3月分俳句の添削と寸評 |
早いもので三月も終わりましたね。暑さ寒さも彼岸までと言いますが、 |
俳句を作るにもいい時候になりました。対象をよく見つめ、 |
感じることを簡明に詠みましょう。句作りのときには歳時記を開いて |
季語の意味、そして例句も熟読玩味してください。 |
. |
俳句を作ったときには次の七項目のチエックをお願いします。 |
@ 5.7.5になっているか。特に中七になっているか。 |
A 季語はあるか。(歳時記を見て季語の意味を良く理解する) |
B 季重ねになっていないか |
C 切れ字(名詞切れ)はあるか |
D 物(植物・動物・衣食住など)はあるか |
E 物が多すぎないか |
F あれこれ言い過ぎて、説明になっていないか。 |
.. |
私は俳句結社「糸瓜」に20年近く所属していました。 |
したがって私の添削や寸評は糸瓜流で私流になりますが、ご了承してください。 |
|
.. |
番号 |
添 削 と 披 講 |
俳 号 |
1 |
リユック背に若き女性の徒歩遍路 |
哲 朗 |
|
いい句です。私の家は遍路道に近いので、この時期になると歩き |
|
遍路の若い女性にもよく出会います。いつも感心して見ています。 |
|
. |
2 |
風邪いえて命いとしむ喜寿の坂 |
峰 生 |
|
いい句です。喜寿の坂を越えると体力は劣れてくるものです。 |
|
自分の体は自分で守って元気で長生きしましょう。 |
|
「いえて」は「癒えて」と漢字の方がいいと思います。 |
|
. |
3 |
去年よりきれいに咲いた梅の花 |
千 柳 |
|
<添削> 母の忌やまことに梅の真白にて |
|
説明的で俳句としておもしろくないのです。「梅」といえば「梅の花」のことです。 |
|
. |
4 |
開花宣言今宵の月は桜色 |
楓 花 |
|
<添削> 花の香や今宵の月は桜色 |
|
「開花宣言」「桜色」は季語ではありません。調子も今ひとつ。 |
|
. |
5 |
寺町を婆に連れられ知恵貰い |
まこと |
|
季語がありません。考えてみてください。悪しからず。 |
|
. |
6 |
菜の花や四万十を行く一両車 |
いなご |
|
いい句です。私は中村の四万十川の近くにいました。 |
|
堤防をよく散歩したのを思い出します。のどかな素晴らしい光景です。 |
|
. |
7 |
草萌えを踏みゆく朝の散歩道 |
哲 朗 |
|
いい句です。草萌えの時期の散歩は気持ちがいいですね。さあ今日一日を頑張りましょう。 |
|
. |
8 |
枝先の花のふくらみ明日を待つ |
浩 風 |
|
* 彼岸前の墓参にて |
|
<添削> 枝先の花のふくらむ誕生日 |
|
切れが弱いのと、少しあいまいなのでこのように断定してみました。 |
|
. |
9 |
木蓮の花ほどけゆき空の青 |
初 霜 |
|
<添削> 木蓮の花ほどけゆく空の青 |
|
いい句です。青い空に白木蓮が咲き誇る。青と白のコントラストが美しい。 |
|
「ゆき」を「ゆく」と終止形にしてみました。 |
|
. |
10 |
沈丁花一輪咲きて春近し |
竹 豪 |
|
* 春を待ちわびてやっと一輪咲きました |
|
<添削> 沈丁花咲き初む汽笛遠くより |
|
「沈丁花」「春近し」は春の季語で季重ねになります。 |
|
季重ねもよいときもありますが、初心者の頃は避けましょう。 |
|
. |
11 |
冬木の芽庭の隅に見て日向ぼこ |
竹 豪 |
|
* 枯れ木だった冬木ににやっと芽がでました |
|
<添削> 猫走りだす庭隅の冬木の芽 |
|
老いらくの手をじっと見る日向ぼこ |
