11月分俳句の添削と寸評 |
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「小雪」も終わり、日増しに冬らしくなってきました。寒くなると外へ |
出るのが億劫になり勝ちですが、元気をだして出歩き、しっかり自然を |
みつめ、いつものように添削と寸評をいたします。作句者の思いと |
違うこともあると思いますが、悪しからずご了承ください。 |
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番号 |
投 句 |
1 |
野も山も赤と黄色に染められて |
菜の花 |
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<添削> 一山紅葉ほうほうと風わたる |
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季語がありません。そして、これでは説明になります。 |
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もっと焦点をしぼって詠みましょう。また切れ字が弱いと思います。 |
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添削句では、「一山紅葉」で名詞切れになっています。 |
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2 |
キャンプ場空き缶一つ秋の風 |
コスモス |
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<添削> 公園に空き缶一つ秋の風 |
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景はよく分かります。そして、面白いと思いますが、 |
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キャンプ場|空き缶一つ|秋の風|と三段切れになっています。 |
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「キャンプ」は夏の季語です。「キャンプ場」を「公園の」にしました。 |
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いいところに目をつけられました。公衆の場はお互いにきれいに |
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したいものです。いい句になります。 |
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3 |
同窓会秋の夜長に更けるまで |
菜の花 |
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<添削> 同窓の談義夜長の更けるまで |
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「夜長」は秋の季語です「秋の夜長」は重複します。久しぶりの同窓会、 |
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時間の経つのも忘れて話が弾んだことでしょう。 |
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4 |
身にしみる網目を抜ける空っ風 |
蝋 梅 |
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「しみる」「空っ風」はともに冬の季語で季重ねになります。 |
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「空っ風」は吹きすさぶ強い北風のことで、「細目を抜ける」と |
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言うのがよく分かりません。 |
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5 |
鉢植えの銀杏も日々に色づいて |
千 柳 |
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<添削> 鉢植への日ごとに太る銀杏の実 |
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「銀杏散る」、「銀杏の実」は季語です。 |
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また、はっきりした切れ字がありません。丹精込めて育てている銀杏。 |
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楽しみである。 |
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6 |
かずら橋いにしえの里深紅葉 |
石の花 |
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<添削> かずら橋大きく揺るる深紅葉 |
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かずら橋|いにしえの里|深紅葉|と三段切れになります。 |
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切れ字は一つか二つにしましょう。かずら橋付近の紅葉は美しいですね。 |
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7 |
近景も遠景もよし紅葉山 |
いなご |
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景を素直に簡明に詠まれたいい句です。広大な美しい景がよくわかります。 |
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8 |
昼下がりオカリナ聞きて秋深む |
初 霜 |
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<添削> 秋深むオカリナ鳴らす昼下がり |
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下五を上五にもってきました。このほうが調子がよくなります。 |
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「聞きて」を「鳴らす」としてみました。 |
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9 |
みかん買う缶にカランと百円玉 |
哲 朗 |
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下六になりますが、「百円玉」と名詞ですからいいと思います |
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10 |
母想ふ金木犀の香りをり |
彰 子 |
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私の句です。母が大好きだった金木犀が咲くと母をしきりに想い出します。 |
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11 |
十二月来るふるさとの海の紺 |
彰 子 |
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私の句です。私は尾道の海岸近くに住んでいました。十二月が来ると |
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何故か故郷の海が恋しくなります。 |
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12 |
冬近し毛がにづくしのおしながき |
浩 風 |
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「蟹」は夏の季語、「ずわい蟹」は冬の季語です。「おしながき」は料理で |
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みますが、広辞苑にはありません。一般に使えるのかどうか分かりません。 |
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13 |
しお風にコスモスなびく撮影会 |
そらまめ |
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<添削> 潮風にコスモスなびく撮影会 |
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いい句です。コスモスが目に浮かびます。いい写真が撮れましたか。 |
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14 |
日暮れどき殊にさやけき蕎麦の花 |
泉 |
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広辞苑では「さやけし」はありますが、「さやけき」はありません。 |
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15 |
手を打って鯉寄す池の夕紅葉 |
コスモス |
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<添削> 手を打てば鯉の群がる夕紅葉 |
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簡明にしましょう。「鯉寄す池の」では物が多過ぎるので「池」を |
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省略しました。添削句で池とか川とかが出てくると思います。 |
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16 |
