平成17年8月1日〜平成17年8月20日 投句分
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互 選 句
             8月分俳句の添削と寸評
暑い日がつづいています。体調はいかがですか、夏は季語がもっとも多い季節です。
暑さにめげず句作りに励みましょう。俳句の世界では「沢山作って沢山捨てる」と
いいます。今月もいい句が沢山ありました。
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相変わらず私流の添削と寸評をします。失礼の段はお許し下さい。
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1 甲子園熱き闘い玉の汗 (ゆづき)
 <添削> 野球児の熱き戦い夏の雲
  三段切れで、リズムが悪くなります。切れは二つまでにしましょう。「熱き戦い」と
  「玉の汗」は付き過ぎで、説明になります。「玉の汗」を「夏の雲」に置き換えてみました。
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2 サルスベリ暑さにめげず拳上げ (菜の花)
 <添削> 大空に拳をのばすさるすべり
  「サルスベリ(百日紅)」「暑さ」は夏の季語で季重ねです。添削のように平明に
  詠んでみました。
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3 朝露を浴びて輝く稲穂かな ( 泉 )
 <添削> 逆光を浴びてきらめく稲穂かな
  「露」「稲穂」は秋の季語で季重ねです。
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4 阿波踊りありし日の夫想い出し (菜の花)
 <添削> 世話好きの夫想いだす阿波踊り
  「ありし日の」は漠然としているのでこのようにしてみました。この方が具象性が
  あるように思います。俳句は断定したほうがいいのです。
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5 炎道に蝉を弔う蟻の列 (千 柳)
 <添削> お三時の亡骸(なきがら)ささぐ蟻の列
  「炎道」「蝉」「蟻」はいずれも夏の季語です。したがって季重ねになります。
  「道」と「蟻の列」は説明になるので省略しました。
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6 健康という幸せやビール飲む (いなご)
  いい句です。健康が何よりの幸せです。ビールが旨い。しかし、ほどほどに
  飲みましょう。感謝!感謝!
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7 夜濯ぎに傷めし紙幣(お札)の洗い張り (蝋 梅)
 <添削> 福沢のお札傷める夜濯に
  中八になります。そして、説明的になっています。このようにしてみましたが、
  「福沢のお札」でとおるでしょうか?
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8 熱帯夜一機の蚊来襲大捜索 (野 鯉)
  俳句は平明でないといけません。何を詠みたいのか焦点がはっきりしません。
  「熱帯夜」「蚊」は夏の季語で、季重ねになります。また中九になります。考えてみてください。
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9 笹飾り色鮮やかに宙に舞ふ (哲 朗)
 <添削> 宙に舞ふ色鮮やかな笹飾り
  「笹飾り」を下にもってきたほうが調子がよくなりませんか。
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10 大欠伸移され小欠伸蝉時雨 (媛 香)
 <添削> 大欠伸移る小欠伸蝉時雨
  中八になるのでこのようにしました。退屈しているのに蝉は懸命に鳴いている
  という。おもしろい句です。
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11 日差し受け雲海怒涛の如くなる (コスモス)
 <添削> 雲海の怒涛の如き穂高岳
  「雲海怒濤の」は中八になります。そして、説明になっているのでこのようにして
  みました。具体的な場所などをだすと実感がでると思います。
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12 やり場なき運転席の大西日 (哲 朗)
  平明でいい句です。大西日をまともにうけてまぶしい。安全運転に気をつけましょう。
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13 金蔵の描きし屏風夜の祭 (浩 風)
 <添削> 金蔵の描きし屏風祭の夜
  「金蔵」は「金庫」のこともいいます、「画家の名前」でしたら「まえがき」をつけ
  られたらどうでしょうか。「夜の祭」はどうかと思いますが。「祭の夜」ではいけませんか。
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14 ふるまわる絵金まつりの酒うまし (浩 風)
 <添削> ふるまわる絵金まつりのお酌酒
  私は「絵金まつり」を知りません。お酒が格別にうまかったのでしょうが。
  「うまし」まで言わない方がいいと思います。
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15 父の忌や大夕焼けを眺めをり (媛 香)
  いい句です。自然が大好きだったお父さんを忍ばれる。
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16 よしこのの音に誘われにわか連 ( 泉 )
 <添削> よしこのの音に浮かれる夏祭
  季語がないと思います。また説明になっており、情緒がありません。
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17 蓑虫の顔出している童唄 (彰 子)
  私の句です。蓑虫が立ち止まり耳を澄まして童唄を聞いている。
