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9月分俳句の添削と寸評 |
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仲秋の名月も終わり、すっかり秋らしくなりました。秋は俳句を作るいい季節です。 |
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外に出かけ自然に触れて俳句を作りましょう。 |
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さて、いつものように私流に添削と寸評をします。 |
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いい句が多くなっているのでうれしく思っています。 |
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番号 |
添 削 と 寸 評 |
1 |
孫去りぬ赤き浴衣を壁に掛け |
(楓 花) |
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いい句です。初孫でしょうか。新調した浴衣を眺めながら思い出している。 |
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健やかに育って欲しいと願う。 |
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2 |
満月の明かりに浮かぶ天守閣 |
(ゆづき) |
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<添削> 満月や三万石の天守閣 |
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何もかも言っているので説明になります。俳句は17音の短詩形ですから省略が大事 |
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なのです。 |
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添削句のように「明かりに浮かぶ」と言わなくても「満月や」で十分想像できるのです。 |
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また、「三万石の天守閣」と言えば、例えば大洲城とか具体的になり身近に感じます。 |
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3 |
名月に明るさ負けず星流る |
(石の花) |
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「名月」「星流る」は秋の季語です。季重ねになります。何を詠むのか考えてみてください。 |
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4 |
雲なくばあのあたりかや天の川 |
(蝋 梅) |
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<添削> 一片のうす雲よぎる天の川 |
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天の川を見ている情景とか天の川の出ている情景を詠むといいのですが。原句では |
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景がはっきり出てきません。 |
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5 |
菜園の荒れし台風一過かな |
(浩 風) |
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<添削> 牛の瞳の黒し台風一過かな |
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台風が来て菜園が荒れたと言うのでは常套句になります。 |
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6 |
街路樹の一葉秋の気配かな |
(初 霜) |
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<添削> 街路樹の一葉に秋の気配かな |
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いい句です。「一葉」は普通「ひとは」と読みます。そこで「一葉に」としました。 |
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一葉に秋の気配を感じたというこまやかな観察、素晴らしい感性。 |
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7 |
秋すだれ色あせてなお影成せる |
(初 霜) |
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<添削> 色あせてなを影成せる秋すだれ |
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上五と下五と入れ替えてみました。秋になったというのに日中はまだ暑い。 |
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色あせたすだれだが、日をさえぎって涼しくしてくれる。 |
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8 |
満月にウサギの餅つき夢語り |
(菜の花) |
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<添削> 満月のうさぎ餅つく童唄 |
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中八になります。「夢語り」ですと説明になるのでこのようにしてみました。 |
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9 |
満月にうさぎを探す孫の顔 |
(ゆづき) |
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<添削> 満月にうさぎを探す幼顔 |
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若草句会では「孫」を詠んだ句がぼつぼつありますが、俳句の世界では「孫」をつかう |
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ことを良しとしないのでこのようにしてみました。孫は本気になって見つめている。 |
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おもしろい句です。 |
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10 |
落ち葉踏む音の追い来る深山行 |
(コスモス) |
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いい句です。落ち葉を踏みながら自然の道を歩くのは気持ちのいいものです。 |
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11 |
爽やかにおはようという男の子 |
(いなご) |
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<添削> 爽やかにおはようと言ふ美少年 |
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近頃の子は礼儀や作法が悪くなっています。通学児でしょうか、大きな声で挨拶されると |
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すがすがしい気分になります。 |
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12 |
水打つて開店前の路地酒場 |
(哲 朗) |
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いい句です。路地の小さな酒場、開店前に水を打ってお客を待つ。今日も大勢のお客で |
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にぎわって欲しいと願う。 |
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13 |
大人の手借りて鈴割る運動会 |
(コスモス) |
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いい句です。親子で鈴を割るのでしょうか。楽しい情景。 |
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14 |
夜店立つ川辺で酒を子と交わす |
(浩 風) |
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<添削> 夜店立つ川辺で交わす親子酒 |
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いい句です。このような句にもなります。幸せなひと時。 |
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15 |
子等乗りし機に別れする初秋かな |
(浩 風) |
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<添削> 秋澄むや機影消えゆくまで見つむ |
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「機」を「飛行機」のことだというのは無理があります。 |
