1 2 月 添 削 と 寸 評 |
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早いもので若草句会が発足してから2年目の年も終わろうとして |
います。皆さまの熱意に支えられて今日まで楽しく過ごすことが |
できました。これは山岡さんが手間のかかるシステム管理をきちっと |
していただいているお陰でもありここに深く感謝申し上げます。 |
よろしければもう1年、今までどうりの方法でやりたいと思っています。 |
ご意見があれば私までお寄せ下さい。 |
今月はいつもよりいい句が沢山ありうれしく思っています。 |
来年もよいお年でありますよう祈念申し上げます。 |
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番号 |
投 句 の 添 削 & 寸 評 |
1 |
日本丸凛々しい勇姿無事祈る |
菜の花 |
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<添削> 年の瀬や勇姿凛々しい日本丸 |
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季語がありません。「無事祈る」と言わなくても「無事祈る」気持ちは伝わると |
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思います。俳句はなるべく思いを直接述べないで読み手の思いにまかせます。 |
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2 |
持ち歌を一つこなして忘年会 |
まこと |
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いい句です。忘年会はいつもの持ち歌を唄う。結構人気があり、いい気分 |
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になる。来年もいい年でありますように。 |
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3 |
明けぬればほのと紅葉の浮かび出る |
千 柳 |
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私には句意が今ひとつよく分かりません。悪しからず。 |
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4 |
大鍋の汁のこぼるる大根焚 |
いなご |
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<添削> 大鍋の吹きこぼれゐる薩摩汁 |
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「大根焚」は十二月九・十日の京都市了徳寺の行事のことです。 |
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「煮大根」という季語がありますが用途による区別。このように |
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詠んでみました。おいしそうですね。 |
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5 |
足病みて初めて夫と日向ぼこ |
さつき |
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いい句です。日頃夫と一緒に日向ぼこをしたことはないが、足を病み |
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初めて夫と並んで日向ぼこをする。思いやりのある夫に感謝する。 |
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6 |
くくくくと折れ枯蓮や土の色 |
媛 香 |
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<添削> くくくくと折れ枯蓮や日が沈む |
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「土の色」は説明になるので省きたい。そこでこのように詠んでみました。 |
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7 |
秋空に白黒冴える天守閣 |
竹 豪 |
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<添削> 秋空に装い新たなる天守 |
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「白黒冴える」は情緒がないので、このように詠んでみました。 |
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8 |
イヤリング深紅と決めて忘年会 |
楓 花 |
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いい句です。ルビーのイヤリングでしょうか。輝いています。華やいだ |
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気分で忘年会に出かける。 |
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9 |
年暮るる生命線を見詰めをり |
彰 子 |
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私の句です。今年も終わる。来年は卒寿になる。生命線を眺め病み |
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がちな体でよくここまで長生きしたものだとつくづく思う。 |
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10 |
欠礼の便り眺める師走かな |
石の花 |
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<添削> 欠礼の便り眺める師走かな |
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いい句です。今年はいつになく欠礼のはがきが多くありました。 |
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欠礼の便りを眺め想いをめぐらすのである。 |
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11 |
大安日ジャンボ宝くじ師走かな |
媛 香 |
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<添削> 宝くじに夢を託する師走かな |
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大安日|ジャンボ宝くじ|師走|と三段切れになります。また中八に |
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なっています。 |
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ジャンボ宝くじに億万長者の夢を託すのである。実現するといいですね。 |
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12 |
猫の手も借りたい暮れの障子張り |
石の花 |
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いい句です。「障子張り」は障子貼り」です。本当に年末は忙しいですね。 |
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13 |
杉苔にフワリ載りたる散紅葉 |
そらまめ |
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いい句です。風情がありますね。 |
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<添削> 杉苔にふわり載りたる散紅葉 |
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14 |
並木路を染めて銀杏の散り急ぐ |
千 柳 |
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いい句です。並木路は銀杏の葉で黄色に染まる。目が |
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覚めるようにきれいですね。 |
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<添削> 並木路を染める銀杏の散り急ぎ |
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切れが弱いので「染める」と軽く切ってみました。 |
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15 |
大銀杏黄金に染めて秋の空 |
ゆづき |
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<添削> 銀杏黄葉蹴散らし電車曲がりいく |
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「大銀杏黄金に染めて」「秋の空」と季重ねのようになります。そこで |
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このように詠んでみました。 |
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16 |
壁色に迷う我が家や十二月 |
浩 風 |
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<添削> 壁色に迷う我が家や笹子鳴く |
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詩情あるいは具象性に欠けるように思いますので、このように詠んで |
