平成17年11月1日〜平成17年11月20日 投句分
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互 選 句
11月分俳句の添削と寸評
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「小雪」も終わり、日増しに冬らしくなってきました。寒くなると外へ
出るのが億劫になり勝ちですが、元気をだして出歩き、しっかり自然を
みつめ、いつものように添削と寸評をいたします。作句者の思いと
違うこともあると思いますが、悪しからずご了承ください。
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番号     投   句
1 野も山も赤と黄色に染められて 菜の花
<添削> 一山紅葉ほうほうと風わたる
 季語がありません。そして、これでは説明になります。
もっと焦点をしぼって詠みましょう。また切れ字が弱いと思います。
添削句では、「一山紅葉」で名詞切れになっています。  
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2 キャンプ場空き缶一つ秋の風 コスモス
<添削> 公園に空き缶一つ秋の風
景はよく分かります。そして、面白いと思いますが、
キャンプ場|空き缶一つ|秋の風|と三段切れになっています。
「キャンプ」は夏の季語です。「キャンプ場」を「公園の」にしました。
いいところに目をつけられました。公衆の場はお互いにきれいに
したいものです。いい句になります。
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3 同窓会秋の夜長に更けるまで 菜の花
<添削> 同窓の談義夜長の更けるまで
「夜長」は秋の季語です「秋の夜長」は重複します。久しぶりの同窓会、
時間の経つのも忘れて話が弾んだことでしょう。
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4 身にしみる網目を抜ける空っ風 蝋 梅
 「しみる」「空っ風」はともに冬の季語で季重ねになります。
「空っ風」は吹きすさぶ強い北風のことで、「細目を抜ける」と
言うのがよく分かりません。
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5 鉢植えの銀杏も日々に色づいて 千 柳
<添削> 鉢植への日ごとに太る銀杏の実
「銀杏散る」、「銀杏の実」は季語です。
また、はっきりした切れ字がありません。丹精込めて育てている銀杏。
楽しみである。
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6 かずら橋いにしえの里深紅葉 石の花
<添削> かずら橋大きく揺るる深紅葉
 かずら橋|いにしえの里|深紅葉|と三段切れになります。
切れ字は一つか二つにしましょう。かずら橋付近の紅葉は美しいですね。
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7 近景も遠景もよし紅葉山 いなご
 景を素直に簡明に詠まれたいい句です。広大な美しい景がよくわかります。
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8 昼下がりオカリナ聞きて秋深む 初 霜
<添削> 秋深むオカリナ鳴らす昼下がり
下五を上五にもってきました。このほうが調子がよくなります。
「聞きて」を「鳴らす」としてみました。
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9 みかん買う缶にカランと百円玉 哲 朗
 下六になりますが、「百円玉」と名詞ですからいいと思います 
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10 母想ふ金木犀の香りをり 彰 子
 私の句です。母が大好きだった金木犀が咲くと母をしきりに想い出します。
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11 十二月来るふるさとの海の紺 彰 子
私の句です。私は尾道の海岸近くに住んでいました。十二月が来ると
何故か故郷の海が恋しくなります。
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12 冬近し毛がにづくしのおしながき 浩 風
 「蟹」は夏の季語、「ずわい蟹」は冬の季語です。「おしながき」は料理で
みますが、広辞苑にはありません。一般に使えるのかどうか分かりません。
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13 しお風にコスモスなびく撮影会 そらまめ
<添削> 潮風にコスモスなびく撮影会
いい句です。コスモスが目に浮かびます。いい写真が撮れましたか。
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14 日暮れどき殊にさやけき蕎麦の花   泉
 広辞苑では「さやけし」はありますが、「さやけき」はありません。 
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15 手を打って鯉寄す池の夕紅葉 コスモス
<添削> 手を打てば鯉の群がる夕紅葉
 簡明にしましょう。「鯉寄す池の」では物が多過ぎるので「池」を
省略しました。添削句で池とか川とかが出てくると思います。 
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16 空澄みて殺し屋百舌の鳴き叫ぶ 峰 生
<添削> 碧天に殺し屋百舌の鳴き叫ぶ
「空澄みて」「百舌」は秋の季語で、季重ねになります。
百舌は小鳥ながら肉食獰猛(どうもう)です。「殺し屋百舌」とは
おもしろいですね。
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17 鵙鳴けり賽の河原に石積みし 媛 香
<添削> 鵙鳴けり賽の河原に石を積み
「鵙の早贄」という季語があり、「賽の河原」は付く感じがしないでも
ありません。
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18 図書館へ桜紅葉の回り道 楓 花
 いい句です。図書館へ行くのに遠回りであるが桜紅葉を見るのが楽しみ。
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19 寒風にさらされ野道をトボトボと 蝋 梅
<添削> 寒風にさらされ野道とぼとぼと
 中八になります。「トボトボ」は「とぼとぼ」にしました。
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20 紅玉のジャム煮る午後はワルツ聴く 楓 花
 いい句です。「紅玉」が「りんご」で季語。甘酸っぱいおいしそうな
ジャムができたのでしょう。ワルツを聞きながらいい気分になっている。
「ワルツ聴く」の動詞がなくなるとさらによくなります。
俳句は動詞を使わないほうが良いのです。例えば「シューベルト」とする。
これでシューベルトの音楽を聞いていることになるのです。
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21 OBの人生談義温め酒 浩 風
いい句です。OBはアルコールが入るといつも熱弁をふるう。
先輩の人生談義を熱心に聞いている。
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22 いつになく澄まし顔の子七五三 いなご
<添削> いつになく澄まし顔する七五三
 いい句です。子はいらないと思います。
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23 秋澄みてセールドリルや日本丸 そらまめ
 いい句です。碧空にセールドリルが映える、素晴らしい光景。
男のロマンを感じる。
