平成18年 6月1日〜平成18年 6月20日 投句分
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互 選 句
第 18回 披 講
年を重ねるごとにありがたいと思うこと、それは自分が俳句を
作り続ける人生を選んだことです。
 この世の森羅万象を、季語をキーワードにしてじっくり観察し、
かけがえのない自分のたましいのかたちを1行17音字の詩形に
うたいあげてゆく。こういう人生を重ねてゆける句作の日々に、
 感謝しつくせません。名句をじっくり観賞してみましょう。
人生とものの見方を教えられ、自分のこころも深まり、
ゆたかになります。名句をたくさん読むことは、俳句上達の
いちばんの近道でもあります。 (黒田杏子の本より)
梅雨に入りました。じめじめした鬱陶しい日がつづきますが
積極的に句作りに励んでください。では、私流の添削と寸評をします。
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番号         添 削 と 講 評  俳 号
1 雨上がる低空飛行のツバメの子  泉
. <添削> 雨上がる低空飛行の燕の子
. やや説明的ではありますが、句になっています。中八が何とかなりませんか。
. また、「ツバメの子」は「燕の子」と漢字にしましょう。
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2 側溝を掃く手を止める蟻の列 さつき
いい句です。蟻の列を側溝を掃く手を止めてじっと見詰める。そして蟻に
. 負けないように頑張ろうと思う。
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3 ゆすらうめおかっぱ頭の三姉妹 楓 花
. <添削> ゆすらうめ食ぶおかっぱの三姉妹
. いい句です。中八になるのでこのようにしてみました。ゆすらうめをおいしそうに
. 食べている仲良し三姉妹。
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4 紫陽花や雨にうたれて色さえる ゆづき
. <添削> 紫陽花の毬やみ空に鳥の声
. 「紫陽花」「雨」は付き過ぎるので避けましょう。また、説明になります。
. このように詠んでみました。
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5 媼棲む古庭の奥かわず鳴く 初 霜
. <添削> かわず鳴く媼(おうな)の小さき庭の奥
. 「古庭の奥」で切るのは調子が悪いのでこのようにしてみました。
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6 父の日や回転寿司の皿重ね 哲 朗
. いい句です。家族全員で回転寿司をたらふく食べているのでしょう。微笑ましい
. 光景。会計はもちろん子供達でしょうね。
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7 梅干をふふむ八月十五日 彰 子
. 季重ねになりますが、八月十五日(終戦記念日)が強い季語でいいのかなと
. 思いまして。食料難のときのつらい思い出。平和はありがたい。
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8 つる草の鎌の重たし炎天下 浩 風
. 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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9 草刈り機エンジン止めて揚げ雲雀 そらまめ
. <添削> 草刈り機のエンジン止めて揚げ雲雀
. いい句です。揚げ雲雀が励ましてくれているのでしょうか。
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10 一輪のバラに造化の神宿る 千 柳
. 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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11 うなだれて雨を焦がれる紫陽花よ 菜の花
. <添削> 紫陽花のうなだれてゐる上天気
. 「紫陽花」に「雨」は付き過ぎ。このようにしてみました。
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12 シーツ干す糊の香りや聖五月 楓 花
. いい句です。爽やかないい気分です。季語もよく効いています。
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13 父の日や赤きティシャツ贈らるる まこと
. いい句です。きっと赤いティシャツが似合うのでしょう。いつまでも
. 元気でいてほしい。微笑ましい光景。
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14 麦秋やうなりをあげてコンバイン  泉
. いい句です。コンバインの音も快適。作業がはかどる。季語もよく効いています。
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15 ここに吹く大きくうねる麦の秋 哲 朗
. 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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16 坪庭のポキリもぎたり初胡瓜 竹 豪
. <添削> ぽっきりともぐ坪庭の初胡瓜
. 調子が悪いのでこのようにしてみました。新鮮な胡瓜さぞ美味しいことでしょう。
