
| 5月分俳句の添削と寸評 |
| 毎回、浅学非才を顧みず、私なりに添削と寸評をしていますが、これでいいのか |
| どうか気にしながらやっています。なんでもいいですからご意見などお寄せ下さい。 |
| 皆さんと共に少しでもいい句会にしたいと思っています。月を追うごとにいい句が |
| 多くなっています。うれしいかぎりです。この調子で楽しみながら続けて下さい。 |
| 「継続は力なり」です。 |
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| 1 鯉のぼり青い大海飛び跳ねり |
| <添削> 鯉のぼり得意顔して泳ぎをり |
| 「青い大海」といいきっていいのかどうか。添削句では誇らしげに泳いでいる |
| 様子を素直に詠ってみました。 |
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| 2 花疲れ足湯に憩う家族連れ |
| 子供を連れての花見は疲れます。家族揃って足湯に浸かって疲れを癒しているのです。 |
| 和やかな微笑まし情景。いい句です。 |
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| 3 薫風を受けて茶室の明るさよ |
| 二の丸史跡公園にも茶室があります。青葉の中を吹き抜けてくる清々しい風をうけて |
| 茶室が明るくなったように感じるのです。茶室の楽しい雰囲気が伝わってきます。 |
| いい句です。 |
| 4 指揮棒にお玉杓子のいる如く |
| 私には意味がよく分かりません。悪しからず。 |
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| 5 壁画かと思ふすみれの花壇かな |
| 愛媛県花きセンターにすみれで作った立体花壇があります。見事な花の壁画が |
| 目に浮かびます。素直ないい句です。 |
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| 6 間中より折れし大樹の若葉かな |
| <添削> 真中より折れし大樹の若葉かな |
| 「間中」を「真中」にしました。木は折れても長い間若葉のままでいますよね。 |
| 木の生命力の強さに感心します。素直ないい句です。 |
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| 7 若き娘と替えてウソ替え神事かな |
| 新日本大歳時記には「ウソ替え神事」という季語はありませんでした。 |
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| 8 モッコウバラ数を頼みに咲きにけり |
| モッコウバラは花が沢山咲き塀や門を飾ったりします。他のバラと比べると華やか |
| ではありませんが、数を頼みに咲き誇っているのです。素直で言い句です。 |
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| 9 げんげ田を風なめてゆく子等の声 |
| <添削> げんげ田を風ふれてゆく子等の声 |
| 「なめる」は詩的でないと思い「ふれる」にしてみました。 |
| げんげ田で子供達がはしゃやいでいるのが見えてきます。いい句です。 |
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| 10 心地よく髪にやさしき薫る風 |
| <添削> 野間馬の髪にやさしき薫る風 |
| 「薫る風」は心地よい風のことですから「心地よく」は除けました。 |
| 添削句は動物をいたわる気持ちを読んでいます。 |
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| 11 食卓にきょう一日の散りあやめ |
| 私には意味がよく分かりません。悪しからず。 |
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| 12 訪ね来てここは樒(シキミ)の里と知る |
| 新日本大歳時記には「樒」という季語はありません。 |
| 「樒の花」「はなしば」はなの木」などが季語になっています。 |
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| 13 武者人形子供組立て凛として |
| <添削> 1 武者人形飾る子供のつぶらな瞳 |
| 2 子等飾る武者人形の凜として |
| 「凜と」が子供にかかるのか、武者人形にかかるのか私にはあいまい。 |
| <添削>1は子供に焦点を、<添削>2では武者人形に焦点をあわせています。 |
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| 14 山陰げの茶房の窓に晩鶯聞く |
| <添削> 山影の茶房にひびく匂鳥 |
| 「山陰げ」は「山陰」です。「山陰」ですと山陰地方ともとられるので |
| 「山影」にしました。「晩鶯聞く」は八音(字)になります。 |
| そこで「匂い鳥」にしました。「匂い鳥」は「うぐいす」のことです。 |
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| 15 夕焼けに島影かすむ瀬戸の海 |
| <添削> 夕焼けの島影一つ二つ三つ |
| 「夕焼」は夏の季語、「かすむ」は春の季語です。 したがって季重ね |
| になります。「島影」ですから「瀬戸の海」は省略したい。 |
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| 16 キラキラと新緑の空こいのぼり |
| <添削> 鯉のぼりキラキラ光る蔵の上 |
| 「新緑」は春の季語、「鯉のぼり」は夏の季語です。したがって |
| 季重ねになります。「キラキラ」は空を言っているのか、鯉のぼりを |
| 言っているのかあいまいだと思うので、鯉のぼりが光っているように |
| しました。また、鯉のぼりは空に泳いでいるのですから空を除けました |
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| 17 藤棚に巣作りいそしむ夫婦鳩 |