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18 諸人や駈けだしている夕立に (石の花)
 <添削> 諸人の駈けだしている大夕立
  「諸人や」で切るのはどうかと思います。焦点は季語の夕立にあると思いますので。
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19 一陣の風吹きそよぎ夕立来(き) (石の花)
 <添削> 一陣の風吹きそよぐ夏祭
  「風吹き」「夕立」と気象語が並ぶと説明になります。
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20 戯れて鐘撞く兄弟夏帽子 (コスモス)
 <添削> 戯れて鐘撞く姉妹夏帽子
  中八になります。そこで「姉妹」にしました。俳句は作るもので他に置き換えて
  いいのです。
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21 蟻が行く体に余る荷物持ち (初 霜)
 <添削> 蟻行くや体に余る荷物持ち
  よく見ておられ素直に詠まれています。いい句です。「蟻行くや」と強い切れに
  してみましたがいかがでしょうか。
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22 虹立つや草木そよぎて川広し (峰 生)
 <添削> 虹立つや草木のそよぐ川の辺に
 「そよぎて川広し」はどうかと思います。
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23 ふと吾にかえれば沁みる蝉の声 (千 柳)
  いい句です。何か物思いにふけっていたが、ふと吾にかえったら蝉の声がしている、
  しみじみと聞き入っているのである。
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24 蝉取りの声賑やかに遠ざかる (コスモス)
 <添削> 蝉取りの声遠ざかる日暮時
  情景はよく分かります。「賑やかに」を省略し平明にしてみました。
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25 雷鳴に座布団かぶる幼き子 (いなご)
 <添削> はたたくや座布団かぶる幼き子
  面白い情景です。しかし笑ってはいけませんね。「雷鳴に」と「に」になると
  どうしても説明になるのでこのようにしてみました。
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26 孫たちの去りたる庭に夏の月 (そらまめ)
  平明ないい句です。久しぶりの孫で賑わっていたが、帰っていくと寂しくなる。
  月を眺めながら孫を想うのである。
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27 トンボ取り爺の手しっかり握りしめ ( 泉 )
 <添削> トンボ取る爺の手しかと握りしめ
  中八になるのでこのようにしました。童心にかえり孫との楽しい蜻蛉取りです。
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28 蝉しぐれ思考回路を断たれたり (楓 花)
 <添削> 熊蝉に思考回路を断たれたり
  この句の場合は「蝉しぐれ」と切らない方がいいと思います。「思考回路」とは
  新しい句です。
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29 俄雨しばしの涼風満喫す (石の花)
 <添削> 雨去りてしばし憩ふや涼風に
 「俄雨」でかるく切れるのでこのようにしてみました。「満喫す」は押さえて
  詠みたいものです。
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30 びょうぶ絵の修羅の浮きたつまつりかな (浩 風)
 <添削> 屏風絵の修羅の浮きたつ祭りかな
  いい句です。いいところに目つけられました。漢字の方が印象がはっきりすると
  思いまして、漢字にしました。見事な阿修羅像の絵が、祭りの印象として強烈に残る。
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31 暮れなずむ白き葉裏の合歓の花 (さつき)
  いい句です。合歓の花でなく葉の裏側に何か感じるものがあったのでしょう。
  意外性のある句です。
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32 滴りや水琴窟の妙なる音 (初 霜)
 <添削> 万緑や水琴窟に耳澄ます
  水琴窟は水が滴るときの音です。したがって、「滴り」は付き過ぎます。
  また水琴窟は妙なる音のするものです。そこで「妙なる音」は省略しました。
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33 うだる日に蝉はしきりに空見上げ (蝋 梅)
 <添削> うだる日の蝉はしきりに空見上げ
  「うだる日に」と「に」にすると説明になるのです。「うだる日の」とすれば
  解決します。
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34 ヂーチャンとゼンゴ釣り上げ帰省孫 (そらまめ)
 <添削> 爺ちゃんとゼンゴ釣り上ぐ帰省孫
 「ヂーチャン」とこの種のかたかなは好まれません。沢山釣れたでしょうか。
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35 夏は朝体操会や共白髪 (峰 生)
 <添削> 炎天の体操会や共白髪
  「夏は朝」で切ると調子がよくありません。炎天下、白髪の老人夫婦が懸命に
  体操をしている。まだまだ元気で長生きをしてください。
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36 ポンポンとたたきてすいか採りにけり (いなご)
 <添削> ポンポンとたたきて西瓜採りにけり
  いい句です。素直に平明に詠まれています。情景がよく分かります。「すいか」は
  漢字の方が印象が強くなると思いますが。
