.平成18年7月分添削と寸評 |
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.暑中お見舞い申し上げます。 |
.梅雨末期に大雨が続きましたが、被害はありませんでしたか。 |
.梅雨明けがおそくなりましたが、いよいよ本格的な夏を迎えました。 |
.暑さは年長者にはこたえますが、体調に十分留意され前向きに |
.「明るく 楽しく 元気よく」人生を歩んでいきましょう。 |
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相変わらず私流の添削と寸評をします。 |
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番号 |
添 削 と 寸 評 |
俳 号 |
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1 |
夏風が屋根付き橋を吹き抜けり |
竹 豪 |
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<添削> 屋根付きの橋に佇む夏の風 |
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原句ですと説明になり余情がありません。添削句のようにしてみました。 |
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2 |
ボール蹴る喚声上がる梅雨晴間 |
まこと |
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<添削> サッカーの喚声上がる梅雨晴間 |
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ボール蹴る|喚声上がる|梅雨晴間|と三段切れになるので |
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このようにしてみました。 |
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3 |
丈(たけ)切って二十歳(はたち)の服に衣更 |
さつき |
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<添削> リホォームの二十歳(はたち)の服に衣更 |
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<添削> 衣更二十歳(はたち)の服の丈(たけ)切って |
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意味があいまいなので、添削句のようにしてみました。如何でしょうか。 |
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4 |
虹の橋小さい電車の潜りけり |
コスモス |
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<添削> 夕虹を潜る電車の遠ざかり |
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「虹」は夏の季語です。「小さい」は不要だと思います。虹の橋で |
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切れるのはどうかと思いましてこのようにしてみました。 |
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5 |
七夕や短冊多し笹撓ふ |
媛 香 |
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<添削> 七夕の竹撓りゐる願いごと |
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「七夕」「短冊」「笹」と物が多く言い過ぎています。俳句は省略する |
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ことが大事です。簡潔に詠みましょう。 |
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添削句ですと省略しすぎていますか。願いことが多くて竹が支え |
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切れなくなっているというのですが。 |
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6 |
一条の蛍火闇に吸い込まれ |
千 柳 |
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いい句です。最近では蛍も少しづつ増えているようです。淡い蛍火 |
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とともに自分も闇に吸い込まれそう。幻想的なひととき。 |
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7 |
クーラーが悲鳴を上げる熱帯夜 |
ゆづき |
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<添削> クーラーも悲鳴を上げる大相撲 |
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「クーラー」「熱帯夜」は夏の季語です。 |
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「熱帯夜」をのけました。上手く添削出来ませんが悪しからず。 |
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8 |
新霊の供養山寺蝉の声 |
石の花 |
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<添削> 新霊の供養全山蝉の声 |
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いい句です。蝉がしきりに鳴いている山寺で供養が行われる。 |
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季語がよく効いています。 |
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「新霊」「供養」「山寺」と言い過ぎのきらいがあるので、「山寺」を |
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.「全山」にしてみました。 |
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9 |
凌霄花テラスにのぼり競い咲く |
まこと |
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<添削> 凌霄の方円に散る車椅子 |
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原句ですと説明になるので別なものと取り合わせるとよくなります。 |
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考えてみてください。 |
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10 |
蛍火が余命を刻み水に舞う |
千 柳 |
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<添削> 蛍火の余命を刻むまくら闇 |
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「蛍火」と「水に舞う」は付き過ぎです。このようにしてみました。 |
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11 |
ポンポンと叩いて味聴く大西瓜 |
そらまめ |
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<添削> ポンポンと 叩き味効く 大西瓜 |
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中八になるのでこのようにしました。「聴く」は「効く」にしました。 |
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いい句です。よくやる仕草です。慣れてこないとなかなか当たりません。 |
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味見は当たりましたか。美味しかったですか。 |
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12 |
仏前にクチナシの花香り添え |
竹 豪 |
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<添削> 旅立つやくちなしの花仏前に |
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「香り添え」はどうかと思いまして、このようにしてみました。 |
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13 |
大屋根を打ち打つ響き梅雨荒れる |
石の花 |
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<添削> 大屋根を叩くがごとく走り梅雨 |
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「打つ打つ響き」特に「響き」は省略しましょう。また梅雨荒れる |
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まで言わなくても分かると思います。 |
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14 |
威張るけど鮎釣り上手いパパの居て |
峰 生 |
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<添削> 鮎釣りは上手いと威張るパパの居て |
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「鮎釣」は夏の季語です。 |
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少し調子が悪いかなと思いまして、このようにしてみました。 |
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15 |
いただきし産毛ある枇杷仏壇へ |
いなご |
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いい句です。美味しそうなもぎたての枇杷。仏さまも大好物。さぞ |
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喜んでおられることでしょう。 |
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16 |
大都会ビルの谷間の風涼し |
初 霜 |
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<添削> 東京のビルの谷間の風涼し |
