5月分俳句の添削と寸評 |
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俳句では「継続は力なり」とよく言います。長く続けるには「あきない・あきらめない・ |
あせららない」ことが大切です。俳句が上手くなるためにはそれ相当の努力が入ります。 |
しかし、それが苦になってはいけません。あくまでも趣味ですから、マイペースで |
楽しみながらやってください。今月もいい句が沢山あったので嬉しく思っています。 |
例によって私なりの添削と寸評をします。 |
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番号 |
添 削 と 寸 評 |
俳 号 |
1 |
母の日やもう訪う母もいなくなり |
媛 香 |
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いい句です。毎年、母の日に母を訪ねていたが、その母はもういない。哀感の句。 |
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2 |
葉桜や名所と言うも知らず過ぐ |
コスモス |
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いい句です。若葉の美しさに見とれての感慨、来年は是非花見に来たい。 |
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3 |
武者人形オルゴールの音目がゆるむ |
初 霜 |
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武者人形|オルゴールの音|目がゆるむ|と三段に切れになり調子がよくありません。 |
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私には句意がよく分からないので、うまく添削できません。悪しからず。 |
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4 |
遠足の列途切れたる信号機 |
哲 朗 |
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<添削>遠足の子に大眼の仁王像 |
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信号機では説明になると思いましたので、このようにしてみました。考えてみてください |
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5 |
老い二人失せ物探し日々の春 |
峰 生 |
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<添削>行く春や失せ物探す老い二人 |
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調子が今一つなのでこのようにしてみました。 |
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6 |
春寒や甘えたくなる友と居て |
楓 花 |
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いい句です。いい友達が居て幸せ。いつまでも仲良くしたい。 |
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7 |
旅疲れ我が家で癒す菖蒲風呂 |
ゆづき |
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いい句です。旅疲れも菖蒲風呂だと一層癒される。 |
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8 |
海の幸北より届く柿若葉 |
浩 風 |
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いい句です。贈り物は塩鮭かたらば蟹か、美味しそう。「北より届く」が良い。 |
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9 |
風光るリズムを刻む耕耘機 |
そらまめ |
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いい句です。風に揺らぐ田園風景。耕転機がリズミカル。 |
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10 |
初物の空豆友と半分に |
楓 花 |
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話弾むや初そら豆の塩加減 |
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「友と半分に」ですとやや説明的になるかと思い、このようにしてみました。 |
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11 |
櫂練りの音頭ちぎれる春疾風 |
まこと |
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いい句です。北条の祭りでしょうか。櫂練りの音頭が春疾風にちぎれ飛ぶ。勇壮な光景。 |
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12 |
岩礁を越ゆる夕浪春惜しむ |
彰 子 |
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私の句です。隠岐の島での夕暮れのひととき。 |
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13 |
仕事着のままで筍届けらる |
まこと |
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いい句です。取り立ての筍。新鮮で美味しそう。 |
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14 |
五月雨の合間をぬって買い物に |
菜の花 |
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<添削>五月雨やポチと連れ立ち買い物に |
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説明になり、おもしろくないのでこのような句にしてみました。 |
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15 |
遊歩道名も知らぬ花春惜しむ |
初 霜 |
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<添削>遊歩道の名も知らぬ花春惜しむ |
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いい句です。上六になりますが、「遊歩道の」にしました。遊歩道には花が沢山咲いている。 |
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感慨の句。 |
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16 |
母の日になけなしはたきカネ−ション |
竹 豪 |
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<添削>母の日になけなしはたきカ−ネ−ション |
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いい句です。母の日には必ずカーネーションを贈る。いつまでも元気でいてほしい。 |
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17 |
きらきらと小魚連なる夏の海 |
浩 風 |
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<添削>きらきらと魚飛び行く夏の海 |
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私には景が今ひとつ分かりません。添削句では飛魚にみたてました。「こざかな」と読むと |
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中八になるので「魚」にしました。 |
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18 |
連休に手持ち無沙汰の閑な人 |
千 柳 |
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<添削>連休に手持ち無沙汰や藍浴衣 |
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季語がありません。そして説明になります。また物がありません。物にたくして詠みましょう。 |
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19 |
