平成18年 9月1日〜平成18年 9月20日 投句分
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互 選 句
第 21 回 披 講
      9月分の添削と寸評
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 大変厳しかった残暑も九月に入ると、すっかり秋らしくなりました。
ばて気味だった体調もすこしづつ良くなっていることと思います。
 秋は色彩豊かな自然の美しい季節です。大いに自然に親しみ俳句を
作って下さい。
 季重ね、無季などまだ時々見かけます。前にも言いましたが投句
するとき、今一度次ぎの八項目をチエックして下さい。
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      @ 5.7.5になっているか。特に中7になっているか。
      A 季語はあるか。(歳時記を見て季語の意味を良く理解する)
      B 季重ねになっていないか。
      C 切れ字(名詞切れ)はあるか。
      D 物(自然、植物、動物、風や雲など)はあるか。
      E 物が多すぎないか。
      F 説明になっていないか。
      G あれもこれも言い過ぎていないか。
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 次に読みにくい季語には(ふりがな)を、また意味の分かりにくい
名詞などには添え書き(説明)をつけて下さいさい
 今月もいい句が沢山ありました。相変わらず独断で
私流の添削と寸評をします。 
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番号 .    添 削 と 寸 評 俳 号
1 草刈り機蛇の首刎ね蝉時雨 竹 豪
「草刈り機」「蛇」「蝉時雨」はいずれも夏の季語です。考えてみてください。
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2 彼岸会のマリオネットの話かな 浩 風
いい句です。「マリオネット」とは人形劇のことです。法要も終わり和尚さん
からマリオネットの話を聞いているというおもしろい句です。
「彼岸」は俳句では春の季語です。秋の場合は「秋彼岸」と詠まれています。
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3 衣被(きぬかつぎ)つるりと剥けて転がりぬ いなご
<添削> 里芋のつるりと剥けて転がりぬ
「衣被ぎ」とは「子芋を皮のまま茹でたもの」を言います。
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4 嵐過ぎ夕焼け雲に明日想う そらまめ
<添削> 風去りて夕焼け雲に明日想う
いい句です。秋の季語に「初嵐」「秋の嵐」があります。「嵐」と言うと秋を
イメージすると思うのでこのようにしてみました。「夕焼」は夏の季語です。
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5 湯上がりのほつれ毛なびく藍浴衣 ゆづき
いい句です。温泉情緒のただよう光景。
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6 モッコクの香り満つたる法の庭 媛 香
<添削> モッコクの香り満つたる寺の庭
「法の庭」がよく分からないのでこのようにしてみました。
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7 虫の声夢うつつ聞く子守唄 石の花
<添削> 古里の虫の声聞く夢うつつ
「聞く」が虫の声と子守歌両方にかかります。
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8 公園の賑わい去りて新学期 竹 豪
<添削> 公園の賑わい去りぬ休暇明
「進学」「入学」は春の季語です。このようにしてみました。
「休暇明」は秋の季語。
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9 星くずに願いを込めて笹飾り ゆづき
<添削> 短冊に願ひを込める星祭
私の歳時記には「笹飾り」はありません。このようにしてみました。
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10 年年の日記めくり見る残暑かな まこと
<添削> 年年の日記をめくる残暑かな
中八です。見るを言わなくても分かります。
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11 落ち蝉の曲げたる足の無念かな そらまめ
<添削> 落ち蝉の足曲がりゐる日暮時
「無念かな」は言い過ぎです。
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12 今日の月連れてホテルに遅れ着く コスモス
<添削> 今日の月連れてホテルに着きにけり
「遅れ着く」は言い過ぎになるので替えてみました。
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13 敬老会見つけてもらった古えくぼ 楓 花
<添削> 古えくぼ見つけてもらふ敬老日
「敬老の日」「敬老日」は季語ですが「敬老会」が季語かどうか。中八になり
ます。歳をとり分かりにくくなっていた笑窪を見つけてもらって話が弾む。
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14 伊予路行く山裾までに虹は大 媛 香
<添削> 奥伊予の湖から山へ虹の橋
