平成18年 3月1日〜平成18年 3月20日 投句分
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互 選 句
第 15回 披 講
   3月分俳句の添削と寸評
 早いもので三月も終わりましたね。暑さ寒さも彼岸までと言いますが、
俳句を作るにもいい時候になりました。対象をよく見つめ、
感じることを簡明に詠みましょう。句作りのときには歳時記を開いて
季語の意味、そして例句も熟読玩味してください。
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     俳句を作ったときには次の七項目のチエックをお願いします。
      @  5.7.5になっているか。特に中七になっているか。
      A  季語はあるか。(歳時記を見て季語の意味を良く理解する)
      B  季重ねになっていないか
      C  切れ字(名詞切れ)はあるか
      D  物(植物・動物・衣食住など)はあるか
      E  物が多すぎないか
      F  あれこれ言い過ぎて、説明になっていないか。
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   私は俳句結社「糸瓜」に20年近く所属していました。
  したがって私の添削や寸評は糸瓜流で私流になりますが、ご了承してください。
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番号      添 削 と 披 講 俳 号
1 リユック背に若き女性の徒歩遍路 哲 朗
 いい句です。私の家は遍路道に近いので、この時期になると歩き
遍路の若い女性にもよく出会います。いつも感心して見ています。
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2 風邪いえて命いとしむ喜寿の坂 峰 生
 いい句です。喜寿の坂を越えると体力は劣れてくるものです。
自分の体は自分で守って元気で長生きしましょう。
「いえて」は「癒えて」と漢字の方がいいと思います。
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3 去年よりきれいに咲いた梅の花 千 柳
<添削> 母の忌やまことに梅の真白にて
 説明的で俳句としておもしろくないのです。「梅」といえば「梅の花」のことです。
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4 開花宣言今宵の月は桜色 楓 花
<添削> 花の香や今宵の月は桜色
 「開花宣言」「桜色」は季語ではありません。調子も今ひとつ。
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5 寺町を婆に連れられ知恵貰い まこと
 季語がありません。考えてみてください。悪しからず。
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6 菜の花や四万十を行く一両車 いなご
 いい句です。私は中村の四万十川の近くにいました。
堤防をよく散歩したのを思い出します。のどかな素晴らしい光景です。
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7 草萌えを踏みゆく朝の散歩道 哲 朗
 いい句です。草萌えの時期の散歩は気持ちがいいですね。さあ今日一日を頑張りましょう。
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8 枝先の花のふくらみ明日を待つ 浩 風
 * 彼岸前の墓参にて
<添削> 枝先の花のふくらむ誕生日
 切れが弱いのと、少しあいまいなのでこのように断定してみました。
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9 木蓮の花ほどけゆき空の青 初 霜
<添削> 木蓮の花ほどけゆく空の青
 いい句です。青い空に白木蓮が咲き誇る。青と白のコントラストが美しい。
「ゆき」を「ゆく」と終止形にしてみました。
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10 沈丁花一輪咲きて春近し 竹 豪
 * 春を待ちわびてやっと一輪咲きました
<添削> 沈丁花咲き初む汽笛遠くより
 「沈丁花」「春近し」は春の季語で季重ねになります。
季重ねもよいときもありますが、初心者の頃は避けましょう。
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11 冬木の芽庭の隅に見て日向ぼこ 竹 豪
 * 枯れ木だった冬木ににやっと芽がでました
<添削>  猫走りだす庭隅の冬木の芽
老いらくの手をじっと見る日向ぼこ
「冬木の芽」「日向ぼこ」は冬の季語で季重ねになります。
季重ねもよいときもありますが、初心者の頃は避けましょう。中八になっています。
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12 句の友と出会う堀端梅日和 まこと
 いい句です。いい時候になってきました。好天に恵まれたので梅の名所へ吟行に出かける。
偶然に句友と出会って話が弾む。 
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13 手のひらに乗せてやさしき布の雛 楓 花
 いい句です。いろいろの雛がありますが、布の雛は独特な味わいがあるのでしょう。
手に乗せて眺め感慨に耽る。
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14 公園の紅白の梅水面に浮き 菜の花
<添削> 紅白の梅水面に浮き沈み
 調子がよくないのでこのようにしてみました。
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15 はらはらと散る花びらに春の雪  泉
 いい句です。花びらに春の雪がやんわりと積もっている。安らかな風情です。
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16 白木蓮箒もつてに風そよぐ 石の花
