平成18年10月1日〜平成18年10月20日 投句分
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互 選 句
第 22 回 披 講
         10月分の添削と寸評
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 仲秋の名月も過ぎ、稲刈りもすっかり終わって秋も深まってきました。
紅葉もこれからが本番です。
しかし、季語の分類では陽暦の11月から冬になります。
 私流の添削と寸評をしていますが、このことについて以前にも言った
かも知れませんが、お話しておきます。私は俳句結社「糸瓜」に20年
所属し、篠崎圭介主宰の指導を受けました。したがってその考え方
に基づいて添削と寸評をしています。その内の2,3を言いますと
 @ 実感したことを自分の言葉で素直に簡明に表現する。
 A 原則として歴史的かなずかいを使う。 (旧かなずかい)
 と言うことです。どうぞ了承のほどお願います。
 今月もいい句が沢山ありました。
少しは精だしながら楽しく俳句をやりましょう。
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番号     添  削  と  寸  評 俳 号
1 ビル谷間里芋畑の畝のあり 初 霜
<添削> 芋の葉の露の重たきビル谷間
 原句ですと説明になり調子がよくないのでこのように詠んで
みました。「芋」は里芋、「藷」は甘藷のことを言います。
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2 秋祭り小舟寄り添う船御幸 浩 風
<添削> 船御幸に小舟寄り添ふ秋祭
 「秋祭」と名詞切れになると調子がよくないので上五を下五に
もってきてみました。「秋祭」と名詞のときは送りかなはいり
ません。
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3 運動会喚声とどく畑仕事 まこと 
<添削> 畑打つや喚声上がる運動会
 調子がよくないので上五を下五にもってきました。
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4 大雪(たいせつ)の山を彩る七竈(ななかまど)  泉 
 大景を詠んだ、いい句です。七竈の紅葉が実に見事。
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5 秋祭り男の熱気たぎる朝 ゆづき
<添削> 若衆の熱気のたぎる秋祭
 調子がよくないので、上五を下五にもってきました。
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6 水族館いるかのショウに眠りいて 初 霜
 句意がよく分かりません。悪しからず。
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7 農業祭秋蚕に集ふ子らの笑み まこと
<添削> 農業祭の秋蚕に子等の集ひをり
 「笑み」は省略してみました。子供はいろいろな表情をしていると
思いますが、それは読者にまかせます。
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8 麦秋の枯れ田に野草ちらほらと 石の花
 いい句です。よく観察されています。まもなく田植えで忙しくなる。
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9 トンネルを抜けて消えゆく霧の中 哲 朗
<添削> 朝霧やトンネルを行く一両車
 句意がよく分からないのでこのように詠んでみました。
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10 竹馬の大き歩幅や天高し 彰 子
 私の句です。竹馬乗りに自慢していた子供のころを思い出す。
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11 月影に落ちる涙のひとしづく  泉 
 句意がよく分かりません。悪しからず。
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12 篝火や月愛でる人河川敷 媛 香
<添削> 望の夜の篝火照す河川敷
 調子がよくないのでこのように詠んでみました。
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13 露天風呂にひとりかりがね渡りをり 彰 子
 私の句です。 大きな露天風呂に一人くつろぐ幸せなひととき。
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14 晩秋の空冷ややかに湯屋に着く 石の花
<添削> 月光のそぞろに寒きいで湯町  
 「晩秋」「冷ややか」は秋の季語です。
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15 木犀が散歩の道を遠くする 千 柳
<添削> 木犀の香に誘はるる遠出かな
 原句は抽象的なので、断定的に詠んでみました。
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16 萩まつり野点一服笹団子 媛 香
<添削> 笹団子美味し白萩咲きこぼれ
 「萩まつり」「野点一服」「笹団子」と言い過ぎていて説明になります。
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17 太鼓台花の口上高らかに 浩 風
<添削> 秋晴や大房揺るる太鼓台
 「太鼓台」が季語になるかどうか。大歳時記にはのっていません。
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18 木犀のかたまり咲きて金深し いなご
<添削> 木犀の香りや月の昇り初む
 「咲き」は省略しました。
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19 牛啼くや開拓村の秋日和 彰 子
 私の句です。 大野ヶ原でののどかな光景。搾りだちの牛乳が美味い。
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20 不器用に妻の分まで林檎剥く 哲 朗
 いい句です。病弱で不自由な奥様でしょうか。奥様のために慣れない
手つきで林檎を剥く。夫婦愛。
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21 干し柿に指を触れみて頷きぬ 千 柳
<添削> 干柿に指を触れゐる親子かな
「頷きぬ」は省略したい。親子で毎日食べごろを確かめる。
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22 秋祭り我は病で床に伏す 初 霜
<添削> 病床に伏して見つむる祭獅子  
具象性にかけるのでこのように詠んでみました。
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23 新聞の落ちてまた鳴くちちろかな まこと
句意がよく分かりません。悪しからず。
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24 お団子を児等と丸めて初芋煮  楓 花
<添削> 大鍋に児等つつき合ふ初芋煮 
「お団子」「芋煮」でどちらか省略したい。子等の様子を詠んでみ
ました。
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25 有難き稲穂の波や風わたる 峰 生
<添削> 美しき稲穂の波の宇和盆地
「稲穂の波」「風わたる」は付き過ぎ。「有り難き」と気持ちを直に
言わない方がいい。
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26 ボートこぐ高千穂峡に紅葉浮く そらまめ
