平成17年12月1日〜平成17年12月20日 投句分
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互 選 句
12月分の添削と寸評
今年も早いもので、年の瀬も迫ってきました。
何かしら気ぜわしい日々をお過ごしのことと思います。
若草句会が発足して一年が経ちましたが、順調に歩んできたと思います。
それは脱落者もなく、そして少しずつ巧くなっているということです。
ところで、自分では巧くなっていないと思いがちですが、確実に巧くなって
いますので、自信を持ってください。俳句が少し分かってきたと思いませんか。
前にも言いましたが、選句で点が入らなくても決して落胆しないでください。
俳句は好不調があります。そして選者に受ける句、受けにくい句
などにより、選は分かれます。どうか一年二年という長いスパンで
考えましょう。
若草句会は来年も GAM(ガム)「元気で明るく前向きに」でいきましょう。
さようなら  2005年
今月もいい句が沢山ありました。私なりの添削と寸評をします。
番号      投   句
1 葉の散るも明日を期してや芽は眠る 峰 生
<添削> 葉の散るも明日を期してや我を見る 
 「葉が散る」は「落ち葉」「木の葉散る」で冬の季語。「山眠る」という
冬の季語があります。「芽が眠る」という表現がいいのかどうか私には
分かりません。また「葉」と「芽」は付くので避けました。
2 廃校の余りに高き烏瓜 さつき
<添削> 廃校の余りに高き烏瓜
 いい句です。情景がよく分かります。廃校はだんだん古びていくが、
烏瓜は大きくなり真っ赤に実っている。
3 一筋の糸にかかりし散紅葉 さつき
<添削> 一筋の糸にかかりし散紅葉
 いい句です。「一筋の糸」とは蜘蛛の巣でしょう。蜘蛛の巣に紅葉が
かかり揺らいでいる。ちょっとした発見。蜘蛛からみると虫がよかった
のでしょうが。
4 冬ざれて犬の遠吠え救急車 哲 朗
<添削> 冬ざれや西に東に救急車
 冬ざれて|犬の遠吠え|救急車|と三段切れになります。「犬の遠吠え」と
「救急車」はともに音がします。どちらか一つ使って俳句を詠みましょう。
俳句は簡明をよしとします。
5 これが彼の芋蔓式ねと藷を掘り 楓 花
<添削> これが彼の藷蔓式ねと藷を掘り
 俳句では「芋」は「里芋」「薯」は「甘藷」「薩摩芋」のことをいいます。
家庭菜園でのひとこまか。微笑ましい光景。
6 カレンダー色褪せ極月入りにけり コスモス
<添削> カレンダー色褪せてゐる忘年会
 中八です。カレンダーが色褪せているというのですから一年用のカレンダー
でしょう。人生いろいろ、カレンダーはいろんな人を見てきた。
7 稲架米旨いツと妻の頬弛む 竹 豪
<添削> 稲架米旨いと妻の頬弛む
 いい句です。自分らで作った稲架米、さぞ美味しかったことでしょう。
添削句は素直に詠んでみました。
8 あれこれと絵柄に迷ふ年賀状 竹 豪
 いい句です。12月になると年賀状作りが気になる。そして絵柄に迷って
なかなか決まらない。結局、初めのが良かったりするものです。
9 寒風に襟をすくめる童たち 石の花
<添削> 寒風や駆け出す子らの円らな瞳
 「寒風に襟をすくめる」は説明になります。子供は風の子、
生き生きしています。
10 寒空に老いの身わすれ忘年会 菜の花
<添削> 寒空に老ひの身忘れ忘年会
 いい句です。寒くなると出不精になる。しかし、今日も冷え込みが厳しい
が酒を飲むとなると、いそいそと出かける。風邪を引かないように
気をつけて下さい。 
11 ふるさとの大橋に佇つ懐手 彰 子
 私の句です。しまなみ海道の尾道大橋に立ち、故郷を眺めながら