老猫の手を延べてみる鯉のぼり |
さつき |
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いい句です。面白い景を詠まれています。 |
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20 |
Yシャツの袖たくし上げ街薄暑 |
いなご |
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<添削>個展いで楽しき街の薄暑かな |
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袖たくしあげ街薄暑はやや説明的で、言い過ぎ。添削句のように詠んでみました。 |
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21 |
薫風の境内に降る鳥の声 |
哲 朗 |
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<添削>薫風や境内に降る鳥の声 |
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原句ですと説明になるので「薫風や」と切りました。 |
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いい句です。 |
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22 |
梅雨寒し時計の音と雨だれと |
千 柳 |
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<添削>梅雨寒や柱時計のぼんぼんと |
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「梅雨寒し」に「時計の音と雨だれと」が、しっくりしません。 |
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添削句では、梅雨寒でも柱時計は元気に動いている。 |
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23 |
あめんぼう雨と同じに輪を重ね |
哲 朗 |
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いい句です。輪がどんどんと重なりながら広がっていく。よく観察されていると思います。 |
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24 |
饂飩の庄小麦畑の見渡せり |
初 霜 |
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<添削>麦熟れにけり暮れぎわの鳥の声 |
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「饂飩の庄」と「小麦畑」は付き過ぎ。 |
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25 |
子の帰省あれもこれもと思考つむ |
石の花 |
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<添削>帰省子の饒舌お国訛りにて |
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私には句意がよく分かりません。 |
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26 |
春なのに季節狂わす30度 |
竹 豪 |
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<添削>蠅生まる異常気象の30度 |
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物がないのでどうかと思います。また、説明になります。上手く添削できません。悪しからず。 |
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27 |
くやし泣き相撲に負けたこどもの日 |
そらまめ |
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<添削>泣きじゃくる相撲に負けたこどもの日 |
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いい句です。「くやし泣き」は「負けた」付くので「泣きじゃくる」にしてみました。 |
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28 |
冬物を仕舞った途端戻り寒 |
竹 豪 |
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<添削>冬物を仕舞へば寒さ戻りけり |
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「春寒」は(春の季語)、戻り梅雨は(夏の季語)ですが、「戻り寒」という季語はありません。 |
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「冬物」「寒さ」と季重ねになりますが、「冬物」が強い季語で許されるのか。 |
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29 |
母の日や微笑和やかに花の市 |
峰 生 |
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<添削>母の日や微笑浮かべる花の市 |
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「微笑」「和やかに」は付き過ぎです。 |
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30 |
河原に水鳥あまた初夏の風 |
石の花 |
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<添削>初夏や河原に鳥のあまたなる |
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「水鳥」は冬の季語で季重ねになります。 |
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31 |
しまなみに潮風うけて鯉およぐ |
泉 |
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<添削>海峡の風うけ鯉の泳ぎをり |
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「しまなみ海道」といいますが、「しまなみ」では一般的に通じないそうです。 |
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32 |
ヘェラ−リを離さぬ孫と菖蒲風呂 |
さつき |
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いい句です。可愛い孫と菖蒲風呂。至福のひととき。 |
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33 |
葉桜の陰に一服車椅子 |
いなご |
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いい句です。車椅子の母と娘が葉桜の影で憩う。花見にも来たことでしょう。 |
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微笑ましい光景。 |
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34 |
繰り返すいないいないばあや春障子 |
楓 花 |
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字余りです。私には句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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35 |
麦畑ランドセルが行く一年生 |
そらまめ |
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<添削>麦畑行くまっさらなランドセル |
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中八になっています。「麦畑」と切らない方がいいと思います。 |
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36 |
連休も今日で終わりの昼寝かな |
ゆづき |
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<添削>連休も終わる昼寝のうつぶせに |