<添削> 白木蓮箒もつ手に風そよぐ
 いい句です。白木蓮が白くきらめき、そしてやさしい風が
そよいでとても清々しい。「て」は「手」にしました。
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17 春泥を避け葬送の列に就く コスモス
 いい句です。大雨で春泥を避けながらの葬送は大変だったことでしょう。
しかし、ねんごろに死者を弔う。
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18 山茶花も掃き集めれば紅の山 初 霜
<添削>  山茶花の散りしく座禅堂の裏
 何もかも言って説明になります。俳句は簡明に詠み、詠み手にいろいろ想像させるものです。
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19 こたえます挨拶交わすもどり寒  まこと
 私には意味不明。「こたえます|挨拶交わす|もどり寒|」と
三段切れになっています。考えてみてください。
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20 梅一輪ゆれて羽虫の飛び立ちぬ 千 柳
<添削> 羽虫翔つ梅二三輪揺れてをり
 原句ですと説明的になるので、このようにしてみました。巧く添削できませんが悪しからず。
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21 晩酌に新タマネギで舌つづみ  そらまめ
 切れが弱いのと、説明的になります。うまく添削できませんが悪しからず。
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22 春めきてくしゃみ鼻水杉花粉   (季重ねか?) ゆづき
<添削> 春めきにけり水鳥のすいすいと
 「春めきて」は春、「くしゃみ」は冬、「杉花粉」は春の季語です。
俳句は焦点を絞って簡明に詠みましょう。
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23 遅ればせながら咲いたと梅だより 千 柳
 いい句です。故郷の母からか、自慢の梅がやっと咲いたという便りが届く、
久しぶりに帰って見たくなる。
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24 啓蟄や家庭菜園土匂う 哲 朗
<添削> 啓蟄の土匂ひゐる屋敷神
 原句でも一応句になっていますが、「啓蟄」「家庭菜園」「匂う」と
少し付きすぎるのでこのような句にしてみました。
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25 菜の花の流れる車窓国なまり?? 峰 生
 いい句です。車窓より菜の花の続く田園風景を眺める。伊予弁での歓声があがり賑やか。
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26 けきょけきょと片言鶯春浅し 竹 豪
 * 早く上手になって春を呼び込んでネ
<添削> 鳴き渡りけり鶯のけきょけきょと
 「鶯」「春浅し」は春の季語で季重ねになります。季重ねもよいときも
ありますが、初心者の頃は避けましょう。片言は省略しました。片言と言わないでも
「けきょけきょ」で片言であると分かります。
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27 ふくよかなお地蔵並ぶ花菜風 彰 子
 * 優しそうなお地蔵さま。花菜風が心地よい。
 私の句です。お地蔵さんを見つめていると心が和みます。平穏無事を祈る。
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28 遊泳すハングライダ−春の色 さつき
<添削> 春光やハングライダ−遊泳す
 「春の色」「春光」「春色」は春の景色、春の様子のことをいいます。
「遊泳す|ハングライダ−|春の色|」と三段切れになっています。
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29 春炬燵疎まれつつも団欒に コスモス
<添削> 婆ちゃんの話の弾む春炬燵
 「疎まれつつも団欒に」は矛盾しているようで私にはよく分かりません。
添削句では素直に詠んでみました。
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30 故郷の父遺した杏花今さかり 峰 生
<添削> 父遺す今をさかりの花杏
 季語では「花杏」「杏の花」です。中七が字余りになっています。
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31 ザワザワとあたたかき宵春一番  そらまめ
 私には句意が今ひとつ理解できません。悪しからず。「あたたか」「春一番」は
春の季語で季重ねになるので避けましょう
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32 観梅の児童の列のにぎやかに 浩 風
 * 七折れ梅まつりに行って
<添削> 紅白の梅や児童のにぎやかに
 やや説明的なので、このようにしてみました。
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33 蕗味噌の苦みも残す厨かな  さつき
 簡明でいい句です。今朝は大好物の蕗味噌、その蕗味噌の香りが
いつまでも厨に残っているという。満足のひととき。
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34 里山に土筆の親子微笑みて  泉
<添削> 土筆摘む親子たがいに微笑みて
 「土筆の親子」とは土筆の親と子のことでしょうか。「土筆」を詠むときには
「里山」は付くので省略したいところ。
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35 合格の知らせ春寒吹き飛ばし いなご
 いい句です。希望する学校に合格し、春寒も吹き飛ぶように
