平成18年2月披講と添削 |
早いものでもうすぐ三月です。陽三月は俳句では仲春に分類されます。 |
気候がよくなるので外出がしやすくなります。自然にふれて感じたこと、 |
思ったことをその場で俳句にしましょう。一句でも二句でも多く |
作ってください。 |
いい句が多くなっており、大変うれしく思っています。 |
少しでも参考になればと思って、相変わらず私なりの添削と寸評をします。 |
失礼の段はお許しください。 |
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番号 |
披 講 と 添 削 |
1 |
鬼は外園児の声のかわゆらし |
( 泉 ) |
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いい句です。和やかな楽しいひととき。かわいらしい情景が見えてきます。 |
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別句:かわゆらし園児の声や鬼やらひ |
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2 |
着ぶくれて一歳の児の立ち上がる |
(楓 花) |
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いい句です。一歳の児が初めて立ち上がる。着ぶくれているので大変だった |
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ことでしょう。親子の笑顔が目に浮かんできます。微笑ましい光景。 |
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3 |
嬰児の伝い歩きや春隣 |
(いなご) |
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いい句です。這えば立て、立てば歩めの親心。可愛いらしい頃です。 |
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「春隣」の季語がいい。 |
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4 |
寒いネが挨拶となる昨日今日 |
(竹 豪) |
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<添削> 寒いねが挨拶となる昨日今日 |
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いい句です。今年は例年にない寒い冬で、大雪による被害も多くありました。 |
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今年の冬の実感。 |
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5 |
ひと日過ぎゆくぐつぐつとおでん鍋 |
(彰 子) |
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私の句です。おでん鍋をつつきながら今日いち日を振り返る。 |
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6 |
波に乗りみな同じ向き鴨の群 |
(媛 香) |
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<添削> 波に乗る同じ向きなる鴨の群 |
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波に乗り|みな同じ向き|鴨の群|と三段切れになります。「鴨の群」ですから、 |
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「みな」を除けても判るかと思います。 |
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7 |
故郷は今日も大雪降るという |
(千 柳) |
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いい句です。調子がいいですね。故郷は遠くの雪国でしょうか。天気予報を |
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見ていると、記録的な大雪になるという。年取った両親が心配。 |
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8 |
すぐそこに心が痛む花粉症 |
(竹 豪) |
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私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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9 |
人生を語る鮟鱇鍋つつき |
(彰 子) |
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私の句です。鮟鱇鍋をつつきながら人生を熱っぽく語る。 |
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10 |
踏みしめて雪の泣く音を持ち帰り |
(さつき) |
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私には句意がよく分かりません。中八になっています。 |
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11 |
小湊を眼下に匂う花水仙 |
(竹 豪) |
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いい句です。美しい風景が目に浮かびます。 |
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写真を撮ると同時に俳句も作ってください。 |
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12 |
鉢植えの春菊香る椀の中 |
(いなご) |
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いい句です。鉢植えの春菊が椀の中で香っている。 |
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愛おしい気がしないでもないが、美味しそう。 |
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13 |
札幌の雪吹けば飛ぶ軽さかな |
(さつき) |
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<添削> 札幌の雪吹けば飛ぶ晴天下 |
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少し説明的なので添削句のようにしてみました。北海道の雪は湿気がなくて |
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吹くと飛び散ります。札幌の雪祭りに行かれたのでしょうか。 |
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14 |
湯の里に賑わい呼ぶや初子祭 |
(ゆづき) |
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いい句です。初子祭は大変賑やかな祭りです。道後温泉が賑わうように祈る。 |
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15 |
寒の夜に久し振りに見る満月よ |
(菜の花) |
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<添削> 寒の夜の久し振りなる丸い月 |
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「寒の夜」「満月」どちらも強い季語です。 |
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一つの季語の他に「月」を入れている俳句は よくありますが、 |
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「満月」とか「名月」とかの強い季語は避けましょう。中八になっています。 |
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16 |
山茶花の散りて絨毯散歩道 |
(石の花) |
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<添削> 参道の山茶花散りてカーペット |
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「絨毯」で切れるのは調子がよくないと思いまして、添削句のようにしてみました。 |
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散っている山茶花も美しいですね。 |
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17 |
町筋に響く槌音春隣 |
(楓 花) |
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いい句です。今年は景気がよくなりそう。近所での建築ラッシュ。 |
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「春隣」の季語がいい。 |
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18 |
退院の妻と散策梅二三 |
(浩 風) |
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いい句です。妻を気遣いながらの散策。梅もぼつぼつ咲き始めた。 |
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いい季節になってきた。妻が早く元気になってほしいと願う。 |
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19 |
煌として如月の空月ひとつ |
( 泉 ) |
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<添削> 如月の空に煌めく北斗星 |
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「煌々」「煌めく」という言葉はありますが、「煌」という言葉が |
