平成18年 5月1日〜平成18年 5月20日 投句分
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互 選 句
第 17回 披 講
            5月分俳句の添削と寸評
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 俳句では「継続は力なり」とよく言います。長く続けるには「あきない・あきらめない・
あせららない」ことが大切です。俳句が上手くなるためにはそれ相当の努力が入ります。
しかし、それが苦になってはいけません。あくまでも趣味ですから、マイペースで
 楽しみながらやってください。今月もいい句が沢山あったので嬉しく思っています。
 例によって私なりの添削と寸評をします。
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番号      添 削 と 寸 評 俳 号
1 母の日やもう訪う母もいなくなり 媛 香
いい句です。毎年、母の日に母を訪ねていたが、その母はもういない。哀感の句。
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2 葉桜や名所と言うも知らず過ぐ コスモス
いい句です。若葉の美しさに見とれての感慨、来年は是非花見に来たい。
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3 武者人形オルゴールの音目がゆるむ 初 霜
武者人形|オルゴールの音|目がゆるむ|と三段に切れになり調子がよくありません。
私には句意がよく分からないので、うまく添削できません。悪しからず。
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4 遠足の列途切れたる信号機 哲 朗
<添削>遠足の子に大眼の仁王像
信号機では説明になると思いましたので、このようにしてみました。考えてみてください
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5 老い二人失せ物探し日々の春 峰 生
<添削>行く春や失せ物探す老い二人
調子が今一つなのでこのようにしてみました。
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6 春寒や甘えたくなる友と居て 楓 花
いい句です。いい友達が居て幸せ。いつまでも仲良くしたい。
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7 旅疲れ我が家で癒す菖蒲風呂 ゆづき
いい句です。旅疲れも菖蒲風呂だと一層癒される。
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8 海の幸北より届く柿若葉 浩 風
いい句です。贈り物は塩鮭かたらば蟹か、美味しそう。「北より届く」が良い。
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9 風光るリズムを刻む耕耘機 そらまめ
いい句です。風に揺らぐ田園風景。耕転機がリズミカル。
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10 初物の空豆友と半分に 楓 花
話弾むや初そら豆の塩加減
「友と半分に」ですとやや説明的になるかと思い、このようにしてみました。
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11 櫂練りの音頭ちぎれる春疾風  まこと
いい句です。北条の祭りでしょうか。櫂練りの音頭が春疾風にちぎれ飛ぶ。勇壮な光景。
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12 岩礁を越ゆる夕浪春惜しむ 彰 子
私の句です。隠岐の島での夕暮れのひととき。
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13 仕事着のままで筍届けらる まこと
いい句です。取り立ての筍。新鮮で美味しそう。
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14 五月雨の合間をぬって買い物に 菜の花
<添削>五月雨やポチと連れ立ち買い物に
説明になり、おもしろくないのでこのような句にしてみました。
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15 遊歩道名も知らぬ花春惜しむ 初 霜
<添削>遊歩道の名も知らぬ花春惜しむ
いい句です。上六になりますが、「遊歩道の」にしました。遊歩道には花が沢山咲いている。
感慨の句。
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16 母の日になけなしはたきカネ−ション 竹 豪
<添削>母の日になけなしはたきカ−ネ−ション
いい句です。母の日には必ずカーネーションを贈る。いつまでも元気でいてほしい。
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17 きらきらと小魚連なる夏の海 浩 風
<添削>きらきらと魚飛び行く夏の海
私には景が今ひとつ分かりません。添削句では飛魚にみたてました。「こざかな」と読むと
中八になるので「魚」にしました。
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18 連休に手持ち無沙汰の閑な人 千 柳
<添削>連休に手持ち無沙汰や藍浴衣
季語がありません。そして説明になります。また物がありません。物にたくして詠みましょう。
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19 老猫の手を延べてみる鯉のぼり さつき
いい句です。面白い景を詠まれています。
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20 Yシャツの袖たくし上げ街薄暑 いなご
<添削>個展いで楽しき街の薄暑かな
袖たくしあげ街薄暑はやや説明的で、言い過ぎ。添削句のように詠んでみました。
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21 薫風の境内に降る鳥の声 哲 朗
<添削>薫風や境内に降る鳥の声
原句ですと説明になるので「薫風や」と切りました。
いい句です。
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22 梅雨寒し時計の音と雨だれと 千 柳
<添削>梅雨寒や柱時計のぼんぼんと
「梅雨寒し」に「時計の音と雨だれと」が、しっくりしません。
添削句では、梅雨寒でも柱時計は元気に動いている。
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23 あめんぼう雨と同じに輪を重ね 哲 朗
いい句です。輪がどんどんと重なりながら広がっていく。よく観察されていると思います。
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24 饂飩の庄小麦畑の見渡せり 初 霜
<添削>麦熟れにけり暮れぎわの鳥の声
「饂飩の庄」と「小麦畑」は付き過ぎ。
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25 子の帰省あれもこれもと思考つむ 石の花
<添削>帰省子の饒舌お国訛りにて
私には句意がよく分かりません。
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26 春なのに季節狂わす30度 竹 豪
<添削>蠅生まる異常気象の30度