感慨にふける。
12 忘年に顔それぞれのクラス会 石の花
<添削> 古希むかふ顔それぞれの忘年会
 「忘年」を「忘年会」というのは無理があります。
したがって季語がありません。
13 年賀状書き終え空ける残り酒 蝋 梅
<添削> 賀状書き終え空ける残り酒
 いい句です。やっと年賀状を書き終え、いい気分で酒を飲む。
酒がうまい。余り飲み過ぎないように。
14 放列のカメラの先は谷紅葉 楓 花
<添削> 大小のカメラ陣取る谷紅葉
 「カメラの先は」となると説明になるのでこのようにしてみました。
カメラが放列する谷紅葉とは何処でしょう。さぞ美しいことでしょう。
15 予防注射効いたか少し風邪模様 千 柳
 説明になり、詩情に乏しい。考えてみてください。
16 年の瀬に気ぜわし言いつ旅行かな 菜の花
 説明になり、詩情に乏しい。考えてみてください。
17 喪の葉書区切れてサテッと年賀状 竹 豪
<添削> 喪の葉書区切れてさてと年賀状
 中八になります。素直な表現にしてみました。いい句です。年賀状は
年の瀬が押し迫らないと手に付かないものですが、喪の葉書が区切れた
ときが年賀状を書き始めるきっかけになります。
18 商店街くじ引きの鈴慌ただしく 菜の花
 季語がありません。また、商店街|くじ引きの鈴|慌ただしく|
と三段切れになり、下五が下六になっています。考えてみてください。
19 せわしなく込み合う街の師走かな 蝋 梅
<添削> 福引きの鈴鳴り響く師走かな
 具象生に欠けます。師走のせわしい様子を何か具体的に詠んでみてください。
20 第九聴き師走の朝の忙しさ  
<添削> 第九聴く師走の朝の厨妻
「忙しさ」を「厨妻」にしてみました。この方が具象性がありませんか。
21 酔い深し師走の誓い又何処へ 峰 生
<添削> 深酔す師走の誓ひ何処へやら
 意志が弱いのです。命あっての物種です。自分の体は自分で守りましょう。
22 玄海のしぶく岩山鵜のねぐら ゆづき
<添削> 鵜の鳥の群るる玄海灘の岩
 いい句です。「しぶく」はやや説明的かなと思い、添削句のようにして
みました。海鵜は海岸の絶壁や岩礁で見られる鳥です。
23 願かけの鈴虫寺の紅葉かな 浩 風
 いい句です。紅葉に映える鈴虫寺が美しい。
24 筆供養鯛や大根奉納す 媛 香
 筆供養|鯛や大根|奉納す|と三段切れになります。
また、説明になります。物が多くて言い過ぎになっています。季語を
生かしたいものです。考えてみてください。
25 猛犬に注意の貼り紙柿熟るる コスモス
 いい句です。中八ですが、名詞で切れるので、いいと思います。
おいしそうに柿が実っている。猛犬がいると泥棒よけになります。
26 音もなく散るや枯れ葉の石畳 ゆづき
 いい句です。静寂なひととき。
27 骨折の妻入院す師走なる 浩 風
 いい句です。歳末の忙しいときに妻が骨折。大変でしたね。
しかし、何はともあれゆっくりご静養を。
28 年毎に妻の賀状は増えてゆく 千 柳
<添削> 増えゆくや妻の賀状の年毎に
 いい句だと思います。切れが弱いので、添削句のようにしてみました。
29 雪景色なかにそびえる天守閣 石の花
<添削> しんしんと雪降っている天守閣
 説明的なので、このような句にしてみました。
30 冬雲や中より聞こゆ飛機(ひき)の音 初 霜
<添削> 冬雲の中より聞こゆ飛機(ひき)の音
 「冬雲や」で切ると冬雲への思いが強くなります。
添削句のようにしてみました。いい句です。
31 菊の香を乗せてサーヤのお嫁入り 千 柳
 いい句です。今年の最大の慶事。サーヤの微笑ましい顔が印象的。
きっと素晴らしい家庭を築かれることでしょう。
