12月分の添削と寸評 |
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今年も早いもので、年の瀬も迫ってきました。 |
何かしら気ぜわしい日々をお過ごしのことと思います。 |
若草句会が発足して一年が経ちましたが、順調に歩んできたと思います。 |
それは脱落者もなく、そして少しずつ巧くなっているということです。 |
ところで、自分では巧くなっていないと思いがちですが、確実に巧くなって |
いますので、自信を持ってください。俳句が少し分かってきたと思いませんか。 |
前にも言いましたが、選句で点が入らなくても決して落胆しないでください。 |
俳句は好不調があります。そして選者に受ける句、受けにくい句 |
などにより、選は分かれます。どうか一年二年という長いスパンで |
考えましょう。 |
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若草句会は来年も GAM(ガム)「元気で明るく前向きに」でいきましょう。 |
さようなら 2005年 |
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今月もいい句が沢山ありました。私なりの添削と寸評をします。 |
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番号 |
投 句 |
1 |
葉の散るも明日を期してや芽は眠る |
峰 生 |
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<添削> 葉の散るも明日を期してや我を見る |
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「葉が散る」は「落ち葉」「木の葉散る」で冬の季語。「山眠る」という |
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冬の季語があります。「芽が眠る」という表現がいいのかどうか私には |
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分かりません。また「葉」と「芽」は付くので避けました。 |
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2 |
廃校の余りに高き烏瓜 |
さつき |
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<添削> 廃校の余りに高き烏瓜 |
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いい句です。情景がよく分かります。廃校はだんだん古びていくが、 |
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烏瓜は大きくなり真っ赤に実っている。 |
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3 |
一筋の糸にかかりし散紅葉 |
さつき |
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<添削> 一筋の糸にかかりし散紅葉 |
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いい句です。「一筋の糸」とは蜘蛛の巣でしょう。蜘蛛の巣に紅葉が |
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かかり揺らいでいる。ちょっとした発見。蜘蛛からみると虫がよかった |
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のでしょうが。 |
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4 |
冬ざれて犬の遠吠え救急車 |
哲 朗 |
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<添削> 冬ざれや西に東に救急車 |
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冬ざれて|犬の遠吠え|救急車|と三段切れになります。「犬の遠吠え」と |
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「救急車」はともに音がします。どちらか一つ使って俳句を詠みましょう。 |
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俳句は簡明をよしとします。 |
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5 |
これが彼の芋蔓式ねと藷を掘り |
楓 花 |
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<添削> これが彼の藷蔓式ねと藷を掘り |
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俳句では「芋」は「里芋」「薯」は「甘藷」「薩摩芋」のことをいいます。 |
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家庭菜園でのひとこまか。微笑ましい光景。 |
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6 |
カレンダー色褪せ極月入りにけり |
コスモス |
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<添削> カレンダー色褪せてゐる忘年会 |
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中八です。カレンダーが色褪せているというのですから一年用のカレンダー |
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でしょう。人生いろいろ、カレンダーはいろんな人を見てきた。 |
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7 |
稲架米旨いツと妻の頬弛む |
竹 豪 |
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<添削> 稲架米旨いと妻の頬弛む |
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いい句です。自分らで作った稲架米、さぞ美味しかったことでしょう。 |
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添削句は素直に詠んでみました。 |
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8 |
あれこれと絵柄に迷ふ年賀状 |
竹 豪 |
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いい句です。12月になると年賀状作りが気になる。そして絵柄に迷って |
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なかなか決まらない。結局、初めのが良かったりするものです。 |
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9 |
寒風に襟をすくめる童たち |
石の花 |
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<添削> 寒風や駆け出す子らの円らな瞳 |
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「寒風に襟をすくめる」は説明になります。子供は風の子、 |
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生き生きしています。 |
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10 |
寒空に老いの身わすれ忘年会 |
菜の花 |
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<添削> 寒空に老ひの身忘れ忘年会 |
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いい句です。寒くなると出不精になる。しかし、今日も冷え込みが厳しい |
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が酒を飲むとなると、いそいそと出かける。風邪を引かないように |
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気をつけて下さい。 |
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11 |
ふるさとの大橋に佇つ懐手 |
彰 子 |
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私の句です。しまなみ海道の尾道大橋に立ち、故郷を眺めながら |
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感慨にふける。 |
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12 |
忘年に顔それぞれのクラス会 |
石の花 |
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<添削> 古希むかふ顔それぞれの忘年会 |
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「忘年」を「忘年会」というのは無理があります。 |
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したがって季語がありません。 |
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13 |
年賀状書き終え空ける残り酒 |
蝋 梅 |
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<添削> 賀状書き終え空ける残り酒 |
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いい句です。やっと年賀状を書き終え、いい気分で酒を飲む。 |
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酒がうまい。余り飲み過ぎないように。 |
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14 |