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有るのでしょうか。煌めくのは月より星のほうがよい思います。 |
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20 |
椿さん伊予路の春や賑やかに |
(媛 香) |
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<添削> お四国の春の賑はふ椿さん |
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調子がよくないのでこのようにしてみました。 |
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椿祭りが終わると少しづづ春めいてきます。 |
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21 |
生意気に成人式を終へてより |
(蝋 梅) |
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いい句です。成人式を終えたら大人の仲間入り。 |
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自覚をして行動してほしいと思います。 |
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22 |
散餅(さんぺい)に福を求める初子祭 |
(ゆづき) |
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<添削> 餅投げに福を求める初子祭 |
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「散餅」という言葉はないのではないでしょうか。懸命に餅を拾う。 |
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今年もいい年でありますように。 |
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23 |
凡人でよし福寿草いとほしむ |
(彰 子) |
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私の句です。福寿草はひっそりと咲く可憐な花です。 |
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自分も平凡でよい、真面目に生きていこう。 |
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24 |
年頭の誓いはお屠蘇までのもの |
(千 柳) |
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いい句です。誓い事は長続きしにくく、三日坊主なります。折角ですから |
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そう言わないで続けてください。「年頭」「お屠蘇」は新年の季語ですが、 |
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この場合は許されるのではないでしょうか。 |
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25 |
黙々と忍び渡御行く春の月 |
(コスモス) |
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「忍び渡御」で一般的に意味が分かるでしょうか。考えてみてください。 |
26 |
OBには義理チョコもなく春浅し |
(そらまめ) |
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<添削> 春寒し義理チョコもなき齢にて |
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若いときが花。歳をとると義理チョコもない。人生の悲哀を感じる。 |
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27 |
のどけしや馬うとうとと牧の昼 |
(まこと) |
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いい句です。牧場の馬もうとうとするという。まさに長閑な情景。 |
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自分もうとうとしてくる。 |
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28 |
遠ざかる靴音響く寒の月 |
(さつき) |
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<添削> 遠ざかる礼者の鈴や寒の月 |
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遠ざかる靴音が響くと言うのは無理があると思います。添削句では響くを省略 |
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しています。響くを言わなくても鈴の音が遠ざかっている様子が分かると思います。 |
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29 |
蕗の薹ほころび初めし便りあり |
( 泉 ) |
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<添削> 蕗の薹ほころび初むと母の文 |
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調子がよくないので添削句のようにしてみました。 |
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30 |
めぐり来る梅の開花の遅れゐし |
(浩 風) |
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<添削> お社の梅の開花の遅れゐし |
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今年の冬は格別寒いので、開花が2週間ぐらい遅れているようである。 |
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開花が待ちどおしい。「めぐり来る」まで言わないほうがいいのか? |
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31 |
リハビリの進まぬ腰や隙間風 |
(まこと) |
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<添削> リハビリの進まぬ腰や春日向 |
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「隙間風」は付きすぎ。こういうときは、「リハビリの進まぬ腰や」に対して |
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逆の意味のものを持ってきた方がいいとされています。 |
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32 |
寒戻り人影まばら道の人 |
(石の花) |
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<添削> 寒の戻り人まばらなる散歩道 |
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「寒戻り」ですが、「寒」とは「寒さ」、「寒気」(期間)のことを言います。 |
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「寒の戻り」という言葉はありますが、「寒戻り」という言葉はないのでは |
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ないでしょうか? 寒戻り|人影まばら|道の人| と三段切れになります。 |
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寒さがぶり返してきたので、散歩する人も少なめ。 |
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33 |
やれ無事か苗床覆い積雪が |
(蝋 梅) |
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<添削> 苗床に覆い被さる深雪かな |
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俳句は心情を直接言わないで、物に託して詠んだ中から想像させるものです。 |
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詠む人にまかせるのです。「やれ無事か」と言い切らない方が余情がありませんか。 |
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34 |
サザンカの赤く敷き染め垣根越し |
(菜の花) |
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<添削> さざん花の垣根越しなる赤絨毯 |
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垣根越しの庭に山茶花が絨毯を敷き詰めたように散っている。 |
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美しい光景。調子が悪いのでこのようにしてみました。 |
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35 |
観光客と思しき一団椿祭 |
(コスモス) |
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<添削> 観光者の一団行くや椿祭 |
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中八になります。俳句は断定したほうが、景が明確になりよいようです。 |
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「椿祭」は愛媛地方では季語になっています。椿祭は観光化してきております。 |
