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4月分 添削と寸評 |
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3月から5句選になりました。この句会ですと、5句選がいいところではないでしょうか。 |
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勉強不足で知識の浅い私が、私流に勝手に拙い添削と寸評をするのは心苦しく |
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思っています。 不満なことも多々あることと思いますが、どうかお許しください。 |
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俳句は17音(字)の短詞形ですから作者と選者の思い違いはよくあることです。 |
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句会ですと、その場で議論することができますが、インターネット句会ではそれはでき |
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ません。したがって気にそぐわないこと等、個別に問い合わせていただくとありがたい |
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と思います。 |
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番号 |
投 句 および 添削 と 寸評 |
俳 号 |
1 |
霾(よな)ぐもり朝から野山病むごとし |
哲 朗 |
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「霾ぐもり」は黄砂のことで春の季語です。霾ぐもりで空がどんより黄色っぽくなり、 |
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野山が病んでいるように感じたのでしょう。景としてよく分かります。余計なことを言うよう |
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ですが、私が学んだ俳句結社では・・・ごとし・・・という使い方は好みませんでした。 |
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2 |
居酒屋を出でて別れの朧月 |
哲 朗 |
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<添削> 居酒屋を出る中天に朧月 |
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「別れの朧月」が「居酒屋」につのか、「朧月」につくのかよく分かりません。 |
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添削句ですとほろ酔いのいい気分で朧月を眺めているというのです。 |
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3 |
酔うほどに歌と踊りの花見酒 |
ゆづき |
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<添削> 酔ふほどに調子でてくる花見唄 |
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「花見酒」「酔う」「歌と踊り」となると何もかも言いすぎです。 |
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俳句は焦点を絞り、もっと簡潔に詠みましょう。 |
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4 |
おさなごの歌にも絵にもチューリップ |
いなご |
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チューリップは子供の好む花です。子供はチューリップの唄をよく歌い、またよく絵を描きます。 |
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子供は一つのことに夢中になるものです。愛情のある可愛らしい句です。 |
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5 |
春の夢うつらうつらと瞼ぬれ |
泉 |
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<添削> 鳥啼くやうつらうつらと春の夢 |
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私には意味がよく分かりません。添削句のようにしてみました。 |
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6 |
高崎山雲海の如く桜かな |
菜の花 |
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<添削> 茫洋と高崎山の桜かな |
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「かな止」の場合は一気呵成に詠まないといけません。この句ですと「高崎山」で軽く切れるよう |
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に思うのですが。「雲海」は夏の季語です。季重ねは止めましょう。また「雲海の如く」は中八に |
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なので避けましょう。 |
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7 |
絵手紙の絵の中で咲く花山葵 |
楓 花 |
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<添削> 絵手紙の真っ盛りなる白山葵 |
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「山葵」は季語です。新日本歳時記には「花山葵」はありません。 |
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「絵手紙」とありますから「絵の中」を除けたいと思いました。 |
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8 |
そよ風に大きく揺れるチューリップ |
千 柳 |
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<添削> 赤は赤黄は黄に揺るるチューリップ |
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「そよ風」に「揺れる」では俳句としてはおもしろくありません。 |
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9 |
春の旅大広間なる絵天井 |
浩 風 |
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<添削> 春惜しむ千畳敷の絵天井 |
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春の旅で絵天井を見たということですが、今ひとつ訴えるものがないように思います。 |
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添削句ですと、少し詩情がでませんか。 |
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10 |
捨て犬のお産の春や仔だくさん |
さつき |
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捨て犬が沢山仔を生む。処置に困りますね。詩的情緒がありません。考えてみてください。 |
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11 |
春風におしゃべりしてる花の群れ |
千 柳 |
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<添削> 春風やおしゃべりしてる昼餉時 |
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「おしゃべり」は人がしているのか、花がしているのかはっきりしません。そこで「春風や」と |
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切りました。「はな」と言えば「桜」のことを言います。したがって季重ねになります。 |
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12 |
初音かと思えばセンサー籠の鳥 |
媛 香 |
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私には意味がよく分かりません。考えて見てください。 |
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13 |
花見どきおやおや今日も雨模様 |
千 柳 |
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「花見どき」は「花見時」とした方が、読みやすいと思います。 |
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花見どきだと言うのによく雨が降る。こん分だと週末は雨で花は台無しになるであろう。 |
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うらやましそうに空を見上げる。諧謔味(かいぎゃく)のある、おもしろい句ですね。 |
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14 |
みがかれし廻廊を行く花の冷え |
浩 風 |
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永平寺などの廻廊は大勢の修行僧によって磨かれぴかぴか光っています。 |
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その廻廊を敬虔な気持ちで回る。季語も効いている。素直ないい句です。「みがかれし」を |
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漢字にした方が廻廊の状況がはっきりすると思います。 |
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15 |
友とただ語らふための花見かな |
楓 花 |
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<添削> 饒舌の友と語らふ夕桜 |