放列のカメラの先は谷紅葉 |
楓 花 |
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<添削> 大小のカメラ陣取る谷紅葉 |
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「カメラの先は」となると説明になるのでこのようにしてみました。 |
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カメラが放列する谷紅葉とは何処でしょう。さぞ美しいことでしょう。 |
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15 |
予防注射効いたか少し風邪模様 |
千 柳 |
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説明になり、詩情に乏しい。考えてみてください。 |
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16 |
年の瀬に気ぜわし言いつ旅行かな |
菜の花 |
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説明になり、詩情に乏しい。考えてみてください。 |
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17 |
喪の葉書区切れてサテッと年賀状 |
竹 豪 |
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<添削> 喪の葉書区切れてさてと年賀状 |
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中八になります。素直な表現にしてみました。いい句です。年賀状は |
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年の瀬が押し迫らないと手に付かないものですが、喪の葉書が区切れた |
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ときが年賀状を書き始めるきっかけになります。 |
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18 |
商店街くじ引きの鈴慌ただしく |
菜の花 |
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季語がありません。また、商店街|くじ引きの鈴|慌ただしく| |
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と三段切れになり、下五が下六になっています。考えてみてください。 |
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19 |
せわしなく込み合う街の師走かな |
蝋 梅 |
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<添削> 福引きの鈴鳴り響く師走かな |
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具象生に欠けます。師走のせわしい様子を何か具体的に詠んでみてください。 |
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20 |
第九聴き師走の朝の忙しさ |
泉 |
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<添削> 第九聴く師走の朝の厨妻 |
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「忙しさ」を「厨妻」にしてみました。この方が具象性がありませんか。 |
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21 |
酔い深し師走の誓い又何処へ |
峰 生 |
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<添削> 深酔す師走の誓ひ何処へやら |
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意志が弱いのです。命あっての物種です。自分の体は自分で守りましょう。 |
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22 |
玄海のしぶく岩山鵜のねぐら |
ゆづき |
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<添削> 鵜の鳥の群るる玄海灘の岩 |
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いい句です。「しぶく」はやや説明的かなと思い、添削句のようにして |
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みました。海鵜は海岸の絶壁や岩礁で見られる鳥です。 |
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23 |
願かけの鈴虫寺の紅葉かな |
浩 風 |
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いい句です。紅葉に映える鈴虫寺が美しい。 |
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24 |
筆供養鯛や大根奉納す |
媛 香 |
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筆供養|鯛や大根|奉納す|と三段切れになります。 |
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また、説明になります。物が多くて言い過ぎになっています。季語を |
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生かしたいものです。考えてみてください。 |
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25 |
猛犬に注意の貼り紙柿熟るる |
コスモス |
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いい句です。中八ですが、名詞で切れるので、いいと思います。 |
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おいしそうに柿が実っている。猛犬がいると泥棒よけになります。 |
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26 |
音もなく散るや枯れ葉の石畳 |
ゆづき |
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いい句です。静寂なひととき。 |
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27 |
骨折の妻入院す師走なる |
浩 風 |
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いい句です。歳末の忙しいときに妻が骨折。大変でしたね。 |
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しかし、何はともあれゆっくりご静養を。 |
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28 |
年毎に妻の賀状は増えてゆく |
千 柳 |
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<添削> 増えゆくや妻の賀状の年毎に |
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いい句だと思います。切れが弱いので、添削句のようにしてみました。 |
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29 |
雪景色なかにそびえる天守閣 |
石の花 |
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<添削> しんしんと雪降っている天守閣 |
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説明的なので、このような句にしてみました。 |
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30 |
冬雲や中より聞こゆ飛機(ひき)の音 |
初 霜 |
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<添削> 冬雲の中より聞こゆ飛機(ひき)の音 |
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「冬雲や」で切ると冬雲への思いが強くなります。 |
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添削句のようにしてみました。いい句です。 |
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31 |
菊の香を乗せてサーヤのお嫁入り |
千 柳 |
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いい句です。今年の最大の慶事。サーヤの微笑ましい顔が印象的。 |
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きっと素晴らしい家庭を築かれることでしょう。 |
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32 |
寒風をバイクで駆ける通勤路 |
泉 |
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いい句です。毎日ご苦労さんです。雨の日は大変ですね。 |
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交通事故にはくれぐれも気を付けてください。 |
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33 |
池の端羽を寄せ合う冬の鴨 |
泉 |
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<添削> 堀端の羽を寄せ合ふ冬の鴨 |
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池の端|羽を寄せ合う|冬の鴨|と三段切れになるので |