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>37 慈雨しばし土の匂いの中に居る (楓 花)
  「慈雨」が土のなかにしばらくいるのか、「自分」が土の匂いのなかにしばらく
  いるのか、私には少し不鮮明。悪しからず。
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38 墓洗う手押しポンプの水錆て (媛 香)
  濁っている水で墓を洗っているか、手押しポンプが錆びているのか、私には句意が
  よく分かりません。悪しからず。
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39 麦茶煮る長き季節を思ひつつ (楓 花)
  「麦茶」は煎じたお湯のこともいいます。「長き季節」とは何をいうのでしょうか。
  私にはよく分かりません。悪しからず。
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40 法師蝉鳴き出し胸をなで下ろす (初 霜)
  法師蝉が胸をなで下ろしているのか、自分が胸をなでおろしているのか、私には
  よく分かりません。悪しからず
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41 すててこは何故か疎まれ手酌酒 (峰 生)
 <添削> 糊のきくすててこ着(は)いて手酌酒
  「すててこは何故か疎まれ」は抽象的です。眼前に、心が動いたことを具現化し
  平明に詠んでください。
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42 雨あがり波打つ稲穂心地よく (菜の花)
 <添削> 黄金の稲穂波打つ上天気
  「心地よく」といった心象的表現はなるべく避けましょう。「波打つ稲穂」で心地
  よいことは想像できます。言い切らないで余韻を残すともいいます。
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43 夏草の匂い蒸せくる夜の窓 (野 鯉)
 <添削> 夏草の匂いに噎ぶ日暮れ時
  「匂いに噎ぶ」という言葉はありますが、「匂い蒸せくる」という言葉がある
  のでしょうか。
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44 白蓮の葉陰にちらり緋鯉かな (千 柳)
 <添削> もちの木の葉陰をめぐる緋鯉かな
  「白蓮」が「はくれん」のことでしたら春の季語です。また、「緋鯉」は夏の
  季語です。かな止めの場合は句切れなしに一気に詠みましょう。
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45 虫干しや妣(はは・亡母)の晴れ着を胸に当て (さつき)
 <添削> 虫干しや妣(はは・亡母)の晴れ着の匂ひゐて
 <添削> 虫干しの妣(はは・亡母)の晴れ着を羽織りをり
  私には原句の情景が今ひとつはっきりしません。
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46 雷鳴の響きのあとの静けさや (蝋 梅)
 <添削> 雷鳴の遠のく猫と目をあわす
  原句ですと平凡になります。また、何もかも言って余韻がありません。
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47 大広間冷しそうめん味談義 (さつき)
 <添削> 二次会の冷しうどんの味談義
  「大広間」「冷しそうめん」「味談義」と三段切れになっています。切るのは
  二つまでにしましょう。
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48 海よりはプール通いの都会孫 (そらまめ)
  説明になり、情緒がありません。考えてみてください。悪しからず。また、
  「都会孫」という言葉があるのでしょうか。
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49 滝しぶき吹き割る風に人の群れ (哲 朗)
  三段切れになっています。何を詠みたいのか考えてみてください。悪しからず。
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50 雲上の穂高三山岩ひばり (彰 子)
  私の句です。雲上の穂高岳に立つと岩ひばりが沢山いました。人懐かしくそばに
  寄ってきます。
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51 白靴の歩幅の先へ紋白蝶 (竹 豪)
 <添削> 巡礼の先立つ蝶のもつれつつ
  「白靴」「紋白蝶」は夏の季語です。また、説明調になっています。
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52 明日は登頂満天の星こぼれをり (彰 子)
 私の句です。山小屋での空に星がちりばめていました。いいいよ明日は登頂です。
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53 モロヘイヤ猛暑の庭の薄緑 (野 鯉)
 <添削> 炎天の庭の一隅モロヘイヤ
 「モロヘイヤ」で切れるので下へもってきました。また「薄緑」は説明になる
  ので省略しました。
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54 よしこのでやっとやっとな阿波踊り (ゆづき)
 <添削> 飛び入りの男踊りのおどけ顔
  阿波踊りの説明におわっているように思います。したがって感動が伝わって
  きません。阿波踊りを見ての実感を詠むといいのですが。
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55 野球拳よよいのよいや夏祭り (ゆづき)
 <添削> 野球拳踊りや子規の城下町
  三段切れになり、調子がよくありません。また説明的になるのでこのようにして
  みました。あれこれ言っていません。つまり、平明に詠んています。
(添削と寸評を終わります)