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16 |
ご近所に金魚掬いのお裾分け |
(千 柳) |
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いい句です。金魚掬いをしたら沢山掬えたのでしょう。金魚のお裾分け分けとは面白い。 |
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17 |
名月を雲から追い出す音花火 |
(そらまめ) |
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「名月」は秋、「花火」は夏の季語です。中八になっています。考えてみてください。 |
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18 |
虫の声暗闇の中ひっそりと |
(石の花) |
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<添削> 暗闇の中ひっそりと虫の声 |
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五七五を入れ替えてみました。 |
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19 |
さわさわと今朝秋風と思ひけり |
( 泉 ) |
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<添削> 秋風と思ふ川辺のさわさわと |
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「今朝」はどうかと思いますのでこのようにしてみました。 |
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20 |
秋刀魚焼く煙に急ぐ家路かな |
(蝋 梅) |
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いい句です。秋刀魚の匂いを嗅ぐと急にお腹が空いてきた。我が家も秋刀魚であると |
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いいのだが。 |
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21 |
さくさくと幸水食うて夏終わる |
(蝋 梅) |
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<添削> さくさくと幸水食ふて夏終わる |
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いい句です。幸水を食べて満足。いよいよ秋本番を迎える。 |
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22 |
月の縁古刀は冴えて父偲ぶ |
(峰 生) |
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<添削> 父偲ぶゐる満月の冴えわたり |
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「月の縁古刀は」の意味が今一つわかりません。 |
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23 |
夕暮れに最後のちから蝉の声 |
(竹 豪) |
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<添削> 夕暮れの力みなぎる蝉の声 |
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蝉が夕暮れになると一声発してひと日の終わりを告げる。また明日頑張ろう。 |
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24 |
秋空に冴えて遠目の天守閣 |
(竹 豪) |
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<添削> 秋澄むや遠くに冴ゆる天守閣 |
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「遠目の」はどうかと思いまして止めました。 |
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25 |
じりじりと残暑に待つや青信号 |
(峰 生) |
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<添削> 無人駅ひとり残暑のじりじりと |
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調子が今ひとつよくありません。このようにしてみました。 |
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26 |
「冬のソナタ」CD聴く夜や秋深む |
(媛 香) |
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<添削> 秋深む冬のソナタを聴いてをり |
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いい気分です。 |
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27 |
鷺草の食卓に舞う夕餉かな |
(千 柳) |
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<添削> 鷺草の食卓に舞ふ夕餉かな |
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いい句です。 |
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食卓に添えられている鷺草は舞っているようである。和やかな雰囲気の夕餉。 |
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28 |
颱風の進路で迷う旅支度 |
(さつき) |
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<添削> 颱風の進路で迷ふ旅支度 |
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いい句です。こういうことはままあることです。あきらめが肝心。 |
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29 |
朝の経すだちの香する掌を合わせ |
(楓 花) |
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<添削> 両の手にすだちの香る朝の径 |
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日常生活のありさまがよくでています。 |
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30 |
女郎花そこら一面黄を散らし |
(媛 香) |
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<添削> 一両車行く女郎花女郎花 |
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美しい田園風景。 |
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31 |
台風がそれて喜ぶツクボーシ! |
(そらまめ) |
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「台風」「つくつくぼうし」は秋の季語です。考えてみてください。 |
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32 |
晴れわたる大雪渓を妻とゆく |
(彰 子) |
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私の句です。大雪渓をアイゼンを着けて登る。大自然を満喫。 |
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33 |
金星をちょんまげにして三日月が |
(そらまめ) |
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作者の意図がよく分かりません。悪しからず。 |
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34 |
鹿親子土を嗅ぎ嗅ぎ木の間行く |
(いなご) |
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<添削> 親子鹿土を嗅ぎ嗅ぎ木の間行く |
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「親子鹿」のほうが調子がいいと思ってこのようにしてみました。微笑ましい情景です。 |
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35 |
徘徊の妻の背中に月浴びる |
(さつき) |
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<添削> 徘徊の妻の背中に月の影 |
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「月浴びる」と動詞にすると説明になるので「月の影」と名詞にしました。お気の毒です。 |
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大変でしょうが、十分介護してあげてください。 |
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36 |
触れないで飛んで弾ける鳳仙花 |
(さつき) |