|
「冬木の芽」「日向ぼこ」は冬の季語で季重ねになります。 |
|
季重ねもよいときもありますが、初心者の頃は避けましょう。中八になっています。 |
|
. |
12 |
句の友と出会う堀端梅日和 |
まこと |
|
いい句です。いい時候になってきました。好天に恵まれたので梅の名所へ吟行に出かける。 |
|
偶然に句友と出会って話が弾む。 |
|
. |
13 |
手のひらに乗せてやさしき布の雛 |
楓 花 |
|
いい句です。いろいろの雛がありますが、布の雛は独特な味わいがあるのでしょう。 |
|
手に乗せて眺め感慨に耽る。 |
|
. |
14 |
公園の紅白の梅水面に浮き |
菜の花 |
|
<添削> 紅白の梅水面に浮き沈み |
|
調子がよくないのでこのようにしてみました。 |
|
. |
15 |
はらはらと散る花びらに春の雪 |
泉 |
|
いい句です。花びらに春の雪がやんわりと積もっている。安らかな風情です。 |
|
. |
16 |
白木蓮箒もつてに風そよぐ |
石の花 |
|
<添削> 白木蓮箒もつ手に風そよぐ |
|
いい句です。白木蓮が白くきらめき、そしてやさしい風が |
|
そよいでとても清々しい。「て」は「手」にしました。 |
|
. |
17 |
春泥を避け葬送の列に就く |
コスモス |
|
いい句です。大雨で春泥を避けながらの葬送は大変だったことでしょう。 |
|
しかし、ねんごろに死者を弔う。 |
|
. |
18 |
山茶花も掃き集めれば紅の山 |
初 霜 |
|
<添削> 山茶花の散りしく座禅堂の裏 |
|
何もかも言って説明になります。俳句は簡明に詠み、詠み手にいろいろ想像させるものです。 |
|
. |
19 |
こたえます挨拶交わすもどり寒 |
まこと |
|
私には意味不明。「こたえます|挨拶交わす|もどり寒|」と |
|
三段切れになっています。考えてみてください。 |
|
. |
20 |
梅一輪ゆれて羽虫の飛び立ちぬ |
千 柳 |
|
<添削> 羽虫翔つ梅二三輪揺れてをり |
|
原句ですと説明的になるので、このようにしてみました。巧く添削できませんが悪しからず。 |
|
. |
21 |
晩酌に新タマネギで舌つづみ |
そらまめ |
|
切れが弱いのと、説明的になります。うまく添削できませんが悪しからず。 |
|
. |
22 |
春めきてくしゃみ鼻水杉花粉 (季重ねか?) |
ゆづき |
|
<添削> 春めきにけり水鳥のすいすいと |
|
「春めきて」は春、「くしゃみ」は冬、「杉花粉」は春の季語です。 |
|
俳句は焦点を絞って簡明に詠みましょう。 |
|
. |
23 |
遅ればせながら咲いたと梅だより |
千 柳 |
|
いい句です。故郷の母からか、自慢の梅がやっと咲いたという便りが届く、 |
|
久しぶりに帰って見たくなる。 |
|
. |
24 |
啓蟄や家庭菜園土匂う |
哲 朗 |
|
<添削> 啓蟄の土匂ひゐる屋敷神 |
|
原句でも一応句になっていますが、「啓蟄」「家庭菜園」「匂う」と |
|
少し付きすぎるのでこのような句にしてみました。 |
|
. |
25 |
菜の花の流れる車窓国なまり?? |
峰 生 |
|
いい句です。車窓より菜の花の続く田園風景を眺める。伊予弁での歓声があがり賑やか。 |
|
. |
26 |
けきょけきょと片言鶯春浅し |
竹 豪 |
|
* 早く上手になって春を呼び込んでネ |
|
<添削> 鳴き渡りけり鶯のけきょけきょと |
|
「鶯」「春浅し」は春の季語で季重ねになります。季重ねもよいときも |
|