空澄みて殺し屋百舌の鳴き叫ぶ |
峰 生 |
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<添削> 碧天に殺し屋百舌の鳴き叫ぶ |
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「空澄みて」「百舌」は秋の季語で、季重ねになります。 |
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百舌は小鳥ながら肉食獰猛(どうもう)です。「殺し屋百舌」とは |
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おもしろいですね。 |
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17 |
鵙鳴けり賽の河原に石積みし |
媛 香 |
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<添削> 鵙鳴けり賽の河原に石を積み |
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「鵙の早贄」という季語があり、「賽の河原」は付く感じがしないでも |
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ありません。 |
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18 |
図書館へ桜紅葉の回り道 |
楓 花 |
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いい句です。図書館へ行くのに遠回りであるが桜紅葉を見るのが楽しみ。 |
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19 |
寒風にさらされ野道をトボトボと |
蝋 梅 |
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<添削> 寒風にさらされ野道とぼとぼと |
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中八になります。「トボトボ」は「とぼとぼ」にしました。 |
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20 |
紅玉のジャム煮る午後はワルツ聴く |
楓 花 |
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いい句です。「紅玉」が「りんご」で季語。甘酸っぱいおいしそうな |
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ジャムができたのでしょう。ワルツを聞きながらいい気分になっている。 |
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「ワルツ聴く」の動詞がなくなるとさらによくなります。 |
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俳句は動詞を使わないほうが良いのです。例えば「シューベルト」とする。 |
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これでシューベルトの音楽を聞いていることになるのです。 |
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21 |
OBの人生談義温め酒 |
浩 風 |
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いい句です。OBはアルコールが入るといつも熱弁をふるう。 |
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先輩の人生談義を熱心に聞いている。 |
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22 |
いつになく澄まし顔の子七五三 |
いなご |
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<添削> いつになく澄まし顔する七五三 |
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いい句です。子はいらないと思います。 |
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23 |
秋澄みてセールドリルや日本丸 |
そらまめ |
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いい句です。碧空にセールドリルが映える、素晴らしい光景。 |
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男のロマンを感じる。 |
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24 |
天高く全開帆船華麗なり |
そらまめ |
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<添削> 華麗なる全開帆船天高し |
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下五と上五を入れ替えてみました。いい句ですよ。現場での実感を |
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素直に平明に詠むといい句になります。 |
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25 |
あわあわと空あわあわと枇杷の花 |
彰 子 |
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私の句です。枇杷は冬、芳香のある白い花がかたまり咲く。 |
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目立たない花です。 |
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この枇杷の花を「空あわあわと」というリフレンを重ねて詠んでみました。 |
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26 |
競い合う大輪小輪菊花展 |
石の花 |
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<添削> 菊花展今を盛りと競い合ふ |
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中八になります。調子が悪いのでこのようにしてみました。 |
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27 |
内閣がどう替わらうと冬支度 |
竹 豪 |
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世相などの句は難しく、俳句になりにくいのです。 |
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28 |
バラの虫刺まで食わん面構え |
竹 豪 |
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<添削> 薔薇の刺食わんと虫の構へをり |
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このような句もできます。 |
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29 |
父逝きし年を数ふる吾も歳 |
竹 豪 |
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季語がありません。考えて見てください。 |
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30 |
何事もなく片隅に石蕗の花 |
哲 朗 |
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いい句です。何事もないのが幸せなのです。めだたない「石蕗の花」の |
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季語が効いています。 |
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31 |
銀杏のナメコに落つる音さえる |
蝋 梅 |
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ナメコは食用のナメコのことでしょうか。「なめこ」は冬の季語で、 |
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「銀杏落ちる」は秋の季語。句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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32 |
飛行機雲西から東尾を引いて |
菜の花 |
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季語がありません。考えてみてください。切れ字もどうかと思います。 |
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33 |
故郷の空気は旨し紅葉狩り |
さつき |
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いい句です。久しぶりに故郷に帰り、母と一緒に紅葉狩りをする。 |
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さぞ楽しかったことでしょう。 |
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34 |