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このようにしてみました。 |
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34 |
立ち話はや陰りくる冬日かな |
哲 朗 |
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<添削> 立ち話弾む冬日のはや陰り |
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立ち話|はや陰りくる|冬日かな|と三段切れになります。 |
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添削句のようにしてみました。 |
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35 |
フェリー行く半円球の冬銀河 |
楓 花 |
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いい句です。フェリーから見る冬銀河が美しい。 |
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36 |
老犬や番にならずに日向ボコ |
初 霜 |
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<添削> 老犬や番にならずに日向ぼこ |
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いい句です。老犬はもうお役目は終わり、ゆっくり余生を楽しんで |
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いるのです。 |
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37 |
ふぐと汁人の顔見てすすりおり |
いなご |
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<添削> ふぐと汁人の顔見てすすりをり |
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説明的であり、句意がよく分かりません。「ふくと汁」に対し、 |
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違う物を詠むといいのですが。歳時記の例句をよく見ると私のいうことが |
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分かると思います。 |
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38 |
一日の無事を満喫炬燵なか |
初 霜 |
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<添削> 一日の無事が幸せ切炬燵 |
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「無事を満喫」という表現はいかがなものでしょうか。ここでの「かな」 |
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止めはよくないと思います。 |
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39 |
大岩に二人凭りゐる雁の声 |
彰 子 |
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私の句です。山登りが好きな二人です。休憩していると遠くより |
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雁の声がする。 |
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40 |
ちらと雪降るおはなはん通かな |
彰 子 |
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私の句です。大洲のおはなはん通りを散策していたら雪がちらついてくる。 |
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何とも言えない素晴らしい情景でした。 |
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41 |
防人り(おさもり)の砲台跡の野菊かな |
ゆづき |
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<添削> 防人(さきもり)の砲台跡の野菊かな |
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いい句です。季語がよく効いています。廃れてきた古戦場にひっそりと野菊 |
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が咲いているという、いい光景ですね。「防人」は「さきもり」と読みます。 |
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42 |
風と日が程良く当たる干し大根 |
哲 朗 |
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<添削> 風と日が程良く当たる干大根 |
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いい句です。丹精込めた大根が今年は天候にも恵まれよくできた。 |
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風と陽が程よく当たりいい沢庵漬けができることでしょう。大根への |
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思い入れが伝わってきます。 |
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43 |
息白し炎に焼べし束ね筆 |
媛 香 |
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<添削> 年ゆくや炎に焼べる束ね筆 |
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季語を変え、「焼べし」という過去形を「焼べる」という現在形に |
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変えてみましたが、どんなもんでしょうか。 |
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44 |
野ボタンを短く切って冬支度 |
さつき |
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「牡丹」は夏の季語です。考えてみてください。 |
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45 |
台所メモいっぱいの古暦 |
いなご |
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<添削> 乱雑にメモいっぱいの古暦 |
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「台所」で切るのはどうかと思います。 |
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添削句ではメモだけに焦点を当てて詠んでいます。 |
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46 |
我こそと猛烈の列宝くじ |
峰 生 |
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季語がありません。考えてみてください。 |
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47 |
ライトアップ紅葉の下で撮影会 |
媛 香 |
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<添削> 果てしなきライトアップの片紅葉 |
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「撮影会」となると説明的になるので、紅葉だけで詠んでみました。 |
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48 |
ボーナスを貰わぬ事に慣れてきし |
いなご |
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<添削> ボーナスの無き年の瀬の庭仕事 |
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具象性に欠けます。物などに託して詠みましょう。 |
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49 |
病院や病の増える師走かな |
蝋 梅 |
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<添削> 救急の患者の増える師走かな |
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「や」「かな」は強い切れ字で、二つ使わないようにしてください。 |
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「病院」と「病」は付きすぎになります。 |
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50 |
レッカーピアノ立冬の空遊歩する |
コスモス |
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私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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51 |
渡月橋渡る人波照紅葉 |
浩 風 |
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いい句です。渡月橋のある嵐山周辺は京都屈指の紅葉の名所で大勢の |
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人で賑あう所。素晴らしい風景です。 |