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みましたが、どんなもんでしょうか。 |
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17 |
夫婦してホットミルクや初時雨 |
楓 花 |
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いい句です。安らぐひととき。いつまでも仲良く。 |
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18 |
スクランブル行き交う人の師走かな |
まこと |
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いい句です。師走ともなるとスクランブルを行き交う人も何かしら気ぜわ |
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しそう。事故のないように。 |
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19 |
早朝に霧笛響く瀬戸海峡 |
媛 香 |
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<添削> 早朝に霧笛の響く寺の町 (尾道にて) |
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「瀬戸海峡」という言葉はありますか。また中六になっています。 |
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「霧笛」「海峡」は付き過ぎるのでこのように詠んでみました。 |
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20 |
初しぼりあと幾とせと指を折る |
千 柳 |
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「初しぼり」は何のことでしょうか。季語にはないように思いますが。 |
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考えてみてください。 |
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21 |
全山の紅葉映してダム眠る |
コスモス |
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いい句です。ひっそりと静まりかえったダム。全山の紅葉を映して美しい。 |
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22 |
年の瀬やトラベーターを大股で |
哲 朗 |
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いい句です。平凡な句ですが、年の瀬のあわただしい気分を素直に |
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詠んでいると思います。 |
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23 |
どっこいしょ同時で可笑しすす払い |
峰 生 |
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おもしろい句ですね。年をとってくるとよく「どっこいしょ」と言って |
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立ち上がりますがそれが同時だったという可笑しさ。 |
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<添削> どっこいしょと同時で可笑し煤払ひ |
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24 |
白装束紅葉に映ゆる高野山 |
泉 |
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<添削>1 高野の紅葉に映ゆる白装束 |
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<添削>2 高野山の紅葉に映ゆる白装束 |
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<添削>1 「高野」と言えば「高野山」の略。「白装束」は六音ですが、 |
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名詞のときは許されます。 |
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<添削>2 七七五にしてみました。 |
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25 |
父漬けし酒なつかしや花梨の実 |
楓 花 |
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「花梨の実」は砂糖漬けや果実酒にするようです。「漬ける」とは |
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「水に漬ける」とか「漬け物」のことを言います。句意がよく分かりません。 |
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考えてみてください。悪しからず。 |
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26 |
年賀状の印刷終わりホッとする |
菜の花 |
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<添削> 年賀状の印刷終はる鳥の声 |
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俳句は感情を直に言わないで物に託して詠むものです。「ホッとする」 |
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を「鳥の声」に替えてみました。 |
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27 |
石鎚の白銀染めて初茜 |
ゆづき |
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<添削> 石鎚の間近に見ゆる初茜 |
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原句ですと説明になるのでこのように詠んでみました。 |
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28 |
富有柿の熟るるを待ちて鳥来る |
竹 豪 |
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<添削> 富有柿のたわわに実る留守の家 |
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原句ですと説明的になり、また言い過ぎているのでこのように |
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詠んでみました。 |
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29 |
吊し柿耳たぶほどのやわらかさ |
いなご |
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<添削> 干柿の耳たぶほどになりにけり |
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切れが弱いのと説明になるのでこのように詠んでみました。 |
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30 |
落葉踏む音そこにあり朝の道 |
哲 朗 |
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<添削> 落葉踏む音のつきくる古墳山 |
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「落葉踏む」「道」は付き過ぎ。また調子がよくないのでこのように |
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詠んでみました。 |
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31 |
伊佐爾波の木々の彩り秋ふかし |
ゆづき |
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<添削> 秋深し一山風の音ばかり |
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「伊佐爾波」では分かりません。秋ふかし」は「秋深し」としました。 |
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32 |
草ひきの背中に夕日モズが鳴く |
そらまめ |
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<添削> 草取りの背中に夕日や鳥の声 |
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<添削> 落日の背中を染める鵙の声 |
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「草取り」「草ぬしり」という夏の季語があり「草ひき」はどうかなと思います。 |
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「鵙」は秋の季語です。 |
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33 |
蘭の花新築祝届きけり |
浩 風 |
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<添削> 胡蝶蘭とどく新築祝ひにと |