32 寒風をバイクで駆ける通勤路  泉
 いい句です。毎日ご苦労さんです。雨の日は大変ですね。
交通事故にはくれぐれも気を付けてください。
33 池の端羽を寄せ合う冬の鴨  泉
<添削> 堀端の羽を寄せ合ふ冬の鴨
 池の端|羽を寄せ合う|冬の鴨|と三段切れになるので
このようにしてみました。
34 立ち話はや陰りくる冬日かな 哲 朗
<添削> 立ち話弾む冬日のはや陰り
 立ち話|はや陰りくる|冬日かな|と三段切れになります。
添削句のようにしてみました。
35 フェリー行く半円球の冬銀河 楓 花
 いい句です。フェリーから見る冬銀河が美しい。
36 老犬や番にならずに日向ボコ 初 霜
<添削> 老犬や番にならずに日向ぼこ
 いい句です。老犬はもうお役目は終わり、ゆっくり余生を楽しんで
いるのです。
37 ふぐと汁人の顔見てすすりおり いなご
<添削> ふぐと汁人の顔見てすすりをり
 説明的であり、句意がよく分かりません。「ふくと汁」に対し、
違う物を詠むといいのですが。歳時記の例句をよく見ると私のいうことが
分かると思います。
38 一日の無事を満喫炬燵なか 初 霜
<添削> 一日の無事が幸せ切炬燵
 「無事を満喫」という表現はいかがなものでしょうか。ここでの「かな」
止めはよくないと思います。
39 大岩に二人凭りゐる雁の声 彰 子
 私の句です。山登りが好きな二人です。休憩していると遠くより
雁の声がする。 
40 ちらと雪降るおはなはん通かな 彰 子
 私の句です。大洲のおはなはん通りを散策していたら雪がちらついてくる。
何とも言えない素晴らしい情景でした。
41 防人り(おさもり)の砲台跡の野菊かな ゆづき
<添削> 防人(さきもり)の砲台跡の野菊かな
 いい句です。季語がよく効いています。廃れてきた古戦場にひっそりと野菊
が咲いているという、いい光景ですね。「防人」は「さきもり」と読みます。
42 風と日が程良く当たる干し大根 哲 朗
<添削> 風と日が程良く当たる干大根
 いい句です。丹精込めた大根が今年は天候にも恵まれよくできた。
風と陽が程よく当たりいい沢庵漬けができることでしょう。大根への
思い入れが伝わってきます。
43 息白し炎に焼べし束ね筆 媛 香
<添削> 年ゆくや炎に焼べる束ね筆
 季語を変え、「焼べし」という過去形を「焼べる」という現在形に
変えてみましたが、どんなもんでしょうか。
44 野ボタンを短く切って冬支度 さつき
 「牡丹」は夏の季語です。考えてみてください。
45 台所メモいっぱいの古暦 いなご
<添削> 乱雑にメモいっぱいの古暦
 「台所」で切るのはどうかと思います。
添削句ではメモだけに焦点を当てて詠んでいます。
46 我こそと猛烈の列宝くじ 峰 生
 季語がありません。考えてみてください。
47 ライトアップ紅葉の下で撮影会 媛 香
<添削> 果てしなきライトアップの片紅葉
 「撮影会」となると説明的になるので、紅葉だけで詠んでみました。
48 ボーナスを貰わぬ事に慣れてきし いなご
<添削> ボーナスの無き年の瀬の庭仕事
 具象性に欠けます。物などに託して詠みましょう。
49 病院や病の増える師走かな 蝋 梅
<添削> 救急の患者の増える師走かな
 「や」「かな」は強い切れ字で、二つ使わないようにしてください。
 「病院」と「病」は付きすぎになります。
50 レッカーピアノ立冬の空遊歩する コスモス
 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
51 渡月橋渡る人波照紅葉 浩 風
 いい句です。渡月橋のある嵐山周辺は京都屈指の紅葉の名所で大勢の
人で賑あう所。素晴らしい風景です。