8 月 分 の 添 削 と 寸 評 |
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8月も終わりましたが、真夏日がつづき残暑なお厳しいようです。 |
しかし、蝉の声はつくつくぼーしに変わり、夜になると虫の声も |
聞かれるようになり、秋の気配を感じるようになってきました。 |
秋はさわやかで心地よく詩情豊かであります。句作りにはもって |
こいの季節です。少しでも多くの句を作って下さい。 |
いい句が多くなってきているので嬉しく思っています。 |
相変わらず私流の添削と寸評をします。 |
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番号 |
添 削 & 寸 評 |
1 |
休日やビル包まるる蝉しぐれ |
まこと |
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<添削> 休日のビル包まるる蝉しぐれ |
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「休日や」より「休日の」の方がいいと思います。 |
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いい句です。休日で人も車も少ないビル街が蝉しぐれで賑やか。 |
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2 |
盂蘭盆会孫の読経のとつとつと |
浩 風 |
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いい句です。孫が分からないまま皆のまねをして読経している。 |
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和やかな情景。 |
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3 |
蜘蛛の囲に纏われ登る城裏道 |
コスモス |
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<添削> 蜘蛛の囲に纏われ登る城の道 |
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いい句です。「城裏道」はどうかと思うので、「城の道」にしました。 |
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4 |
幼子のゆかた姿とシャボン玉 |
泉 |
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<添削> 走り出す浴衣姿の女の子 |
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「ゆかた姿」は夏の季語。「シャボン玉」は春の季語です。 |
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5 |
空蝉を捨てし命も燃え居れど |
峰 生 |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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6 |
くぼみおる運転席の藺(い)座布団 |
いなご |
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いい句です。藺(い)座布団は涼しさを感じます。その藺座布団が |
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くぼんだまま運転席にある。運転者を癒してくれたことでしょう。 |
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7 |
盆供養坊さんバイクで駆け巡り |
菜の花 |
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<添削> 坊さんのバイクで駆ける玉祭 |
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中八です。坊さんはお盆が一番忙しい。汗を拭き拭きバイクを走らせる。 |
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8 |
空蝉や寸土の庭のそこかしこ |
初 霜 |
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<添削> 空蝉の爪立て空を見詰めゐる |
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説明になっています。空蝉に焦点をしぼって詠んでみました。 |
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9 |
本島の無住職寺や柿若葉 |
媛 香 |
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<添削> 本島の無住寺秋はすぐそこに |
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「無住寺」とは住職のいない寺のことで、「無住職寺」とは言わないと |
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思います。 |
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10 |
遠花火開き終りて音響く |
コスモス |
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<添削> 堰堤に揚花火待つ姉妹 |
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説明になります。「響く」とは音がひろがって聞こえることです。 |
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巧く添削できません。悪しからず。 |
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11 |
日の匂い残るトマトを採りにけり |
いなご |
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いい句です。新鮮なトマト、早速冷やして食べよう。美味しくて栄養も |
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満点。 |
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12 |
冷房に負けじと居間へ夏の風 |
竹 豪 |
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<添削> 二人居の居間筒抜けに夏の風 |
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「冷房」「夏の風」ともに夏の季語です。 |
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13 |
タクシ−を待たせて廻る盆の僧 |
さつき |
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いい句です。一般社会では盆は休み。しかしお坊さんは盆がもっとも |
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忙しい。 |
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14 |
妻の手も緩やかに添え盆踊り |
峰 生 |
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<添削> 妻の手をかるく握りて盆踊 |
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「緩やかに添え」はどうかと思いこのようにしてみました。 |
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15 |
アネ三歳墓碑にチチハハ月見草 |
媛 香 |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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16 |
雌蝉がいばり降らせて飛び立ちぬ |
千 柳 |
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<添削> 熊蝉の威張り散らして去りにけり |
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どの蝉も鳴くのは雄だけで、雌は鳴かず唖蝉と呼ばれます。 |
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17 |
梅雨明けて箪笥引き出しみな開ける |
竹 豪 |
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<添削> 梅雨明けや木の香の匂ふ小引き出し |
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これでは説明になります。 |