物がないのでどうかと思います。また、説明になります。上手く添削できません。悪しからず。
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27 くやし泣き相撲に負けたこどもの日 そらまめ
<添削>泣きじゃくる相撲に負けたこどもの日
いい句です。「くやし泣き」は「負けた」付くので「泣きじゃくる」にしてみました。
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28 冬物を仕舞った途端戻り寒 竹 豪
<添削>冬物を仕舞へば寒さ戻りけり
「春寒」は(春の季語)、戻り梅雨は(夏の季語)ですが、「戻り寒」という季語はありません。
「冬物」「寒さ」と季重ねになりますが、「冬物」が強い季語で許されるのか。
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29 母の日や微笑和やかに花の市 峰 生
<添削>母の日や微笑浮かべる花の市
「微笑」「和やかに」は付き過ぎです。
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30 河原に水鳥あまた初夏の風 石の花
<添削>初夏や河原に鳥のあまたなる
「水鳥」は冬の季語で季重ねになります。
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31 しまなみに潮風うけて鯉およぐ  泉
<添削>海峡の風うけ鯉の泳ぎをり
「しまなみ海道」といいますが、「しまなみ」では一般的に通じないそうです。
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32 ヘェラ−リを離さぬ孫と菖蒲風呂 さつき
いい句です。可愛い孫と菖蒲風呂。至福のひととき。
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33 葉桜の陰に一服車椅子 いなご
いい句です。車椅子の母と娘が葉桜の影で憩う。花見にも来たことでしょう。
微笑ましい光景。
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34 繰り返すいないいないばあや春障子  楓 花
字余りです。私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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35 麦畑ランドセルが行く一年生 そらまめ
<添削>麦畑行くまっさらなランドセル
中八になっています。「麦畑」と切らない方がいいと思います。
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36 連休も今日で終わりの昼寝かな ゆづき
<添削>連休も終わる昼寝のうつぶせに
詩情がありません。
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37 航跡あまたメロディーライン風薫る コスモス
<添削>風薫る航跡つづく豊後灘
「航跡あまた」「メロディーライン」は不自然です。
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38 無人駅くちくちくちの燕の子 まこと
<添削>無人駅のくちくちくちの燕の子
いい句です。無人駅の子燕。おもしろい句だと思います。
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39 海霧(じり)晴れし大岸壁に牛の声 (隠岐の島) 彰 子
私の句です。隠岐の島の国賀海岸の絶壁と放牧場の風景を詠む。
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40 楠若葉薪の炎〜能舞台| 媛 香
<添削>火入れの火たかだか燃ゆる薪能
楠若葉|薪の炎〜|能舞台|と三段切れになります。また言い過ぎです。
「若葉」「薪能」は夏の季語で季重ねになります。
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41 満開のツツジ背にして宴かな 菜の花
<添削>満開のつつじ背にして宴かな
いい句です。見晴らしのいい所なのでしょう。宴会が盛り上がる。
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42 雷鳴は若葉も鼓動も突き破り さつき
<添削>いかずちの胸の鼓動を突き破り
「雷鳴」「若葉」は夏の季語で季重ねになります。
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43 黒髪をなでてそよぐや五月晴れ ゆづき
<添削>黒髪をなでてそよぐや土用あい
私には句意がよく分かりません
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44 鯉幟風のシグナル高速道 媛 香
<添削>はためくや高速道の鯉幟
鯉幟|風のシグナル|高速道|と三段切れになります。また言い過ぎです。
上手く添削できません。悪しからず。
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45 そけい垣何故いつここに香に揺れる 峰 生
いい句です。おもしろいと思います。
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46 堀端の白鳥たわむ柳ゆれ  泉
堀端の白鳥むるるひと日かな
「白鳥」は冬の季語、「柳」は春の季語です。「たわむ」は「撓む」でしょうか。
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47 一番茶摘むや浪音遠くより 彰 子
私の句です。浪音を聞きながら懸命にお茶を摘んでいるのどかな風景。
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48 麦畑一面黄金の爽快さ 菜の花
<添削>麦熟るる海岸線の一両車
麦畑|一面|黄金|の爽快|と言い過ぎています。
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49 鯉のぼり泳ぎ園児等昼寝時 コスモス
<添削>鯉のぼり泳ぐ園児の昼寝時
いい句です。元気に泳ぐ鯉幟と昼寝の園児の対比が面白い。
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50 煌めきやしずくの残る梅雨晴れ間 石の花
<添削>流れつつ滴きらめく梅雨晴間
句意が今ひとつはっきりしません。
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51 新緑の野山にこだま風そよぎ  泉
<添削>新緑の山野にこだま渡りけり
「こだま」で切り「風そよぎ」はどうかなと思いますので、このように詠んで
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52 丹精の苺に添える顔写真 千 柳
いい句です。丹精して作った苺に顔写真を添えて贈る。贈り先は誰でしょう。
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53 また来たぞ浮子をみつむる薄暑かな 浩 風
<添削>また来たと浮子をみつむ薄暑かな
いい句です。楽しかったことでしょう。釣果はいかがでしたか。中八になるので
このようにしました。
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54 花は葉に節くれだちし指見つめ いなご
いい句です。季節は移り行く。節くれだった指を見ながら我が人生を振り返る。