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<添削> 月の出てほろほろこぼる鳳仙花 |
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「鳳仙花」は熟すとひとり弾けて地にこぼれるものです。原句ですと説明になります。 |
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「弾ける」を除けました。 |
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37 |
秋晴やどんどん延びるジェット雲 |
(いなご) |
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いい句です。 |
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ジェット雲がどんどん延びていく。爽やかなそしておおらかな気分になるのです。 |
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38 |
床下で泣くコオロギや母恋し |
( 泉 ) |
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<添削> 床下で鳴くこほろぎや母恋し |
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いい句です。お母さんと一緒によく虫の声を聞いたのでしょう。懐かしく思いだす。 |
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39 |
視界ゼロ二千石氷見霧の中 |
(コスモス) |
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「二千石氷見」は地名かと思いますが、わかりません。「添え書き」をして貰うと助かるの |
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ですが。いずれにしても、原句は言い過ぎです。 |
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40 |
夕涼や花いちもんめの声聞こゆ |
(楓 花) |
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<添削> 夕涼や声張りあげる花いちもんめ |
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中八です。「声聞こゆ」は言い過ぎです。花いちもんめを生かしたいので五七七に |
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しました。 |
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41 |
稲木米ふっくら炊けし仏前へ |
( 泉 ) |
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<添削> 仏前にふっくら炊けし稲木米 |
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調子がよくないのでこのようにしてみました。「稲木米」は自然乾燥の米ですから大変 |
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おいしい。仏さまに豊年であったことを告げる。 |
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42 |
微笑みの菩薩に祈る秋遍路 |
(峰 生) |
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<添削> 道問ふて急ぎ足なる秋遍路 |
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「菩薩」「祈る」「遍路」は付き過ぎです。 |
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43 |
大ジョッキ干して男の気分なり |
(千 柳) |
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いい句です。私は下戸でよく分かりませんが、いい気分になるのでしょう。羨ましい。 |
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あまり威張らないで。 |
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44 |
青稲田嘗めてわが家に秋の風 |
(竹 豪) |
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<添削> 青稲田そよぐ遠くに神の山 |
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「青稲田「秋の風」は秋の季語です。季重ねになります。考えてみてください。 |
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45 |
タンポポの穂綿空中遊泳す |
(初 霜) |
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<添削> たんぽぽの絮どこまでも波の音 |
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言い過ぎです。このようにしてみました。 |
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46 |
畦道を真っ赤に染めし彼岸花 |
(菜の花) |
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いい句です。黄金の稲穂と真っ赤な彼岸花とのコントラストが素晴らしい。 |
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美しい田園風景。 |
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47 |
月の出を待つ間に遠きこと想ふ |
(媛 香) |
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<添削> 月の出を待つ間に酒を酌み交わす |
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「月の出を待つ間に」ですと具体的な物、景がありません。俳句は花とか鳥とか物に託して |
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実感したことを詠むものです。 |
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48 |
客の顔見えて押し出す心太(ところてん) |
(哲 朗) |
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<添削> 珍客の話の弾むところてん |
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あれもこれも言うと説明になります。言い過ぎると言います。「心太」は押し出す |
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ものですから「押し出す」を除けました。 |
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49 |
玉音に耳を疑う終戦日 |
(彰 子) |
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私の句です。下宿で一人玉音を聞きました。半信半疑で不思議な気がしました。 |
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50 |
虫籠の虫も負けずに競い合う |
(石の花) |
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いい句です。野原の虫は盛んに鳴いている。虫籠の虫も負けずに鳴いている。頑張れ。 |
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51 |
満月が湯舟でゆらぎ虫のかげ |
(ゆづき) |
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<添削> 満月の湯舟でゆらぐ旅一夜 |
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「満月」「虫」は秋の季語です。季重ねになります。焦点がぼけるので「虫のかげ」 |
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を除けました。 |
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52 |
露天風呂湯船に浮かぶ望(もち)の月 |
(哲 朗) |
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<添削> 望月の湯船に浮かぶ旅はじめ |
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旅情豊かないい旅始めでしたね。 |
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「露天風呂」「湯船」は言い過ぎ。省略しましょう。 |
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53 |
平凡でよしででむしの角出して |
(彰 子) |
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私の句です。ででむしが角を出して何するでなくあたりを見ている。あくせくすることはない。 |