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東京と地名をいれたほうがイメージが強くなると思いますます。 |
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17 |
登山杖立てて妻との握り飯 |
彰 子 |
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私の句です。登山中の握り飯は格別おいしい。 |
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18 |
あいさつは梅雨明けですねこの大雨 |
そらまめ |
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<添削> 梅雨明けの月しんしんと上りけり |
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下六になります。意途がよく分かりませんが、句にしにくいように思います。 |
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19 |
雨上がる棚田のかえる大合唱 |
泉 |
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いい句です。梅雨が明けると蛙がさかんに鳴き出す、夏本番を感じます。 |
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20 |
朝取りの太き胡瓜を糠漬けに |
まこと |
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いい句です。一晩で浅漬けの胡瓜ができます。美味しいですね。 |
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私も大好物です。 |
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21 |
二拍子の槌音響く夏の空 |
浩 風 |
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いい句です。勇ましい槌音が夏空に響いてをり、壮快。 |
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季語を替えて作ってみました。 二拍子の槌音響く炎天下 |
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22 |
鍔広の深き想いで夏帽子 |
初 霜 |
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<添削> 旧友を訪ふ鍔広の夏帽子(つばびろ) |
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夏帽子に思いがあるのか、夏帽子を被って思っているのか、 |
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句意がはっきりしません。このようにしてみました。 |
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23 |
高縄の入道雲や波の上 |
そらまめ |
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<添削> 風早の入道雲や波の上 |
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「高縄」だと「高縄山」を思います。したがって山の雲と海とでは |
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不自然です。「風早」は北条地区のことをいうので添削句のように |
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すると、景がよく分かると思います。 |
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24 |
棟上げのクレーン伸びる雲の峰 |
浩 風 |
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いい句です。雲の峰に向ってクレーンが伸びていく力強い爽やかな光景。 |
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季語がよく効いています。 |
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25 |
金魚売り浴衣姿のマドンナが |
泉 |
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<添削> 金魚売る着物姿のマドンナが |
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「金魚売り」「浴衣姿」は夏の季語で季重ねになります。 |
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「浴衣姿」を省略しました。 |
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26 |
雷鳴が頭の上で首縮む |
竹 豪 |
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<添削> 首縮みけり中天の日雷(ひがみなり) |
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説明になるのと調子が悪いのでこのようにしてみました。 |
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真上での雷は恐いですね。思わず首を縮める。 |
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27 |
涼しかり終の栖の木の香り |
浩 風 |
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涼しかり終(つい)の栖(すみか)の木の香り |
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いい句です。終の栖として希望する家を新築する。大満足である。 |
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28 |
湯に浸す乙女の脚や春大根 |
ゆづき |
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いい句です。足湯をしているのでしょう。大根足と言いますが、 |
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乙女の足を比喩しておもしろい句です。 |
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29 |
合歓咲くや信号待ちの無人駅 |
いなご |
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<添削> 合歓咲くや一人降り立つ無人駅 |
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「信号待ち」はどうかと思いますので、このようにしてみました。 |
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30 |
あじさいを見んと乗ったるモノレール |
哲 朗 |
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<添削> 紫陽花の色変ふ汽笛音一つ |
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説明になります。紫陽花に焦点をしぼって詠みましょう。 |
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31 |
軽鴨の親離れして初泳ぎ |
媛 香 |
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<添削> 軽鳧(かる)の子の親離れする日和かな |
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「鴨」に「泳ぐ」は付き過ぎ。このように詠んでみました。 |
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32 |
薫風に海の声聞く浴女かな |
さつき |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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33 |
夏の川一升瓶の立ち流れ |
コスモス |
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<添削> 夏川に立ちて流れる一升瓶 |
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調子が今一つなのでこのように詠んでみました。 |
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34 |
ねじればな素直にねじれ咲きのぼる |
哲 朗 |
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<添削> ねじれ花素直にねじれ夕迫る |
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「咲きのぼる」は説明になるので省略し添削句のようにしてみました。 |
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35 |
水色のワンピースの児夏来たる |
楓 花 |
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<添削> 夏来たる児の水色のワンピース |
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調子がよくないので下五を上五にもってきました。 |
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36 |
炎天下ぬいぐるみ着しバイト生 |
初 霜 |
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<添削> 炎ゆる日のぬいぐるみ着しアルバイト |
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「バイト生」という言葉はないのでは。アルバイトと言えば学生の |
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副業のことです。 |
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37 |
校庭のプール朝から1.2.3 |
峰 生 |
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<添削> 校庭のプール朝から1.2.3 |
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句意が今ひとつ分かりません。悪しからず。 |