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詩情がありません。 |
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37 |
航跡あまたメロディーライン風薫る |
コスモス |
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<添削>風薫る航跡つづく豊後灘 |
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「航跡あまた」「メロディーライン」は不自然です。 |
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38 |
無人駅くちくちくちの燕の子 |
まこと |
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<添削>無人駅のくちくちくちの燕の子 |
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いい句です。無人駅の子燕。おもしろい句だと思います。 |
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39 |
海霧(じり)晴れし大岸壁に牛の声 (隠岐の島) |
彰 子 |
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私の句です。隠岐の島の国賀海岸の絶壁と放牧場の風景を詠む。 |
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40 |
楠若葉薪の炎〜能舞台| |
媛 香 |
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<添削>火入れの火たかだか燃ゆる薪能 |
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楠若葉|薪の炎〜|能舞台|と三段切れになります。また言い過ぎです。 |
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「若葉」「薪能」は夏の季語で季重ねになります。 |
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41 |
満開のツツジ背にして宴かな |
菜の花 |
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<添削>満開のつつじ背にして宴かな |
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いい句です。見晴らしのいい所なのでしょう。宴会が盛り上がる。 |
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42 |
雷鳴は若葉も鼓動も突き破り |
さつき |
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<添削>いかずちの胸の鼓動を突き破り |
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「雷鳴」「若葉」は夏の季語で季重ねになります。 |
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43 |
黒髪をなでてそよぐや五月晴れ |
ゆづき |
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<添削>黒髪をなでてそよぐや土用あい |
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私には句意がよく分かりません |
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44 |
鯉幟風のシグナル高速道 |
媛 香 |
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<添削>はためくや高速道の鯉幟 |
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鯉幟|風のシグナル|高速道|と三段切れになります。また言い過ぎです。 |
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上手く添削できません。悪しからず。 |
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45 |
そけい垣何故いつここに香に揺れる |
峰 生 |
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いい句です。おもしろいと思います。 |
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46 |
堀端の白鳥たわむ柳ゆれ |
泉 |
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堀端の白鳥むるるひと日かな |
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「白鳥」は冬の季語、「柳」は春の季語です。「たわむ」は「撓む」でしょうか。 |
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47 |
一番茶摘むや浪音遠くより |
彰 子 |
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私の句です。浪音を聞きながら懸命にお茶を摘んでいるのどかな風景。 |
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48 |
麦畑一面黄金の爽快さ |
菜の花 |
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<添削>麦熟るる海岸線の一両車 |
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麦畑|一面|黄金|の爽快|と言い過ぎています。 |
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49 |
鯉のぼり泳ぎ園児等昼寝時 |
コスモス |
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<添削>鯉のぼり泳ぐ園児の昼寝時 |
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いい句です。元気に泳ぐ鯉幟と昼寝の園児の対比が面白い。 |
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50 |
煌めきやしずくの残る梅雨晴れ間 |
石の花 |
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<添削>流れつつ滴きらめく梅雨晴間 |
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句意が今ひとつはっきりしません。 |
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51 |
新緑の野山にこだま風そよぎ |
泉 |
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<添削>新緑の山野にこだま渡りけり |
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「こだま」で切り「風そよぎ」はどうかなと思いますので、このように詠んで |
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52 |
丹精の苺に添える顔写真 |
千 柳 |
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いい句です。丹精して作った苺に顔写真を添えて贈る。贈り先は誰でしょう。 |
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53 |
また来たぞ浮子をみつむる薄暑かな |
浩 風 |
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<添削>また来たと浮子をみつむ薄暑かな |
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いい句です。楽しかったことでしょう。釣果はいかがでしたか。中八になるので |
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このようにしました。 |
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54 |
花は葉に節くれだちし指見つめ |
いなご |
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いい句です。季節は移り行く。節くれだった指を見ながら我が人生を振り返る。 |