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17 紫蘇の葉をざぶざぶざぶと洗いけり いなご
. いい句です。紫蘇の葉を丁寧に洗う。いい香りがしています。梅の漬け物に
. 使うのでしょうか。
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18 しまなみの水軍跡や薔薇の園 ゆづき
. <添削> 島影の水軍跡や薔薇の園
. 「しまなみ海道」と言う言葉はありますが、「しまなみ」と言う言葉はありません。
. そこでこのような句にしてみました。
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19 ときめきを僅かに残す蛍狩り さつき
. いい句です。幻想的な蛍狩り。淡い光にときめきを感じるロマンチスト。
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20 薪能炎に映ゆる神の杜 まこと
. <添削>おやしろの杜焦がさるる薪能
. 「薪能」と「炎」は付き過ぎるのでこのようにしてみました。幽玄の世界。
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21 幽谷や昔を忍ぶ那智の滝 石の花
. いい句です。幽谷の中、那智の滝を見ながら昔を忍んでいる。
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22 バラ庇ふ傘とりどりで梅雨に咲く 竹 豪
. <添削> 旅立つや薔薇覆ふ傘のとりどりに
. 「梅雨」「薔薇」は夏の季語で、季重ねになります。
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23 雨降りの順路混み合う菖蒲園 哲 朗
. <添削> とりどりの傘のゆき交う菖蒲園
. 原句ですと説明になり面白味がありません。
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24 眺望や潮岬の夏の夕 石の花
. <添削> 風わたる最南端の夏夕べ (潮岬にて)
. 「眺望や」で切るのはどうかと思いましてこのようにしてみました。
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25 父の日にプレゼントする人もなく 菜の花
. いい句です。少々哀れを感じないでもないが、人を当てにせず頑張りましょう。
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26 目頭かゆしすいすいと赤蜻蛉 彰 子
. 私の句です。目の前を自由気ままに赤蜻蛉が飛ぶ。
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27 春静か湯布渓谷の霧の中  泉
. <添削> 日が落ちる湯布渓谷の霧の中
. 「春」は夏、「霧」は秋の季語です。また「春静か」という季語あるいは
. 言葉はありません。上五を替えてみました。
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28 溝浚へ集まる人の肩に鍬 いなご
. <添削> 溝浚へ終ふ一服の肩に鍬
. 「溝浚へ」は夏の季語。原句ですと説明的で面白味がないのでこのように
. してみました。
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29 三行の教訓つばめ翻る  彰 子
. 私の句です。学校の教訓は三行が多い。近くの中学校の校訓も三行である。           
. 三行の教訓の建つ校庭につばめが元気よく飛び交っている。
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30 借りて履く長靴太し溝浚え コスモス
. <添削> ぶかぶかの長靴洗ふ溝浚え
. 説明的なのでこのようにしてみました。
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31 てふてふは青虫の親アッチイケ そらまめ
. 「てふてふ」は春、「青虫」は秋の季語です。アッチイケはいただけません。
. 考えてみてください。
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32 花槐土白く埋め匂ひ満 媛 香
. <添削> 芳しや埋め尽くしたる花槐
. 「花槐」(はなえんじゅ)は夏の季語。調子がよくないのでこのようにしてみました。
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33 初夏の風我が踝(くるぶし)を吹き抜けよ 楓 花
. 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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34 時の日や形見の時計母を恋ふ 媛 香
. <添削> 時の日や母の形見の金時計
. 「形見」「母を恋ふ」は付き過ぎ。また俳句では心情は直裁に言わないほうが
. いいとされています。添削句で母を偲んでいるのが十分伝わります。
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35 旅からのみやげとどきぬ麦の秋 浩 風
. <添削> 旅からの土産とどきぬ麦の秋
. いい句です。いい時候に旅に出かける。さぞ楽しいことでしょう。
. 旅先から留守居に好物の土産がとどく。
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36 梅雨晴れて遠くより子等のはしゃぐ声 菜の花
. <添削> 梅雨晴や遠くに子等のはしゃぐ声