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私には意味がよく分かりません。 |
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16 |
砥部焼きの窯だし祭り梨の花 |
初 霜 |
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<添削> 砥部焼の窯出し祭り梨の花 |
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砥部焼の窯出し祭りで大変賑わっている。会場周辺には梨の花が真っ盛り。砥部焼の色と |
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梨の花の色との取り合わせもおもしろい。素直ないい句です。「砥部焼き」の「き」は |
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除けましょう。「窯だし」は「窯出し」がいいと思います。 |
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17 |
休耕田枯れ芝の中土筆みゆ |
石の花 |
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<添削> 風渡る休耕田や土筆摘む |
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休耕田にも土筆が出るのですね。土筆の生命力。「枯れ芝」は冬の季語、「土筆」は春の季語で |
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季重ねになります。また「休耕田」「枯れ芝」「土筆」とごたごたします。「土筆みゆ」を |
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「土筆摘む」にすると動きがでてきます。 |
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18 |
ゆらゆらと川面にゆれる花筏 |
泉 |
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<添削> 花筏ゆらゆら村の日暮れどき |
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「ゆらゆら」は擬態語で揺れるさまを言います。したがって「ゆらゆら」と「ゆれる」は重複します。 |
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「ゆれる」は「揺れる」と漢字にしましょう。 |
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19 |
新緑や欅の全芽天覆う |
蝋 梅 |
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<添削> 碧空を覆ふ芽立ちの大欅 |
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「芽」と言うと「木の芽」「芽吹く」は季語ですから季語になりませんか。「新緑」は夏の季語で |
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季重ねになります。また「新緑」「欅」「全芽」「天」となると言い過ぎでごたごたします。 |
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20 |
育ちゆく子等の後おす花吹雪 |
泉 |
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家族で近くの公園に出かける。後からついて行く母親は子供の成長を見守る。花吹雪が子供の |
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成長を後押しするように舞っている。「後おす」は「後押す」と漢字にしましょう。いい句だと思います。 |
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21 |
花曇り酒宴の席に花弁舞う |
石の花 |
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<添削> 花冷の酒宴の席にチンドン屋 |
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「花曇り」「酒宴の席」「花弁舞う」と同じようなものが並ぶとごたごたします。そして説明になります。 |
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俳句は17音(字)ですからもっと簡潔に詠みましょう。 |
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22 |
春霞吸い込まれゆく貨物船 |
哲 朗 |
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<添削> 貨物船吸い込まれゆく春霞 |
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上五と下五といれかえてみました。いかがでしょうか。 |
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23 |
花冷や雀来ている十字墓 |
彰 子 |
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私の句です。ひっそりと隠れキリシタンの墓がある。静かなところへ雀がきて囀る。 |
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賑やかに明るくなり、墓も喜んでいる。 |
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24 |
城堀りや駘蕩として暮れなずむ |
峰 生 |
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<添削> 暮れなじむ堀や近くに春の蝉 |
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私には意味がよく分かりません。季語がありません。参考までに「堀」と言えば |
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「城の堀」のことも言います。 |
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25 |
荒れ畑に蝶の舞ふ中子等走る |
石の花 |
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<添削> 街角の荒るる畑に紋白蝶 |
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視点が蝶と子供に分散されます。「蝶」だけに焦点をあわせて作ってみました。 |
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26 |
風に乗る沈丁花の香いずれのや |
蝋 梅 |
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<添削> ほんのりと香る沈丁何処より |
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少し説明的なので「風に乗る」を除けてみました。 |
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27 |
夫(つま)多忙疲れやすいか春炬燵 |
初 霜 |
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<添削> 職を辞し読書に励む春炬燵 |
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三段切れにならないでしょうか?切れるのは二つまでにしましょう。春になっても |
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仕舞いかねている春炬燵です。 |
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28 |
大和路の土筆は今日の肴かな |
いなご |
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<添削> 頬張っている大和路の土筆飯 |
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「かな」止めは最大の詠嘆になります。そこで原句ではどうかなと思いました。 |
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29 |
パンジーを手入れする庭ビバルディー |
そらまめ |
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<添削> ビバルディ聴くパンジーの赤と黄 |
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「ビバルディ」はイタリヤの作曲家で「四季」が有名。原句ですと今一つ分かりにくいかと思い |
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添削句のようにしてみました。 |
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30 |
散る花に出店の並ぶ御縁日 |
コスモス |
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<添削> 花散るや親子手を引く御縁日 |
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「散る花に」ですと説明的になるので「花散るや」と断定しました。また縁日には屋台の並ぶものです。 |
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そこで添削句のようにしてみました。これで縁日の様子もでていると思うのですが。 |
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また動きも出てきます。 |
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31 |
もくれんの天にかかげて花の白 |
浩 風 |
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<添削> 木蓮の天にかかげる無風にて |
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木蓮というと紅紫色か白色をイメージします。そこで「花の白」を除きます。大きな木蓮であろう、 |
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碧空を覆うように白い花が輝いている。 |