ありますが、初心者の頃は避けましょう。片言は省略しました。片言と言わないでも |
|
「けきょけきょ」で片言であると分かります。 |
|
. |
27 |
ふくよかなお地蔵並ぶ花菜風 |
彰 子 |
|
* 優しそうなお地蔵さま。花菜風が心地よい。 |
|
私の句です。お地蔵さんを見つめていると心が和みます。平穏無事を祈る。 |
|
. |
28 |
遊泳すハングライダ−春の色 |
さつき |
|
<添削> 春光やハングライダ−遊泳す |
|
「春の色」「春光」「春色」は春の景色、春の様子のことをいいます。 |
|
「遊泳す|ハングライダ−|春の色|」と三段切れになっています。 |
|
. |
29 |
春炬燵疎まれつつも団欒に |
コスモス |
|
<添削> 婆ちゃんの話の弾む春炬燵 |
|
「疎まれつつも団欒に」は矛盾しているようで私にはよく分かりません。 |
|
添削句では素直に詠んでみました。 |
|
. |
30 |
故郷の父遺した杏花今さかり |
峰 生 |
|
<添削> 父遺す今をさかりの花杏 |
|
季語では「花杏」「杏の花」です。中七が字余りになっています。 |
|
. |
31 |
ザワザワとあたたかき宵春一番 |
そらまめ |
|
私には句意が今ひとつ理解できません。悪しからず。「あたたか」「春一番」は |
|
春の季語で季重ねになるので避けましょう |
|
. |
32 |
観梅の児童の列のにぎやかに |
浩 風 |
|
* 七折れ梅まつりに行って |
|
<添削> 紅白の梅や児童のにぎやかに |
|
やや説明的なので、このようにしてみました。 |
|
. |
33 |
蕗味噌の苦みも残す厨かな |
さつき |
|
簡明でいい句です。今朝は大好物の蕗味噌、その蕗味噌の香りが |
|
いつまでも厨に残っているという。満足のひととき。 |
|
. |
34 |
里山に土筆の親子微笑みて |
泉 |
|
<添削> 土筆摘む親子たがいに微笑みて |
|
「土筆の親子」とは土筆の親と子のことでしょうか。「土筆」を詠むときには |
|
「里山」は付くので省略したいところ。 |
|
. |
35 |
合格の知らせ春寒吹き飛ばし |
いなご |
|
いい句です。希望する学校に合格し、春寒も吹き飛ぶように |
|
嬉しかったことでしょう。おめでとうございます。 |
|
. |
36 |
すみれ草妻と向き合い朝の善 |
石の花 |
|
<添削> 朝の膳妻と向き合ふすみれ草 |
|
朝の「善」は「膳」。上五と上五と入れ替えて見ました。 |
|
この方がすみれ草が生きてくるように思いまして |
|
. |
37 |
エンドウよかき付き登れネット張る |
そらまめ |
|
実景を断定的にそして簡明に詠むといいのですが、うまく添削できませんが悪しからず。 |
|
. |
38 |
風にのり甘い香りの沈丁花 |
菜の花 |
|
いい句です。沈丁花はなんとも言えないいい香りがし、いい気分にさせてくれます。 |
|
. |
39 |
白木蓮はしやぎ駈ける童たち |
石の花 |
|
<添削> 子供らのはしゃぎ駈けゐる紫木蓮 |
|
「はしやぎ」は「乾燥することです」「はしゃぎ」は「乾燥するのほか |
|
調子にのって、うかれさわぐことです」「はしゃぎ駈ける」ですと中六になります。 |
|
下五にするため「紫木蓮」にしました。 |
|
. |
40 |
差し交わす枝に紅白梅の花 |
さつき |
|
<添削> 紅白の梅投げ入れる誕生日 |
|
言い過ぎていて説明的になります。もっと簡明にしましょう。 |
|
. |
41 |
敷石のたがひちがひに草萌ゆる |
コスモス |