仁王門猫ひたひたと冬に入る |
哲 朗 |
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私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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35 |
ちちははの眠れる寺に銀杏散る |
楓 花 |
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<添削> 銀杏散るちちはは眠る寺の裏 |
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調子が今ひとつ。また説明的なので下五を上五にもってきてこのように |
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してみました。 |
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36 |
遙かなる母へ文書く夜長かな |
媛 香 |
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いい句です。年老いた母へ手紙を書いている。母にはいつまでも |
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元気であってほしいと思いながら。母思いの貴方。 |
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37 |
一草庵ひとりじめして落葉踏む |
さつき |
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<添削> 落葉踏む一草庵をひとりじめ |
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いい句です。一草庵をひとりじめして放浪の山頭火を偲んでいるのです。 |
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季語もよく効いています。添削句のように下五を上五に持ってくるのも |
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いいと思います。 |
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38 |
湧ヶ淵一人たたずむ菊日和 |
泉 |
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<添削> 菊日和一人たたずむ湧ヶ淵 |
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湧ヶ淵|一人たたずむ|菊日和|と三段切れになるのではないでしょうか。 |
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下五を上五にもってきました。このほうが「菊日和」の季語が効いて |
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きませんか。 |
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39 |
老猫の日なたぼこだけ遊園地 |
峰 生 |
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<添削> 路地裏の辺にシャム猫の日向ぼこ |
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「老猫「と「日向ぼこ」は付くのでこのようにしてみました。 |
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40 |
寝る前に二人で飲みし卵酒 |
初 霜 |
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いい句です。いつまでも仲良く。さぞ卵酒が美味しいことでしょう。 |
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ぐっすり眠れます。 |
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41 |
一服の抹茶点ており文化の日 |
いなご |
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<添削> 一服の抹茶をすする文化の日 |
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「抹茶点て」を「抹茶たて」と読むのでしょうか。 |
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文化の日の御点前、心が和む。 |
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42 |
菊花展松山城を飾り付け |
石の花 |
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<添削> 松山城石手寺飾る菊花展 |
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調子が悪いので、上五を下五にもってきました。いかがですか。 |
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43 |
一人膳向かえば親し秋の蝿 |
コスモス |
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私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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44 |
四方の闇物音もなく冬迫る |
初 霜 |
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私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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45 |
石鎚の紅葉背(そびら)にうつさるる |
泉 |
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私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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46 |
虫集く湯殿に手足伸ばしけり |
千 柳 |
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いい句です。一日の疲れが吹っ飛ぶ。いい気分です。 |
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47 |
夕紅葉湯ぶねにひたり同期なる |
浩 風 |
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<添削> 同期生と湯船につかる初紅葉 |
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調子が悪いので、このようにしてみました。湯船につかりながら話が弾む。 |
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48 |
紅葉風揺れて歩止めるかずら橋 |
媛 香 |
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<添削> かずら橋揺れ歩を止める薄紅葉 |
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「紅葉風」という季語はないように思いますが。「歩止める」は |
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「歩を止める」でしょう。添削句のようにしてみました。 |
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49 |
病床に詠みし句集や秋の遺書 |
さつき |
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<添削> 病床に詠みし句集や冬ぬくし |
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「秋の遺書」はどうかと思います。「病床」に対して配する季語は |
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明るいとか軟らかい季語がいいとされています。 |
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50 |
カーナビのリードにまかせ紅葉狩り |
千 柳 |
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<添削> カーナビのリードにまかせ紅葉狩 |
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現代的ないい句だと思います。「紅葉狩り」→「紅葉狩」。俳句では |
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名詞などに送り仮名はつけません。 |
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51 |
枯葉舞ふ路地早々と暮初めり |
峰 生 |
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いい句です。掃いても掃いても枯葉が舞う。この頃の暮れるのは早い。 |
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そろそろ夕支度を始めよう。 |