平成18年 8月1日〜平成18年 8月20日 投句分
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互 選 句
第 20 回 披 講
 8 月 分 の 添 削 と 寸 評    
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 8月も終わりましたが、真夏日がつづき残暑なお厳しいようです。
 しかし、蝉の声はつくつくぼーしに変わり、夜になると虫の声も
聞かれるようになり、秋の気配を感じるようになってきました。
 秋はさわやかで心地よく詩情豊かであります。句作りにはもって
こいの季節です。少しでも多くの句を作って下さい。
 いい句が多くなってきているので嬉しく思っています。
 相変わらず私流の添削と寸評をします。
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番号       添  削 & 寸  評
1 休日やビル包まるる蝉しぐれ まこと
<添削> 休日のビル包まるる蝉しぐれ
「休日や」より「休日の」の方がいいと思います。
いい句です。休日で人も車も少ないビル街が蝉しぐれで賑やか。
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2 盂蘭盆会孫の読経のとつとつと 浩 風
いい句です。孫が分からないまま皆のまねをして読経している。
和やかな情景。
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3 蜘蛛の囲に纏われ登る城裏道 コスモス
<添削> 蜘蛛の囲に纏われ登る城の道
いい句です。「城裏道」はどうかと思うので、「城の道」にしました。
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4 幼子のゆかた姿とシャボン玉  泉 
<添削> 走り出す浴衣姿の女の子  
「ゆかた姿」は夏の季語。「シャボン玉」は春の季語です。
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5 空蝉を捨てし命も燃え居れど 峰 生
句意がよく分かりません。悪しからず。
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6 くぼみおる運転席の藺(い)座布団 いなご
いい句です。藺(い)座布団は涼しさを感じます。その藺座布団が
くぼんだまま運転席にある。運転者を癒してくれたことでしょう。
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7 盆供養坊さんバイクで駆け巡り 菜の花
<添削> 坊さんのバイクで駆ける玉祭  
中八です。坊さんはお盆が一番忙しい。汗を拭き拭きバイクを走らせる。
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8 空蝉や寸土の庭のそこかしこ 初 霜
<添削> 空蝉の爪立て空を見詰めゐる
説明になっています。空蝉に焦点をしぼって詠んでみました。
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9 本島の無住職寺や柿若葉 媛 香
<添削> 本島の無住寺秋はすぐそこに
「無住寺」とは住職のいない寺のことで、「無住職寺」とは言わないと
思います。
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10 遠花火開き終りて音響く コスモス
<添削> 堰堤に揚花火待つ姉妹
説明になります。「響く」とは音がひろがって聞こえることです。
巧く添削できません。悪しからず。
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11 日の匂い残るトマトを採りにけり いなご
いい句です。新鮮なトマト、早速冷やして食べよう。美味しくて栄養も
満点。
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12 冷房に負けじと居間へ夏の風 竹 豪
<添削> 二人居の居間筒抜けに夏の風
「冷房」「夏の風」ともに夏の季語です。
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13 タクシ−を待たせて廻る盆の僧 さつき
いい句です。一般社会では盆は休み。しかしお坊さんは盆がもっとも
忙しい。
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14 妻の手も緩やかに添え盆踊り 峰 生
<添削> 妻の手をかるく握りて盆踊
「緩やかに添え」はどうかと思いこのようにしてみました。
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15 アネ三歳墓碑にチチハハ月見草 媛 香
句意がよく分かりません。悪しからず。
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16 雌蝉がいばり降らせて飛び立ちぬ 千 柳
<添削> 熊蝉の威張り散らして去りにけり
どの蝉も鳴くのは雄だけで、雌は鳴かず唖蝉と呼ばれます。
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17 梅雨明けて箪笥引き出しみな開ける 竹 豪
<添削> 梅雨明けや木の香の匂ふ小引き出し
これでは説明になります。
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18 虫かごにクマゼミ取りて得意顔 浩 風
<添削> 満面の笑み熊蝉を籠に入れ  
. 「虫かご」は秋の季語。「熊蝉」は夏の季語です。
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
熊蝉を捕って得意満面。うれしかったのでしょう。
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19 かぶりつく水蜜桃の滴りて 媛 香
いい句です。水蜜桃は水分が多い。かぶりつくと甘い汁がしたたり
落ちる。いかにも美味しそう。
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20 道おしへ(斑猫)つられてついて山小屋へ 石の花
<添削> 斑猫に促さられて峠道
「斑猫」(はんみょう)「道おしへ」2センチ足らずの美しい虫で
夏の季語。「山小屋」も夏の季語です。「つられて」はどうかと
思いましてこのようにしてみました。
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21 法師蝉鳴き出し胸をなで下ろす 初 霜
いい句です。残暑は厳しいが法師蝉が鳴き出すと秋の気配を感じ、
ほっとする。
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22 昼顔の咲く道駆ける球児達 楓 花
<添削> 昼顔の坂道駆ける球児達
「昼顔」はいたるところに自生する野草で日盛りに咲く。「昼顔」と
言えば昼顔が咲いている花のことです。「咲く」は省略しました。
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23 観察に虫を探して野道行く 石の花
<添削> 脇道を行く美しき虫の声
「虫を探し」は具象性がありません。「虫」そのものを詠みましょう。
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24 蛸焼きをつつき上目で揚げ花火 峰 生
<添削> 鯛焼きを頬(ほほ)ばる島の揚花火