調子がよくないのでこのように詠んでみました。考えてみてください。
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15 湯上がりのお茶一服秋すだれ 哲 朗
<添削> 湯上がりのお茶を一服秋すだれ
中六を直しました。いい句です。湯上がりのお茶は格別美味しい。
情緒があります。
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16 秋風とひとつになりて能を舞う 哲 朗
<添削> 秋風の中に能を舞ふ史跡園
私は「秋風とひとつになりて」がよく分かりません。このように詠んでみました。
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17 白萩を一束持ちて母のもと  泉 
<添削> 白萩を束ねて母を訪ひにけり
やや説明的なので断定的に詠んでみました。
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18 秋日ざし古き世慕う絵画展 峰 生
<添削> 秋の日の古き世慕ふ絵画展
季語を替えてみました。いい句です。絵画展を見て昔をしのぶ。
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19 戌年の二百十日の釣り日和 さつき
<添削> 職退くや二百十日の釣日和
何を言いたいのかよく分かりません。このように詠んでみました。
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20 坪庭も季節がくれば虫の声 石の花
<添削> 四五人の友と狭庭の虫の声
当たり前の句で情景が今一つ。このように詠んでみました。
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21 秋の蚊の余命を察知つきまとう さつき
句意がよく分かりません。悪しからず。
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22 川べりにひっそりと咲く萩の花 菜の花
素直ないい句です。可憐な「萩の花」が効いている。
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23 隣家の風鈴ゆれておりにけり ゆづき
<添削> 隣家の風鈴揺れておりにけり
いい句です。省略された簡明な句ですが、情景はよく分かります。「ゆれる」は
「揺れる」と漢字をつかいましょう。
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24 葉の真中おんぶバッタの一休み いなご
<添削> 葉の影に精霊ばった休みをり
原句ですと意味がよく分かりません。このように詠んでみました。
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25 広告の分厚き新聞秋の風 初 霜
いい句です。最近の新聞は重たい程広告が入っています。広告が多いほど
景気がいいと言います。秋の風が爽やか。中八ですが新聞と名詞なので
許されます。
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26 実りきて田畦の案山子忙しそ  泉 
<添削> 道化師の案山子のはしゃぐ上天気
「畦」とは田と田の間に土を盛り上げて境としたものです。「田畦」とはいかがな
ものでしょう。「実り」「田畦」「案山子」は付き過ぎです。「案山子」にしぼって
詠んでみました。
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27 雨の日や結びては落つ芋の露 いなご
<添削> 雨の日の結びて落つる芋の露
「雨の日や」と「やで切る」のはどんなもんでしょう。このように詠んで
みました。
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28 颱風の発生気にして旅企画 石の花
<添削> 旅プラン練る颱風を気遣ひて
中八です。調子がよくないのでこのように詠んでみました。
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29 ジェット機が黄金色して雲に消ゆ 菜の花
<添削> 雲に消ゆジェット機黄金色をして
原句ですと説明的なので、下五を上にもってきて、このよう詠みました。
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30 爽やかや今日のシーツの白きこと 初 霜
いい句です。秋晴れで爽や。洗濯したシーツは特別白く感じる。
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31 草むしるコオロギ鳴きて手を休む 浩 風
<添削> こほろぎのころころ四人姉妹にて
「草むしる」「コオロギ」は付き過ぎ。また手を休むは説明になります。
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32 下校児の列の乱るる赤とんぼ まこと
いい句です。赤とんぼが乱舞する。児童の列もばらばら。
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33 お中元贈りもしない来もしない 千 柳
例句:高々と持ち上げてみるお中元・・・・山崎明日香
俳句は感動を物に託して詠むものです。うまく添削できないので例句をだして
おきました。
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34 髪少し伸ばしてみたき今朝の秋 楓 花
いい句です。爽やかな秋。少しおしゃれをして出かけてみたくなる。