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32 |
山里のどこからとなく雉の声 |
いなご |
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私の裏山にも雉がいます。ケンケンと声はするけど姿は見えない。雉の啼き声はよくないが、 |
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姿は大変美しい。自然がいっぱいなのどかな情景です。いい句です。 |
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33 |
満開のトンネルくぐり幸多し |
蝋 梅 |
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<添削> 満開の桜トンネル波の音 |
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季語がありません。 |
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34 |
夕月や菜畑の果て仄かなり |
峰 生 |
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<添削> 菜の花やどこまでつづく日暮どき |
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「菜畑」という季語は?「夕月」と「仄か」は付きます。「夕月や」ですと夕月が強調されます。 |
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ここでは菜の花が主題かと思い「菜の花や」としました。 |
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35 |
波を追ふ波また波や卒業期 |
彰 子 |
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私の句です。学校を卒業し希望する会社に就職して、胸をふくらませている。しかし、 |
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世間の荒波は厳しい。難関に遭遇してもくじけず前進あるのみ。 |
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36 |
主なき庭に今年も蕗の薹 |
さつき |
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庭の手入れの行き届いた家であったが廃屋となり荒れている。しかし、蕗の薹は毎年律儀に |
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生えてくる。人間もかくありたいものです。いい句です。 |
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37 |
冬帽子脱いで仲間に加わりぬ |
楓 花 |
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<添削> 冬帽子脱いで仲間と酌み交わす |
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帽子を脱いで仲間に加わるはおもしろくありません。添削句では具体的な動作を |
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いれてみました。 |
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38 |
はらはらと花びら舞うや桜酒 |
ゆづき |
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<添削> はらはらと花外人と酌み交わす。 |
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「花」と言えば「桜」のことを言うので季語になります。「花びら」「桜酒」で季重ねになります。 |
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39 |
外人も花見はおなじござの上 |
菜の花 |
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「郷にいっては郷に従え」といいます。日本的行事の花見には外国人も正座するのでしょうか。 |
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「ござ」は「茣蓙」と漢字の方がはっきりすると思います。おもしろい句です。 |
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40 |
花見茶屋美人いますの案内板 |
コスモス |
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看板に偽りはないのでしょうか。年増がでてきたりしてがっかり。おもしろい句ですね。 |
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41 |
落椿一つ地蔵の手の平に |
彰 子 |
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私の句です。椿は落ちてもなお美しいものです。お地蔵さんの手の平に椿が一つのっている。 |
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美しいので誰かが供えたのでしょう。お地蔵さんも喜んでいる。 |
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42 |
花吹雪一片づつを手の平に |
さつき |
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舞い散る花びらを一片づつ受けている。結構難しいものである。ほろ酔い気分の戯れ。いい句です。 |
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43 |
二十四の瞳に纏(まつ)わる紋白蝶 |
媛 香 |
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<添削> 二十四の瞳に纏ふ紋白蝶 |
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「中七「を「め」と読むか、「ひとみ」と読むかで「中七」か「中八」になります。小豆島の二十四の |
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瞳の像でしょうか。その像に紋白蝶が纏わっているのです。美しい和やかな光景です。 |
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いい句です。 |
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44 |
盛りすぎ人もまばらな葉桜や |
ゆづき |
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<添削> 葉桜や人もまばらな日暮れどき |
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「盛りすぎ」は花のことでしょうか。少し曖昧。下五を「や」で切ると俳句にしにくい。 |
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上五にもってきましょう。調子もよくなります。 |
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45 |
お彼岸に父母の墓前に語らえば |
初 霜 |
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<添削> お彼岸に姉妹で話す父母のこと |
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お彼岸には墓参りをします。したがって「彼岸」と「墓前」はつきすぎです。また「お彼岸に」 |
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「墓前に」と「に」がつづくのは避けましょう。 |
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久しぶりに会った姉妹が墓前で父母の思いで話をする。 |
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46 |
ホームページ開けば工事中春遅し |
媛 香 |
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<添削> ホームページ開き桜を巡りけり |
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中八になります。この句では、一般には通用しないと思います。ホームページの中で |
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花巡りをしているのです。 |
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47 |
茶店の娘紅引いて待つ花便り |
峰 生 |
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<添削> 花便りしたたむ紅を引いてより |
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私には意味がいま一つ分かりません。 |
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48 |
迷惑だ道掘り返す年度末 |
そらまめ |
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<添削> 通勤の道掘り返す太郎月 |
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「年度末」という季語が見あたりません。原句ですと詩的情緒に欠けています。 |
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添削句の「太郎月」は三月のこと。年度末になると公共工事は忙しくなる。 |
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49 |
花の城リフト終日フル回転 |
コスモス |
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<添削> 城の花惜しむリフトのフル回転 |
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「花の城」は曖昧。 |
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