<添削> ボート漕ぐ高千穂峡の照紅葉
「紅葉浮く」を「照紅葉」に替えてみました。動詞はなるべく
ない方がいい。
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27 句作りのスランプ癒す虫の声 ゆづき
 いい句です。誰でもスランプはあります。虫の声に励まされて
めげずに句作りに精出しましょう。
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28 足湯するそっと横目で大根足 竹 豪
<添削> 秋気澄む大根足の足湯かな
 季語がありません。考えてみてください。
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29 薯掘の子等の歓声空真青 いなご
<添削> 薯掘の歓声あがる晴天下
 調子がよくないのでこのように詠んでみました。子等と言わなく
ても情景は分かると思います。
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30 佐用姫もかくや夕映え草ひばり  峰 生
* 松浦佐用姫の伝説から……
 いい句です。「草ひばり」はコオロギ科の昆虫で澄んだ声で、草の間
を鳴き続ける。いい情景をかもしだしています。この句のように添え
書きをつけてください。
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31 特攻の遺書に涙す知覧の秋 そらまめ
<添削> 特攻の遺書に涙す秋燕  (知覧にて)     
 いい句ですが、「知覧の秋」が気になります。
 例えばこのように詠んで添え書きとして「知覧にて」とするといいと
思います。
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32 運動会子供とともに眼が走る 千 柳
<添削> 幼子を両手に走る運動会
 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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33 病む友を団扇の町に見舞ひけり 楓 花
 いい句です。「団扇の町」とは丸亀のことでしょうか。久しぶりに
友を見舞って励ます。友は大変喜んだことでしょう。
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34 芋の露右往左往に光りけり 哲 朗
 いい句です。情景をよくとらえられています。
<添削> 芋露の右往左往に光りけり
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35 手のひらに受けてこぶりの名残茄子 浩 風
 いい句です。大事に育てた茄子への愛情が伝わってきます。
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36 妻と掘る腰痛忘れて芋の秋 そらまめ
<添削> 腰痛を忘れて妻と芋を掘る
 中八です。「芋の秋」は「芋の収穫の頃」を言います。そこで
このように詠んでみました。
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37 秋空に尾根の風車は水平に さつき
 私には句意がよく分かりません。悪しからず。
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38 天高しかわるがわるに望遠鏡 いなご
 具象性が今ひとつのように思いますが、いい句です。絶景に、
望遠鏡を早く早くと奪い合う。
<添削> 山粧ふかわるがわるに望遠鏡
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39 月冴えて人それぞれにさびれ街 峰 生
 私には句意が今ひとつ分かりません。悪しからず。
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40 朝夕は冷たくなるもまだ夏日 竹 豪
 「冷たい」は冬の季語で、季重ねになります。考えてみてください。
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41 満月に肩組み合って千鳥足 菜の花
 いい句です。楽しい月見でしたね。花より団子ではないですが、
月よりお酒でしたね。気をつけてお帰りください。
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42 芋煮会笑い皺など気にせずに さつき
 いい句です。色気より食い気。満腹に満足。
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43 無農薬の添え書きありて店無人 コスモス
<添削> 無農薬の抜菜の並ぶ無人店
 季語がありません。「抜菜」は秋の季語。
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44 雲の秋茜色して海に落ち  泉 
 「秋の雲」は季語ですが、「雲の秋」という季語はありません。
考えてみてください。
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45 早咲きの椿一輪愛おしく 菜の花
<添削> 早咲きの椿一輪今日も晴れ
 気持ちはなるべく直に言わないほうがよいのです。
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46 獅子頭取れば童顔里祭 コスモス
 いい句です。勇壮に踊っていたのは意外にも子供だった。
驚きとともに感心する。
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47 金木犀気が付けば匂ひ誕生日 媛 香
<添削> 木犀の匂ひひろごる誕生日
中八になっています。調子がよくないのでこのように詠んでみました。
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48 夕焼けを引っ張ってきた鰯雲 楓 花
<添削> 夕焼けを引っ張ってきた鰯雲
 「夕焼け」は夏の季語。「鰯雲」は秋の季語です。原句は少し強引
だと思います。
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49 浅間山晴れて秋色駈け下りる コスモス
 いい句です。高い山は紅葉の変化が激しい。見事な紅葉に見とれる。
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50 天高し八千代をめざす紀元杉 さつき
 いい句です。屋久杉は千年越えてはじめて屋久杉というそうです。
生命力の尊厳を感じます。
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51 十六夜の月に魅せられシャッター押す なのはな
<添削> 奥伊予のいざよふ月を写しけり 
 俳句は感情をできるだけ言わないで、余韻を残して詠むのです。
そして読む人がいろいろ想像するのです。
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52 露天風呂肌に冷たき風の中 石の花
<添削> 混浴の冷たき風の露天風呂
 「露天風呂」の句は説明になったり、当たり前の句になったりして
作りにくいものです。
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53 ころころとこほろぎ鳴きて秋を知る 竹 豪
<添削> ころころとこほろぎ鳴くや北の宿
 「こほろぎ」「秋」と季重ねです。
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54 水澄て魚がもどりしみずもかな ゆづき
<添削> 水澄や魚群ごる日暮れどき
 「水」「魚」「みずも」と共通したものが並びます。省略しましょう。