. 「梅雨晴れて」を「梅雨晴や」にしました。中八になっています。
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37 停車場で巣立つつばくろ子だくさん ゆずき
. <添削> 停車場のつばくろ巣立つ昼下がり
. 説明になります。また「、巣立つつばくろ子だくさん」は意味があいまい。
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38 薔薇大輪はらりと落ちて風生まる コスモス
. <添削> 紅薔薇のはらりと落ちて風生まる
. 「薔薇大輪」を「紅薔薇」に置き換えてみました。
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39 麦の秋黄色の帽子見えかくれ まこと
. <添削> 麦熟るる赤い帽子の見えかくれ
. 「麦の秋」とは初夏のころの季節のことを言います。「麦の秋」に帽子の
. 見えかくれはいかがなものか。
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40 ダム近し風鈴草の峠道 峰 生
. <添削> 風鈴草つらなり湖(うみ)の見える丘
. 「風鈴草」は「蛍袋」のこと。夏の季語。ダム近しがあいまいなので、湖見えると
. 断定しました。
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41 庫裡の中経文唱える夏遍路 初 霜
. <添削> 風のなか鈴音ひびく秋遍路
. 「遍路」は春の季語。「秋遍路」は秋の季語。「夏遍路」と言う季語は
. ないと思いますが。原句ですと言い過ぎ、説明になります。また中八です。
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42 田植え前逆さ風景あぜの額 そらまめ
. 私には句意(情景)がよく分かりません。悪しからず。
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43 生かされて皐月の空へ深呼吸 千 柳
. 私には句意が今ひとつ分かりません。悪しからず。
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44 新茶売る姉(あね)さんかぶりで町おこし さつき
. <添削> 新茶売る老ひの姉(あね)さん被りかな
. あれもこれも言い過ぎです。中八になっています。「町おこし」を省略しても、
. 町おこしをしていることは想像出来と思います。
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45 子の幸を願い詣でる若葉寺 初 霜
. <添削> 子の幸を願ふ鎮守の若葉かな
. 「谷若葉」「里若葉」「山若葉」は、ある場所、視野に入るすべての
. 木々を言います。私の歳時記には「若葉寺」という季語はありません。
. 「詣でる」「寺」は付き過ぎ。
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46 忘帰洞磯に白濤夏の月 石の花
. <添削> 忘帰洞磯の波立つ夏の月
. 私は「忘帰洞磯」を知りません。俳句の後に添え書きをして貰うと
. ありがたいのですが。上手く添削できません。悪しからず。
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47 苔の花土塀に咲きて寺静か 千 柳
. <添削> 寺静かなるや土塀に苔の花
. 調子が悪いのでこのように詠んでみました。
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48 平和なり田に一面の花菖蒲 いなご
. いい句です。美し花菖蒲が咲き乱れている。平和のありがたさを
. しみじみ感じる。
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49 隣へと塀をつたいて蟻の道 浩 風
. <添削> 隣人は何をしてると蟻の道
. 説明になるので、このようにしてみました。
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50 竿売りの伸びやかな声梅雨晴間 コスモス
. <添削>梅雨寒や竿売りの声伸びやかに
. 「竿売り」と「梅雨晴間」は付ます。「梅雨晴間」を「梅雨寒」
. にして上五にもってきました。
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51 夏空をひとり帰ると孫メール 峰 生
. <添削> 初蝉やひとり帰ると子のメール
. 俳句の世界では孫の句は作らないほうがいいそうです。句意が今ひとつ
. はっきりしないので、このように詠んでみました。
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52 まだまだと米寿を目指す喜寿の吾 竹 豪
. <添削> まだまだと米寿を目指す喜寿の春
. 季語がありません。「喜寿の吾」を「喜寿の春」としました。
. 思いはよく分かります。長寿社会になっています。頑張ってください。
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53 通り雨止みて埴生に夜鷹鳴く 峰 生
. <添削> 夜鷹鳴く埴生の園の通り雨
. やや説明的か。「通り雨」とは「すぐ晴れ上がる雨」のこと。したがって添削句
. のような詠み方もあります。
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54 空海のゆる抜く池や青嵐 媛 香
. 素直で簡明ないい句です。四国では空海の恩恵をうけている所は
. 沢山あります。季語もよく効いています。