嬉しかったことでしょう。おめでとうございます。
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36 すみれ草妻と向き合い朝の善 石の花
<添削> 朝の膳妻と向き合ふすみれ草
 朝の「善」は「膳」。上五と上五と入れ替えて見ました。
この方がすみれ草が生きてくるように思いまして
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37 エンドウよかき付き登れネット張る  そらまめ
 実景を断定的にそして簡明に詠むといいのですが、うまく添削できませんが悪しからず。
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38 風にのり甘い香りの沈丁花 菜の花
 いい句です。沈丁花はなんとも言えないいい香りがし、いい気分にさせてくれます。
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39 白木蓮はしやぎ駈ける童たち 石の花
<添削>  子供らのはしゃぎ駈けゐる紫木蓮
 「はしやぎ」は「乾燥することです」「はしゃぎ」は「乾燥するのほか
調子にのって、うかれさわぐことです」「はしゃぎ駈ける」ですと中六になります。
下五にするため「紫木蓮」にしました。
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40 差し交わす枝に紅白梅の花 さつき
<添削> 紅白の梅投げ入れる誕生日
 言い過ぎていて説明的になります。もっと簡明にしましょう。
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41 敷石のたがひちがひに草萌ゆる コスモス
<添削> 草萌ゆる敷石たがひちがひにて
 「草萌ゆる」を前にもってきました。いかがでしょうか。
敷石に目をつけたところは面白いと思います。
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42 探梅や野径を行けば香り満 媛 香
<添削> 梅が香や野道に子等の笑ひ声
 「探梅」は早咲きの梅を尋ねることで冬の季語です。「観梅」「梅見」(春の季語)とは
違います。したがって「香り満つ」はどうかと思います。
また、梅と香りは付き過ぎると思います。
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43 生かされて生きる遠くに雪の嶺 彰 子
 * 生かされて生きると言う言葉が大好き。
 私の句です。尊敬している先生から教わった私の大好きな言葉です。
この気持ちを持ちつづけて生き永らえたい。
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44 町興し雛開放奥座敷 媛 香
<添削> 雀鳴く十六畳の座敷雛
 町興し|雛開放|奥座敷|と三段切れになりごたごたします。
簡明に素直に表現しましょう。「町興し」は省略しました。
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45 卒園児紙いっぱいに保母の顔 いなご
 いい句です。いい思い出になると思います。優しかった保母さんを
いつまでも忘れることはないでしょう。いい子に成長してほしいと願う。
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46 梅まつり古木に吊りし一句かな 浩 風
 * 七折れ梅まつりに行って
<添削> 白梅の古木に吊りし一句かな
 かな止めの句は、一句一章といって句切れなしに一気に詠みつぎます。
原句は「梅まつり」で切れるのでこのようにしてみました。
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47 木々芽吹き春遠からじと知る季節 (季重ねか?) ゆづき
<添削> かふかふと烏舞ひいる木芽晴
 「芽吹き」「春遠からじ」といずれも春の季語で季重ねになります。
初心者のうちは避けるようにしましょう。中八になっています。
また、説明になっていますので焦点をしぼり、簡明に詠むようにしてください。
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48 二月堂火の粉求めるお水取り ゆづき
<添削> 振りこぼす火の粉身に浴ぶお水取
 奈良東大寺二月堂のお水取り。したがって「二月堂」は省略しましょう。
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49 フイギュアの華麗な金に感無量 菜の花
 季語がありません。また原句では意味がよく分かりません。
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50 眼を閉ぢて踊る白魚飲み込めり  楓 花
 いい句です。白魚の踊り食いは少々勇気がいりますが、食感はいいものです。
.さぞ美味しかったことでしょう。
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51 来し方に悔いなし桜ひらひらと 彰 子
 * 平凡に生きてきたが悔はない。
私の句です。人生悔いのないように精一杯生きたいものです。
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52 春という季節に心かるくなる 初 霜
<添削> 春なれや鏡の中の笑ひ顔
 気持ちは分かりますが、具象性がありません。俳句は具体的な物に託して詠むものです。
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53 天気予報花粉情報始まりぬ 媛 香
<添削>  花粉症始む濃いめに化粧して
 「杉花粉」「花粉症」は季語ですが、「花粉」では季語になりません。
また、原句ですと説明的になります。
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54 巣立つ子の胸ふくらます梅日和  泉
 いい句です。希望に胸をふくらませている我が子、頑張ってほしい。
「梅日和」の季語がよく効いている。