
 <添削> 呼び声に背中押さるる椿祭
    「椿祭」「椿詣」「椿さん」は愛媛県では季語として認知されていますが、
    全国版では季語として扱っていません。