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36 |
寒稽古裸足で駆ける豆剣士 |
(哲 朗) |
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<添削> 豆剣士裸足で駆ける寒稽古 |
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上五と下後を入れ替えてみました。豆剣士が寒さにめげず元気いっぱいに駆けている、 |
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勇壮活発な一とき。 |
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37 |
石鎚の湧き名水や春隣り |
(媛 香) |
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<添削> 石鎚の湧き名水や春隣 |
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いい句です。「春隣り」の「り」は削除します。季語がよい。 |
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38 |
待ち侘びた紅梅咲くと庭の声 |
(峰 生) |
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いい句です。待ち望んでいた梅がやっと咲く。庭が呼びかけているように |
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感じたのでしょう。庭の声とはおもしろいですね。 |
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39 |
水鳥の静かに揺らぐ夕日影 |
(哲 朗) |
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いい句です。美しい光景。水鳥も気持ちよさそう。 |
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40 |
朝告げる鐘は遥かに春浅し |
(峰 生) |
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<添削> 早春の遥かに聞こゆ朝の鐘 |
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早春の佇まい。静かに時は流れていく。 |
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41 |
オリンピア期待はずれて春の月 |
(そらまめ) |
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<添削> 春月や期待はずれのオリンピア |
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トリノ冬期オリンピックは期待はずれでしたが、荒川選手が日本初のメタル。 |
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それも金メタルという快挙。日本中が沸き返る。 |
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42 |
紅梅を愛でし娘にメールかな |
(まこと) |
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<添削> 紅梅をこよなく愛す子にメール |
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「かな」は強い切れ字で、大きな感動のときに使います。 |
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43 |
汐風や菜の花土手に汽車が来る |
(そらまめ) |
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<添削> 一両車くる菜の花に汐の風 |
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美しい光景。菜の花も心地よさそう。 |
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44 |
寒月の大円輝き夜の道 |
(石の花) |
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<添削> 寒月の大円仰ぐ里の道 |
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寒月がことさら輝いて見える。古里で見る月に感慨ひとしを。 |
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45 |
立春や恵方に祈りて寿司食らう |
(ゆづき) |
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<添削> 立春や祖先に祈り寿司を食ぶ |
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「立春」は春の季語、「恵方」は新年の季語です。中八になっています。 |
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46 |
陶器市春の水溜め売られけり |
(コスモス) |
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<添削> 春光や水瓶売らる陶器市 |
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「春の水溜め」という意味がよく分かりません。 |
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47 |
椿さん札所の白衣亡父(ちち)重ね |
(菜の花) |
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「椿祭」は季語になりますが、「椿さん」は季語になりません。考えてみてください。 |
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48 |
撒いた餅二つ拾った初子祭 |
(千 柳) |
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いい句です。初子祭での餅投げ、拾うのが大変。二つしか拾えなかったが、 |
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初音祭の餅は縁起がいいのでありがたい。 |
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49 |
春を待つ今宵湖国の濁り酒 |
(楓 花) |
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<添削> 春待つや友と故国の濁り酒 |
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「湖国」とは?「故国」ではないですか。春が待ち遠し。 |
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久しぶりに、友と飲む故国の濁り酒が旨い。 |
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50 |
蝋梅を母娘にっこり垣根越し |
(峰 生) |
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<添削> 蝋梅や母子微笑む垣根越し |
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「母娘」はは≠ニ読ませていいのでしょうか? 蝋梅はめだたない花ですが、 |
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香りが良く垣根越しに匂ってくる。母子で見つめている微笑ましい光景。 |
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51 |
大太鼓社に響き椿落つ |
(哲 朗) |
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<添削> 椿落つ社に響く大太鼓 |
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静寂を破り大太鼓が鳴り響く。辺り一面に落椿がいっぱいで美しい。清々しい気分。 |
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52 |
潰されし年の豆ある門掃けり |
(いなご) |
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<添削> 潰されし年の豆掃く晴天下 |
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説明的になるので添削句のようにしてみました。石手寺での行事でしょうか。 |
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豆撒きのあとには踏みつぶされた豆がいっぱい転がっている。 |
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53 |
浅き春右手術後のくりや妻 |
(浩 風) |
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<添削> 春浅し右手術後のくりや妻 |
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いい句です。奥さんは右手が不自由なのに懸命に食事の支度をしている。 |
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痛々しく、早く元気になってほしいと思う。 |
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54 |
シクラメン一人気高き出窓かな |
(蝋 梅) |
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いい句です。シクラメンは贈答用として最も人気のある、華やかで美しい花。 |
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出窓で咲き誇っているシクラメンを見ていると癒される。 |