「蛸」は大歳時記によると夏の季語です。したがって「蛸焼き」は
いかがなものでしょうか。
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25 入道雲あちらでモクモクこちらでも 菜の花
<添削> 入道雲あちらこちらでもくもくと
中八です。このようにしてみました。
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26 庭先の素麺流し子ら笑う そらまめ
<添削> 庭先の父子の素麺流しかな
私は,「子ら笑う」を省略したいのでこのように作ってみました。
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27 母さんと小さく呼びて門火焚く 楓 花
いい句です。優しかった母を切なく思いだす、しみじみとした句です。
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28 道おしえみちびく先は何もなし 哲 朗
句意が今ひとつよく分かりません。悪しからず。
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29 斑猫の色鮮やかや飛んでゆく 石の花
<添削> 斑猫の飛びゆく色の鮮やかに
調子が悪いと思いましてこのように詠んでみました。
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30 すねる子の手を引いて入る踊りの輪 さつき
いい句です。親の勝手、子供はいい迷惑です。
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31 秋めくや夫婦茶碗の花模様 彰 子
私の句です。食欲の秋になってきたのでお気に入りの茶碗に替える。
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32 何となく触りたくなる含羞草 いなご
いい句です。気持ちがよく分かります。
「含羞草(おじぎそう)」は7〜8月ごろ淡紅色の小さい花が球状に開く。
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33 老骨に鞭打ち夏の果てにけり 彰 子
私の句です。つくづく歳を感じます。頑張って夏を乗り切りました。
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34 うつ伏せに祈るがごとく蝉死せり 千 柳
<添削> 蝉死せり一山風の音ばかり
「うつ伏せに」「祈るがごとく」「蝉死せり」と言い過ぎており、説明に
なります。思い切って省略しましょう。
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35 帰省子の背を追う山の鳥の声 浩 風
<添削> 帰省子を追ふや山鳩ぽぽぽぽと
帰省子を山鳩が名残惜しく思って見送っている。
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36 古絵馬の薄れし武将蝉しぐれ  哲 朗
いい句です。「蝉しぐれ」の季語がよく効いている。かっては見事な絵馬 
で、勇ましい武将が描かれていた。昔を偲ぶ。
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37 汗ポトリ涙ポロポロ砂拾う 千 柳
<添削> 汗ぽとりぽとりと砂を拾ひけり
句意が今ひとつ分かりません。涙を省略し汗だけで詠んでみました。
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38 球児らの最後の夏や甲子園  泉 
いい句です。今年の夏の高校野球は手に汗を握る熱戦が多かった。
力一杯戦ったので負けて悔い無し。思い出に残る甲子園であった。
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39 片言のば−ばおはよう盆の入り さつき
<添削> 片言のあいさつ交わす盆帰省
調子が今ひとつよくないのでこのように詠んでみました。
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40 ズンときてカメラもぶれる大花火 そらまめ
いい句です。まさにそのとうりです。お腹にずんとくると同時にカメラも
ぶれるのではないかと思うほどである。
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41 長くも短い感じも夏休み 初 霜
物がありません。俳句は感動したことを物に託して詠むものです。
上四、中八になっています。考えてみてください。
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42 宿題をニスで仕上げる夏休み そらまめ
いい句です。夏休みもあと数日になる。工作物にニスを塗ってやっと
仕上げる。我ながらいい出来映えである。
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43 土用波ボートのオール宙を漕ぐ 哲 朗
いい句です。[土用波]とは風のない晴れた日に、波だけは高くうねって
いる。また南方の洋上に台風が生じて、それから発したうねりである。
ボートが大きく揺れるのでオールが波をとれえないで宙をきるのである。
危険です。事故をおこさないように注意してください。
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44 姫女苑に囲まる地蔵の白き袈裟 コスモス
<添削> 姫女苑の覆ふ地蔵の白き袈裟
いい句です。中八になるのでこのように詠んでみました。
「姫女苑」と「白き袈裟」の取り合わせがおもしろい。
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45 階段を拭きて素足を確かむる 楓 花
いい句です。階段を丁寧拭く。ぴかぴか光るようである。素足での
感触が気持ちよい。
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46 飯盒めし夏山の味持ち帰る まこと
<添削>夏山の味噛みしめる飯盒飯
「味持ち帰る」はどうかと思いましてこのように詠んでみました。
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47 向日葵よ太陽に向けドッシリと 菜の花
<添削> 向日葵の群れ立つ空のあおあおと
「向日葵」と「太陽」は付き過ぎです。また説明になります。
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48 登るほど槍ヶ岳(やり)尖りくる炎天下 彰 子
私の句です。5合目ぐらいから登るほどに名峰槍ヶ岳が迫ってきます。
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49 踏み切りに列車待つ間の花カンナ まこと
<添削> 踏み切りに郵便夫待つ花カンナ
説明になるにでこのように詠んでみました。
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50 チアガール真夏の空の大舞台  泉 
<添削> チアガール跳ねる真夏の碧い空
調子が悪いのと説明的かなと思いこのように詠んでみました。
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51 梅雨明けを待ちてかまびし蝉時雨 竹 豪
<添削> この時を待ちてかまびし蝉の声
「梅雨明け」「蝉時雨」は共に夏の季語です。「かまびし」と「蝉時雨」
は付き過ぎるので素直に表現してみました。