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18 |
虫かごにクマゼミ取りて得意顔 |
浩 風 |
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<添削> 満面の笑み熊蝉を籠に入れ |
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「虫かご」は秋の季語。「熊蝉」は夏の季語です。 |
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調子がよくないのでこのように詠んでみました。 |
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熊蝉を捕って得意満面。うれしかったのでしょう。 |
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19 |
かぶりつく水蜜桃の滴りて |
媛 香 |
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いい句です。水蜜桃は水分が多い。かぶりつくと甘い汁がしたたり |
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落ちる。いかにも美味しそう。 |
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20 |
道おしへ(斑猫)つられてついて山小屋へ |
石の花 |
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<添削> 斑猫に促さられて峠道 |
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「斑猫」(はんみょう)「道おしへ」2センチ足らずの美しい虫で |
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夏の季語。「山小屋」も夏の季語です。「つられて」はどうかと |
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思いましてこのようにしてみました。 |
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21 |
法師蝉鳴き出し胸をなで下ろす |
初 霜 |
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いい句です。残暑は厳しいが法師蝉が鳴き出すと秋の気配を感じ、 |
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ほっとする。 |
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22 |
昼顔の咲く道駆ける球児達 |
楓 花 |
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<添削> 昼顔の坂道駆ける球児達 |
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「昼顔」はいたるところに自生する野草で日盛りに咲く。「昼顔」と |
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言えば昼顔が咲いている花のことです。「咲く」は省略しました。 |
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23 |
観察に虫を探して野道行く |
石の花 |
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<添削> 脇道を行く美しき虫の声 |
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「虫を探し」は具象性がありません。「虫」そのものを詠みましょう。 |
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24 |
蛸焼きをつつき上目で揚げ花火 |
峰 生 |
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<添削> 鯛焼きを頬(ほほ)ばる島の揚花火 |
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「蛸」は大歳時記によると夏の季語です。したがって「蛸焼き」は |
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いかがなものでしょうか。 |
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25 |
入道雲あちらでモクモクこちらでも |
菜の花 |
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<添削> 入道雲あちらこちらでもくもくと |
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中八です。このようにしてみました。 |
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26 |
庭先の素麺流し子ら笑う |
そらまめ |
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<添削> 庭先の父子の素麺流しかな |
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私は,「子ら笑う」を省略したいのでこのように作ってみました。 |
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27 |
母さんと小さく呼びて門火焚く |
楓 花 |
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いい句です。優しかった母を切なく思いだす、しみじみとした句です。 |
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28 |
道おしえみちびく先は何もなし |
哲 朗 |
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句意が今ひとつよく分かりません。悪しからず。 |
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29 |
斑猫の色鮮やかや飛んでゆく |
石の花 |
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<添削> 斑猫の飛びゆく色の鮮やかに |
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調子が悪いと思いましてこのように詠んでみました。 |
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30 |
すねる子の手を引いて入る踊りの輪 |
さつき |
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いい句です。親の勝手、子供はいい迷惑です。 |
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31 |
秋めくや夫婦茶碗の花模様 |
彰 子 |
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私の句です。食欲の秋になってきたのでお気に入りの茶碗に替える。 |
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32 |
何となく触りたくなる含羞草 |
いなご |
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いい句です。気持ちがよく分かります。 |
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「含羞草(おじぎそう)」は7〜8月ごろ淡紅色の小さい花が球状に開く。 |
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33 |
老骨に鞭打ち夏の果てにけり |
彰 子 |
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私の句です。つくづく歳を感じます。頑張って夏を乗り切りました。 |
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34 |
うつ伏せに祈るがごとく蝉死せり |
千 柳 |
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<添削> 蝉死せり一山風の音ばかり |
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「うつ伏せに」「祈るがごとく」「蝉死せり」と言い過ぎており、説明に |
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なります。思い切って省略しましょう。 |
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35 |