| <添削> 巣作りにいそしむ鳩のつぶらな瞳 |
| 「巣作りいそしむ」は中八になります。中八は止めましょう。 |
| 「巣作り」「藤棚」は春の季語で季重ねになります。 |
| 「巣作り」ですから「夫婦」は除けました。 |
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| 18 菖蒲湯にすっぽり浸り香に浸り |
| <添削> 菖蒲湯にすっぽり浸かる旅一夜 |
| 「すっぽり浸かり香に浸かり」は少し言い過ぎではないでしょうか。 |
| 「香に浸かり」を言わなくても十分感じは分かると思いますが。 |
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| 19 竹林の空さわぎをり著莪(しゃが)の花 |
| <添削> 百幹の竹鳴っている著莪の花 |
| 著莪の花は高さ30cmぐらい。空を見て著莪の花を見るのは |
| 視点が動きます。俳句は焦点をしぼって詠むように言われています。 |
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| 20 青春のタイム・スリップ山笑ふ |
| 「山笑ふ」は早春の山が艶めいていることをいう、山を擬人化した季語です。 |
| 具象性がないように思うのですが。私にはよく分かりません。悪しからず。 |
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| 21 草餅を食べて西国詣でかな |
| 私の句です。八番長谷寺の参道には草餅を売っている店が |
| 沢山あります。花より団子ではないが、甘党の私は草餅に堪能する。 |
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| 22 五月幟ダムを背にして武者ならぶ |
| <添削> ダムを背にずらりと並ぶ幟かな |
| 「五月幟」は六音になります。そのせいか、歳時記の例句にありません。 |
| 「五月幟」は武者の絵を染めたものが多いので「武者並ぶ」は省きました。 |
| 「武者並ぶ」とありますから幟が川いっぱいに はためいているのでしょうか。 |
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| 23 葉桜や茶店の引き戸堅く閉じ |
| 花見で賑わった公園も葉桜となり、訪れる人もなく寂しい。 |
| 商売繁盛だった茶店は来春まで閉まっている。感じがよくでています。 |
| 季語も効いてをりいい句です。 |
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| 24 坪庭に蝶が来たりて春を舞う |
| <添削> 坪庭に蝶が来てゐるおやつ時 |
| 「蝶「も「春」も季語です。蝶が舞うまでいわなくてもいいと思います。 |
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| 25 あの乳房ちょっと気になり夏来る |
| 俳句は俳諧からはじまっており、滑稽もよしとしますが、 |
| この句はいかがなものでしょうか。私には分かりません。悪しからず。 |
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| 26 連休の疲れを癒す菖蒲風呂 |
| <添削> 連休の終わる子供と菖蒲風呂 |
| 俳句の世界では月並み俳句とか常套句といってよくないとされています。 |
| この句も当たり前のことを言っていて、説明になっていると思います。 |
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| 27 お隣のつつじの色をもらいけり |
| 句意が私にはよく分かりません。悪しからず。 |
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| 28 桜鯛釣れたぞといい夫帰る |
| 桜鯛は今の時期、瀬戸内海でよく釣れる。福山市鞆の浦の鯛網は有名。 |
| 鯛は引きが強いので釣り上げるときの醍醐味が大きい。大きな桜鯛が |
| 釣れたのであろう。夫は上機嫌です。幸せな光景。いい句です。 |
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| 29 そら豆のツンと天指す若さかな |
| <添削> そら豆のツンと空指す真昼かな |
| そら豆は莢が空を向くので「そらまめ」といいます。「天指す」より語感が |
| いいので「空指す」にしました。「ツンと」と言っているので「若さ」まで |
| 言わなくてもいいのかなと思います。 |
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| 30 春の市天満宮のにぎわいて |
| 私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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| 31 初鰹土佐の味をば懐かしむ |
| <添削> 故郷の味なつかしき初鰹 |
| 鰹といえば土佐です。本場のたたきはおいしいですよね。 |
| 私は土佐に六年いたので気持ちがよく分かります。 |
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| 32 せせらぎの流し雛持つ幼き手 |
| <添削> 母と子の作りし雛(ひひな)流しけり |
| 「流し雛」ですから「せせらぎ」は省きたいところ。 |
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| 33 若葉風なで牛なでて一願す |
| 天満宮は学問の神様。受験シーズンになると合格祈願で賑わう。 |
| 天満宮によくあるなで牛をなでて合格を祈る。希望校へ |
| 合格するといいですね。季語もいいです。さわやかないい句です。 |
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| 34 故郷や廃屋多し青嵐 |
| <添削> 廃屋の増ゆるふるさと若葉風 |