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「蘭」と言えば「蘭の花」のことです。調子がよくないのでこのように詠んで |
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みました。 |
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34 |
仏壇の母にしきびと菊も添え |
竹 豪 |
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<添削> 仏壇の母に手折りし千代見草 |
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「樒に花」は季語になり、紛らわしいのでこのように詠んでみました。 |
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「千代見草」は菊の異名。 |
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35 |
賀状書く君の笑顔を想ひつつ |
泉 |
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いい句です。彼女への賀状でしょうか、賀状を書くのも楽しく心が弾む。 |
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微笑ましい。 |
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36 |
苦吟中柚子湯が呼ぶも生返事 |
峰 生 |
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句意が今ひとつ分かりません。悪しからず。 |
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37 |
12月投句終えたる安堵かな |
いなご |
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いい句です。12月は師走といってなんとなく気ぜわしい。 |
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投句が終わってやれやれと思う。気持ちはよく分かります。 |
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38 |
金のなる木花のかんざしちりばめて |
菜の花 |
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季語がないように思いますが。 |
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39 |
年ごとの無情迅速口に出ず |
泉 |
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季語がありません。考えてみてください。 |
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40 |
咳き多き待合室の人となり |
さつき |
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<添削> 咳き多き待合室の姫だるま |
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句意が今ひとつはっきりしないのでこのように詠んでみました。 |
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41 |
宝鐸の鳴る一山の底冷へに |
彰 子 |
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私の句です。吉備国分寺の五重の塔を拝して詠んだ句です。 |
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42 |
振り袖が携帯かざす紅葉狩り |
そらまめ |
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<添削> 振袖で携帯かざす紅葉狩 |
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「振袖」は着物のことで、「振袖がかざす」とは言わないのではない |
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でしょうか。 |
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43 |
返事来ぬ友は逝去と知る師走 |
浩 風 |
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いい句です。年をとってくると友人も一人二人と亡くなってゆき寂しい。 |
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いつまでも元気でいたいものです。 |
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44 |
澄む湖畔燃ゆる紅葉に故郷(くに)偲ぶ |
峰 生 |
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<添削> 故郷想ふ湖のほとりの紅葉燃へ |
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秋の季語に「水澄む」というのがあります。紛らわしいので省きました。 |
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45 |
救急車夜の師走に谺して |
哲 朗 |
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<添削> 救急車つづく師走の深夜にて |
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私は「救急車谺して」は無理があるように思いますのでこのように |
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詠んでみました。 |
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46 |
石山の石切る音や年の暮 |
彰 子 |
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私の句です。大島での句。石切る音が冴えわたる。感慨ひときり。 |
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47 |
奥院の紅葉且つ散る景極む |
コスモス |
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<添削> あかときの紅葉且つ散る奥の院 |
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「奥院」という言葉はありません。「奥の院」としましょう。「景極む」は |
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省略したい。その方が余韻があってよいと思います。 |
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48 |
旅人も愚陀仏庵の秋惜しむ |
さつき |
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<添削> 秋惜む愚陀仏庵の一升瓶 |
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「愚陀仏庵の秋惜しむ」について私はどうかと思うのでこのように詠んで |
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みました。 |
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49 |
娘の土産シーサー届く冬うらら |
まこと |
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<添削> 冬うららシーサー届く娘の土産 |
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「シーサー」とは沖縄土産の焼物の唐獅子像。亜熱帯の沖縄は冬でも |
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暖かい。調子がよくないので五七五を入れ替えてみました。 |
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50 |
年老いてテレビ楽しむ冬炬燵 |
石の花 |
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<添削> 年老ひてテレビ楽しむ切炬燵 |
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いい句です。春の季語に「春炬燵」というのがあります。「炬燵」は冬の |
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季語で「冬炬燵とは言いません。歳をとり体力も衰えてくると出無精に |
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なりがち。元気を」出して散歩でもしましょう。 |
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51 |
寺苑寂銀杏黄葉の散りつくす |
コスモス |
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<添削> 銀杏散りつくす寺苑のしばし寂 |
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「寺苑寂」で切れるのはどうかと思いましてこのように詠んでみました。 |
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