帰省子の背を追う山の鳥の声 |
浩 風 |
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<添削> 帰省子を追ふや山鳩ぽぽぽぽと |
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帰省子を山鳩が名残惜しく思って見送っている。 |
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36 |
古絵馬の薄れし武将蝉しぐれ |
哲 朗 |
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いい句です。「蝉しぐれ」の季語がよく効いている。かっては見事な絵馬 |
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で、勇ましい武将が描かれていた。昔を偲ぶ。 |
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37 |
汗ポトリ涙ポロポロ砂拾う |
千 柳 |
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<添削> 汗ぽとりぽとりと砂を拾ひけり |
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句意が今ひとつ分かりません。涙を省略し汗だけで詠んでみました。 |
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38 |
球児らの最後の夏や甲子園 |
泉 |
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いい句です。今年の夏の高校野球は手に汗を握る熱戦が多かった。 |
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力一杯戦ったので負けて悔い無し。思い出に残る甲子園であった。 |
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39 |
片言のば−ばおはよう盆の入り |
さつき |
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<添削> 片言のあいさつ交わす盆帰省 |
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調子が今ひとつよくないのでこのように詠んでみました。 |
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40 |
ズンときてカメラもぶれる大花火 |
そらまめ |
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いい句です。まさにそのとうりです。お腹にずんとくると同時にカメラも |
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ぶれるのではないかと思うほどである。 |
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41 |
長くも短い感じも夏休み |
初 霜 |
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物がありません。俳句は感動したことを物に託して詠むものです。 |
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上四、中八になっています。考えてみてください。 |
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42 |
宿題をニスで仕上げる夏休み |
そらまめ |
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いい句です。夏休みもあと数日になる。工作物にニスを塗ってやっと |
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仕上げる。我ながらいい出来映えである。 |
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43 |
土用波ボートのオール宙を漕ぐ |
哲 朗 |
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いい句です。[土用波]とは風のない晴れた日に、波だけは高くうねって |
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いる。また南方の洋上に台風が生じて、それから発したうねりである。 |
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ボートが大きく揺れるのでオールが波をとれえないで宙をきるのである。 |
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危険です。事故をおこさないように注意してください。 |
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44 |
姫女苑に囲まる地蔵の白き袈裟 |
コスモス |
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<添削> 姫女苑の覆ふ地蔵の白き袈裟 |
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いい句です。中八になるのでこのように詠んでみました。 |
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「姫女苑」と「白き袈裟」の取り合わせがおもしろい。 |
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45 |
階段を拭きて素足を確かむる |
楓 花 |
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いい句です。階段を丁寧拭く。ぴかぴか光るようである。素足での |
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感触が気持ちよい。 |
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46 |
飯盒めし夏山の味持ち帰る |
まこと |
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<添削>夏山の味噛みしめる飯盒飯 |
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「味持ち帰る」はどうかと思いましてこのように詠んでみました。 |
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47 |
向日葵よ太陽に向けドッシリと |
菜の花 |
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<添削> 向日葵の群れ立つ空のあおあおと |
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「向日葵」と「太陽」は付き過ぎです。また説明になります。 |
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48 |
登るほど槍ヶ岳(やり)尖りくる炎天下 |
彰 子 |
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私の句です。5合目ぐらいから登るほどに名峰槍ヶ岳が迫ってきます。 |
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49 |
踏み切りに列車待つ間の花カンナ |
まこと |
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<添削> 踏み切りに郵便夫待つ花カンナ |
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説明になるにでこのように詠んでみました。 |
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50 |
チアガール真夏の空の大舞台 |
泉 |
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<添削> チアガール跳ねる真夏の碧い空 |
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調子が悪いのと説明的かなと思いこのように詠んでみました。 |
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51 |
梅雨明けを待ちてかまびし蝉時雨 |
竹 豪 |
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<添削> この時を待ちてかまびし蝉の声 |
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「梅雨明け」「蝉時雨」は共に夏の季語です。「かまびし」と「蝉時雨」 |
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は付き過ぎるので素直に表現してみました。 |