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24 天高く全開帆船華麗なり そらまめ
<添削> 華麗なる全開帆船天高し
 下五と上五を入れ替えてみました。いい句ですよ。現場での実感を
素直に平明に詠むといい句になります。
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25 あわあわと空あわあわと枇杷の花 彰 子
 私の句です。枇杷は冬、芳香のある白い花がかたまり咲く。
目立たない花です。
 この枇杷の花を「空あわあわと」というリフレンを重ねて詠んでみました。
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26 競い合う大輪小輪菊花展 石の花
<添削> 菊花展今を盛りと競い合ふ
中八になります。調子が悪いのでこのようにしてみました。
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27 内閣がどう替わらうと冬支度 竹 豪
 世相などの句は難しく、俳句になりにくいのです。 
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28 バラの虫刺まで食わん面構え 竹 豪
<添削> 薔薇の刺食わんと虫の構へをり
 このような句もできます。
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29 父逝きし年を数ふる吾も歳 竹 豪
 季語がありません。考えて見てください。 
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30 何事もなく片隅に石蕗の花 哲 朗
 いい句です。何事もないのが幸せなのです。めだたない「石蕗の花」の
季語が効いています。 
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31 銀杏のナメコに落つる音さえる 蝋 梅
 ナメコは食用のナメコのことでしょうか。「なめこ」は冬の季語で、
「銀杏落ちる」は秋の季語。句意がよく分かりません。悪しからず。
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32 飛行機雲西から東尾を引いて 菜の花
季語がありません。考えてみてください。切れ字もどうかと思います。 
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33 故郷の空気は旨し紅葉狩り さつき
 いい句です。久しぶりに故郷に帰り、母と一緒に紅葉狩りをする。
さぞ楽しかったことでしょう。
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34 仁王門猫ひたひたと冬に入る 哲 朗
 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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35 ちちははの眠れる寺に銀杏散る 楓 花
<添削> 銀杏散るちちはは眠る寺の裏
 調子が今ひとつ。また説明的なので下五を上五にもってきてこのように
してみました。
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36 遙かなる母へ文書く夜長かな 媛 香
 いい句です。年老いた母へ手紙を書いている。母にはいつまでも
元気であってほしいと思いながら。母思いの貴方。
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37 一草庵ひとりじめして落葉踏む さつき
<添削> 落葉踏む一草庵をひとりじめ
 いい句です。一草庵をひとりじめして放浪の山頭火を偲んでいるのです。
季語もよく効いています。添削句のように下五を上五に持ってくるのも
いいと思います。
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38 湧ヶ淵一人たたずむ菊日和  泉
<添削> 菊日和一人たたずむ湧ヶ淵
湧ヶ淵|一人たたずむ|菊日和|と三段切れになるのではないでしょうか。
 下五を上五にもってきました。このほうが「菊日和」の季語が効いて
きませんか。
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39 老猫の日なたぼこだけ遊園地 峰 生
<添削> 路地裏の辺にシャム猫の日向ぼこ
 「老猫「と「日向ぼこ」は付くのでこのようにしてみました。
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40 寝る前に二人で飲みし卵酒 初 霜
いい句です。いつまでも仲良く。さぞ卵酒が美味しいことでしょう。
ぐっすり眠れます。
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41 一服の抹茶点ており文化の日 いなご
<添削> 一服の抹茶をすする文化の日
「抹茶点て」を「抹茶たて」と読むのでしょうか。 
文化の日の御点前、心が和む。
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42 菊花展松山城を飾り付け 石の花
<添削> 松山城石手寺飾る菊花展
 調子が悪いので、上五を下五にもってきました。いかがですか。
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43 一人膳向かえば親し秋の蝿 コスモス
 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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44 四方の闇物音もなく冬迫る 初 霜
 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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45 石鎚の紅葉背(そびら)にうつさるる  泉
 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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46 虫集く湯殿に手足伸ばしけり 千 柳
 いい句です。一日の疲れが吹っ飛ぶ。いい気分です。
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47 夕紅葉湯ぶねにひたり同期なる 浩 風
<添削> 同期生と湯船につかる初紅葉
 調子が悪いので、このようにしてみました。湯船につかりながら話が弾む。
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48 紅葉風揺れて歩止めるかずら橋 媛 香
<添削> かずら橋揺れ歩を止める薄紅葉
 「紅葉風」という季語はないように思いますが。「歩止める」は
 「歩を止める」でしょう。添削句のようにしてみました。
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49 病床に詠みし句集や秋の遺書 さつき
<添削> 病床に詠みし句集や冬ぬくし
 「秋の遺書」はどうかと思います。「病床」に対して配する季語は
明るいとか軟らかい季語がいいとされています。
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50 カーナビのリードにまかせ紅葉狩り 千 柳
<添削> カーナビのリードにまかせ紅葉狩
 現代的ないい句だと思います。「紅葉狩り」→「紅葉狩」。俳句では
名詞などに送り仮名はつけません。
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51 枯葉舞ふ路地早々と暮初めり 峰 生
いい句です。掃いても掃いても枯葉が舞う。この頃の暮れるのは早い。
そろそろ夕支度を始めよう。