| 三段切れになり、調子が悪くなります。「青嵐」より「若葉風」 |
| のほうがいいかと思いまして。 |
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| 35 琵琶湖畔葉桜の間をヨット行く |
| <添削> 葉桜となりぬ湖畔の一夜宿 |
| 「葉桜」「ヨット」ともに夏の季語です。季重ねになります。 |
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| 36 山行きの話の弾む蜆汁 |
| 私の句です。私達は登山が大好きです。春になると相談しながら |
| 登山計画をたてます。夕食の蜆汁は格別おいしい。 |
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| 37 この暑さ花も一度に咲き競う |
| <添削> にはとりの一声高き暑さかな |
| 俳句では「花」といえば「桜」のことをさします。したがって「暑さ」と |
| 「花」はどうかと思います。原句を活かしての添削はできません。添削句 |
| のようにしてみました。 |
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| 38 樟若葉半袖の子らさざめきて |
| <添削> 幼子の笑ひころげる樟若葉 |
| 夏の季語に「半ズボン」というのがあります。したがって「半袖」というと |
| 夏の季節感がするのでどうかと思います。春めいてくると浮き浮きして |
| つい笑いたくなるものです。 |
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| 39 比叡山人と石楠花(しゃくなげ)入り乱れ |
| <添削> 石楠花と人いりまじる比叡山 |
| 「比叡山」を下にもってきました。大勢の人と沢山の石楠花が交錯して |
| いるのでしょう。賑やかな様子が伝わってきます。 |
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| 40 しゃぼん玉吹いてる母と追ってる子 |
| 優しい母と素直な子の微笑ましい情景が見えるようです。いい句です。 |
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| 41 川風に吹かれて泳ぐ鯉のぼり |
| <添削> 川風を胸いっぱいに鯉のぼり |
| 何もかも言っており説明になります。俳句は簡潔なことが大事です。 |
| 省略しましょう。 |
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| 42 蔦若葉ブロック塀を隠しけり |
| <添削> しんしんと雨降っている蔦若葉 |
| 原句ですと説明になり、おもしろくありません。 |
| 一歩引いて思いを深めてください。物の取り合せを考えましょう。 |
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| 43 種まいたポットの水やり若葉寒 |
| <添削> 石鎚を遠くに種を蒔きにけり |
| 「ポットの水やり」は中八になります。「種まき」「若葉寒」はともに |
| 春の季語です。また「水撒き」という季語があるので「水やり」は |
| いかがなものでしょうか。 |
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| 44 紫陽花(あじさい)や緑のつぼみ雨を待つ |
| <添削> 紫陽花の蕾ふくらむ昼下がり |
| 私の俳句結社では紫陽花と雨はつくので使わないように |
| といわれていました。また、「緑」は夏の季語で季重ねになります。 |
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| 45 碧空に見よ鯉のぼり男児生(あ)る |
| <添削> 石鎚に向き鯉のぼりすいすいと |
| 「見よ」は言い過ぎ。「鯉のぼり」ですから「碧空」は省略。 |
| また「男児生る」も省略。 |
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| 46 星あかり麦わら香る帰り道 |
| <添削> 星空に麦わら匂ふ二人連 |
| 原句ですと三段切れになります。三段切れは調子がよくありません。 |
| 「麦わら」ですから「香る」より「匂ふ」にしてみました。 |
| 添削句は遅くまで農作業している夫婦の情景。 |
| 47 誕生日メールに薔薇のプレゼント |
| <添削> 誕生のメールに薔薇のプレゼント |
| 「誕生日」で切れるので「誕生の」としてみました。メールで薔薇の |
| プレゼントとは安上がりでですが。気持ちが大事です。 |
| ほのぼのとするいい句です。 |
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| 48 山躑躅燃ゆ巌頭に雲の影 |
| 私の句です。登山が好きでよく山に登ります。巌頭に立って眺めると、 |
| あたり一面が山躑躅が燃えるいるようです。折りしも一片の雲が流れる。 |
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| 49 振り向けば山路遙かにほととぎす |
| あえぎながら登っていく。一息ついて振り返ると、山路がどこまでも |
| 続いている。しきりにほととぎすが啼いていて心地よい。 |
| もう少しで頂上だ。頑張ろう。季語が効いています。いい句です。 |
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| 50 新緑や山又山の峠道 |
| <添削> 新緑や山又山の湯治宿 |
| ハイキングに出かける。新緑が目にしみるような山々に囲まれて |
| いてすがすがしい。温泉に浸かって疲れを癒す。さわやかな |
| 健康的な俳句です。「山」ですから「峠道」は省略しました。 |
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| 51 音絶えて若葉風呼ぶ水車小屋 |
| <添削> 夏めくや音絶えている水車小屋 |
| 原句の意味がよく分からないので添削句のようにしてみました。 |