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38 |
片端はビル街に有り虹の脚 |
コスモス |
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<添削> 虹の輪の向こうはどこの里かしら |
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句としての情趣がないのでこのようにしてみました。 |
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39 |
土曜市浴衣姿のリバイバル |
菜の花 |
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<添削> 湯上がりの浴衣姿の土曜市 |
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調子が悪いのでこのようにしてみました。 |
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40 |
梅雨荒らぶ唐突にくるや里荒らす |
石の花 |
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<添削> 沛然と驟雨ま夏の蔬菜園 |
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中八になります。調子が悪いのでこのようにしてみました。 |
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41 |
マンションも工場も映し植田かな |
楓 花 |
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<添削> マンションも工場も映す植田かな |
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いい句です。街中でののどかな美しい光景。 |
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42 |
老農は昔を語る青田風 |
峰 生 |
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いい句です。年をとると古い話をしたがるものですが。こうして伝統がまもられて |
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いきます。 |
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このような句にしてみました。 老農の昔語りや青田風 |
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43 |
曇り空見上げてさがす彦星を |
泉 |
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<添削> 彦星をさがす親子が手かざし |
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「空」「見上げる」「星」と言い過ぎです。少し省略しましょう。 |
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「彦星」は秋の季語。歳時記によっては載っていません。 |
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44 |
空に入るオーラただよう那智の滝 |
さつき |
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<添削> 一山に霊気ただよう那智の滝 |
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句意が今ひとつ分かりません。「オーラ」は近代的な表現ですが、私流 |
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の俳句ですと「霊気」と言います。那智の滝をみていると自然に手を合わせる。 |
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45 |
芝刈りや一条の跡涼しげに |
蝋 梅 |
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いい句です。芝刈りの跡には筋目がつきますが、それを涼しそうに感じたという。 |
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労働のあとの爽快感。 |
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46 |
打ち水に涼を求める真夏日や |
ゆづき |
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<添削> 打水に石の匂ひの流れけり |
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「打ち水」「涼」「真夏日」はいずれも夏の季語で季重ねになります。 |
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簡潔に句を作りましょう。 |
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47 |
やわらかき妻の手槍ヶ岳(やり)の星月夜 |
彰 子 |
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私の句です。山頂付近の山小屋でのひととき、満天の星が美しい |
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48 |
この暑さ一雨降ってと愚痴てみる |
菜の花 |
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<添削> 一雨がほしい愚痴る雲の峰 |
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中八です。具体的な物がありません。俳句は物に託して感じたことを |
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詠むものです。考えてみてください。 |
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49 |
今日もまた夕餉の一品胡瓜もみ |
いなご |
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<添削> 今日もまた夕餉にそへる胡瓜もみ |
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中八になるのでこのようにしました。いい句です。夏場には |
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胡瓜もみがいい。食欲をそそる。 |
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50 |
初ツバメ歩道信号5回待つ |
蝋 梅 |
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<添削> 初つばめ歩道信号5回待つ |
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「燕」「初燕」は春の季語。夏燕は夏の季語です。情景がよく分かりません。 |
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悪しからず。 |
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51 |
夏めくや槍のかたちに槍ヶ岳 |
彰 子 |
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私の句です。槍のように尖る名峰槍ヶ岳に圧倒される。 |
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52 |
野歩きや手折らず行かむ捻り花 |
楓 花 |
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いい句です。目立たない可憐な捻り花。そっとしておこう。慈しみを |
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感じる句です。 |
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53 |
梅雨晴れ間市民清掃終えホット |
菜の花 |
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<添削> 市民清掃終へ一服の梅雨晴間 |
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市民清掃が終わり。やれやれと一息いれる。雨が降らなくてたすかる。 |
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54 |
毛を刈りて恥ずかしげなる羊かな |
蝋 梅 |
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いい句です。「羊の毛刈る」は春の季語。恥ずかしそうにみえる羊、 |
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よく観察されています。 |
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55 |
白鷺や七色しぶき浴びて佇つ |
媛 香 |
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いい句です。しぶきが七色に輝く、美しい光景です。 |
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「白鷺の七色しぶき浴びて佇つ」 「白鷺の」と「白鷺や」とどちらが |
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いいでしょう? |
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56 |
髪洗い終えて背筋を伸ばしけり |
千 柳 |
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いい句です。髪洗いを終えてさっぱりする。ますます元気で頑張ろう |
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と思う。 |
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57 |
香水や行き交う人のさまざまに |
哲 朗 |
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いい句です。すれ違いにいい香りがする。よく見ると人の表情、 |
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服装はさまざまである。 |
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