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35 虫の声思わず便箋取りいだし 初 霜
いい句です。思いがけなく虫の声を聴き思わず便箋を取り出してしたためる。
それは母に送る手紙か。
中八になりますが、この場合は便箋と名詞ですから許されます。
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36 あの家も住む人絶ゆや酔芙蓉 峰 生
いい句です。空家になったが酔芙蓉は咲き続ける。「酔芙蓉」が
よく効いています。
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37 畦道を真っ赤に染めて彼岸花 菜の花
昨年九月に投句されています。
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38 胡瓜蔓役目終えて火葬場へ 竹 豪
中六になっています。句意がよく分かりません。悪しからず。
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39 血圧を計る遠くに法師蝉 彰 子
私の句です。爽やかな秋になると法師蝉がさかんに鳴きしきる。
健康管理をしっかりやっていつまでも元気でいたい。
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40 野に池に露草色のやさしかな  泉 
<添削> 露草の露ひかりゐる今朝の風
句意がよく分かりません。このように詠んでみました。
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41 文殊院に身支度直す秋遍路 コシモス
いい句です。歩き遍路でしょうか、身支度を直し新たな気持ちで出立つする。
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42 秋草を活けて介護の手を休め さつき
<添削> 秋草を活ける介護のひとときに
原句ですとやや説明的になるのでこのように詠んでみました。
(参考)秋の花に関する季語に「秋草、秋の草、千草、草の花、花野」などが
あります。
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43 台風がそれてテレビのメロドラマ 千 柳
いい句です。台風がそれて良かったですね。好きなメロドラマを
くつろいで見る。
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44 秋なすの浅漬けうまし妻のゐず 浩 風
<添削> 秋茄子の浅漬けうまし妻の留守
いい句です。自作の秋茄子でしょうか。秋茄子の浅漬けは私も大好きです。
下五は「妻の留守」でどうでしょうか。
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45 胸底に波音ひびく夜長かな 彰 子
私の句です。私の実家は海の近くにあります。波音を聞きながら母が
夜なべしていたのを思い出します。
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46 丹精の菊の蕾の見えそむる まこと
<添削> 今朝も見る菊の蕾のふくらみて  
説明になります。丹精を言わなくても、添削句で丹精に育てていることは
よく分かります。
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47 虫刺され泣かぬぞ男児ブドウ狩り 峰 生
<添削> ぶどう園刺されて泣かぬ男の児
「虫」は秋の季語です。「虫刺され」はどうでしょうか?また「葡萄狩り」とか
「林檎狩り」といった季語はありません。考えてみてください。
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48 月の道手押し車の母に添う コスモス
いい句です。月明かりの道をあてどころなく母に寄り添って歩く。
親孝行はできる間にしたいものです。
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49 閉校の碑やかなかなの鳴きしきり 彰 子
私の句です。古里の中学校が閉校になり、立派な記念碑が建つ。
佇み昔を偲んでいるとかなかなが盛んに鳴いている。
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50 雷鳴が遠ざかりゆきまどろみぬ 千 柳
<添削> 雷鳴が遠ざかりゆく山の宿
「まどろみぬ」と言うと説明になるのと具象性に乏しいので省略してみました。
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51 句集読む夜も更けゆき虫集く 媛 香
<添削> 句集読む夜も更けゆくや虫集く
いい句です。句集を熱心に読んでいる。ふと虫の声が聞こえてくる。
句集を閉じてしばし聞き入る。
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52 稲妻の秒かずえてオホ近い そらまめ
<添削> 稲妻の間近や妻と目をあわす。
中六になっています。句意がやや不明。
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53 街角にパン焼く匂い天高し 哲 朗
いい句です。食欲の秋です。急にお腹が空いてくる。
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54 独り子のよちよち歩き草の花 楓 花
いい句です。よちよち歩きをそっと見守っている。季語の「草の花」がいい。