|
<添削> 草萌ゆる敷石たがひちがひにて |
|
「草萌ゆる」を前にもってきました。いかがでしょうか。 |
|
敷石に目をつけたところは面白いと思います。 |
|
. |
42 |
探梅や野径を行けば香り満 |
媛 香 |
|
<添削> 梅が香や野道に子等の笑ひ声 |
|
「探梅」は早咲きの梅を尋ねることで冬の季語です。「観梅」「梅見」(春の季語)とは |
|
違います。したがって「香り満つ」はどうかと思います。 |
|
また、梅と香りは付き過ぎると思います。 |
|
. |
43 |
生かされて生きる遠くに雪の嶺 |
彰 子 |
|
* 生かされて生きると言う言葉が大好き。 |
|
私の句です。尊敬している先生から教わった私の大好きな言葉です。 |
|
この気持ちを持ちつづけて生き永らえたい。 |
|
. |
44 |
町興し雛開放奥座敷 |
媛 香 |
|
<添削> 雀鳴く十六畳の座敷雛 |
|
町興し|雛開放|奥座敷|と三段切れになりごたごたします。 |
|
簡明に素直に表現しましょう。「町興し」は省略しました。 |
|
. |
45 |
卒園児紙いっぱいに保母の顔 |
いなご |
|
いい句です。いい思い出になると思います。優しかった保母さんを |
|
いつまでも忘れることはないでしょう。いい子に成長してほしいと願う。 |
|
. |
46 |
梅まつり古木に吊りし一句かな |
浩 風 |
|
* 七折れ梅まつりに行って |
|
<添削> 白梅の古木に吊りし一句かな |
|
かな止めの句は、一句一章といって句切れなしに一気に詠みつぎます。 |
|
原句は「梅まつり」で切れるのでこのようにしてみました。 |
|
. |
47 |
木々芽吹き春遠からじと知る季節 (季重ねか?) |
ゆづき |
|
<添削> かふかふと烏舞ひいる木芽晴 |
|
「芽吹き」「春遠からじ」といずれも春の季語で季重ねになります。 |
|
初心者のうちは避けるようにしましょう。中八になっています。 |
|
また、説明になっていますので焦点をしぼり、簡明に詠むようにしてください。 |
|
. |
48 |
二月堂火の粉求めるお水取り |
ゆづき |
|
<添削> 振りこぼす火の粉身に浴ぶお水取 |
|
奈良東大寺二月堂のお水取り。したがって「二月堂」は省略しましょう。 |
|
. |
49 |
フイギュアの華麗な金に感無量 |
菜の花 |
|
季語がありません。また原句では意味がよく分かりません。 |
|
. |
50 |
眼を閉ぢて踊る白魚飲み込めり |
楓 花 |
|
いい句です。白魚の踊り食いは少々勇気がいりますが、食感はいいものです。 |
|
.さぞ美味しかったことでしょう。 |
|
. |
51 |
来し方に悔いなし桜ひらひらと |
彰 子 |
|
* 平凡に生きてきたが悔はない。 |
|
私の句です。人生悔いのないように精一杯生きたいものです。 |
|
. |
52 |
春という季節に心かるくなる |
初 霜 |
|
<添削> 春なれや鏡の中の笑ひ顔 |
|
気持ちは分かりますが、具象性がありません。俳句は具体的な物に託して詠むものです。 |
|
. |
53 |
天気予報花粉情報始まりぬ |
媛 香 |
|
<添削> 花粉症始む濃いめに化粧して |
|
「杉花粉」「花粉症」は季語ですが、「花粉」では季語になりません。 |
|
また、原句ですと説明的になります。 |
|
. |
54 |
巣立つ子の胸ふくらます梅日和 |
泉 |
|
いい句です。希望に胸をふくらませている我が子、頑張ってほしい。 |
|
「梅日和」の季語がよく効いている。 |