平成18年12月1日〜平成18年12月20日 投句分
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互 選 句
第 24 回 披 講
1 2 月 添 削 と 寸 評   
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早いもので若草句会が発足してから2年目の年も終わろうとして   
います。皆さまの熱意に支えられて今日まで楽しく過ごすことが   
できました。これは山岡さんが手間のかかるシステム管理をきちっと   
していただいているお陰でもありここに深く感謝申し上げます。   
 よろしければもう1年、今までどうりの方法でやりたいと思っています。   
ご意見があれば私までお寄せ下さい。   
 今月はいつもよりいい句が沢山ありうれしく思っています。   
 来年もよいお年でありますよう祈念申し上げます。   
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番号 投 句 の 添 削 & 寸 評
1 日本丸凛々しい勇姿無事祈る 菜の花
<添削> 年の瀬や勇姿凛々しい日本丸
季語がありません。「無事祈る」と言わなくても「無事祈る」気持ちは伝わると
思います。俳句はなるべく思いを直接述べないで読み手の思いにまかせます。
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2 持ち歌を一つこなして忘年会 まこと
いい句です。忘年会はいつもの持ち歌を唄う。結構人気があり、いい気分
になる。来年もいい年でありますように。
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3 明けぬればほのと紅葉の浮かび出る 千 柳
私には句意が今ひとつよく分かりません。悪しからず。
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4 大鍋の汁のこぼるる大根焚 いなご
<添削> 大鍋の吹きこぼれゐる薩摩汁
「大根焚」は十二月九・十日の京都市了徳寺の行事のことです。
「煮大根」という季語がありますが用途による区別。このように
詠んでみました。おいしそうですね。
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5 足病みて初めて夫と日向ぼこ さつき
いい句です。日頃夫と一緒に日向ぼこをしたことはないが、足を病み
初めて夫と並んで日向ぼこをする。思いやりのある夫に感謝する。
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6 くくくくと折れ枯蓮や土の色 媛 香
<添削> くくくくと折れ枯蓮や日が沈む
「土の色」は説明になるので省きたい。そこでこのように詠んでみました。
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7 秋空に白黒冴える天守閣 竹 豪
<添削> 秋空に装い新たなる天守
「白黒冴える」は情緒がないので、このように詠んでみました。
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8 イヤリング深紅と決めて忘年会 楓 花
いい句です。ルビーのイヤリングでしょうか。輝いています。華やいだ 
気分で忘年会に出かける。
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9 年暮るる生命線を見詰めをり 彰 子
私の句です。今年も終わる。来年は卒寿になる。生命線を眺め病み
がちな体でよくここまで長生きしたものだとつくづく思う。
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10 欠礼の便り眺める師走かな 石の花
<添削> 欠礼の便り眺める師走かな
いい句です。今年はいつになく欠礼のはがきが多くありました。
欠礼の便りを眺め想いをめぐらすのである。
11 大安日ジャンボ宝くじ師走かな 媛 香
<添削> 宝くじに夢を託する師走かな
大安日|ジャンボ宝くじ|師走|と三段切れになります。また中八に
なっています。
ジャンボ宝くじに億万長者の夢を託すのである。実現するといいですね。
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12 猫の手も借りたい暮れの障子張り 石の花
いい句です。「障子張り」は障子貼り」です。本当に年末は忙しいですね。
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13 杉苔にフワリ載りたる散紅葉 そらまめ
いい句です。風情がありますね。
<添削> 杉苔にふわり載りたる散紅葉
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14 並木路を染めて銀杏の散り急ぐ 千 柳
いい句です。並木路は銀杏の葉で黄色に染まる。目が
覚めるようにきれいですね。
<添削> 並木路を染める銀杏の散り急ぎ
切れが弱いので「染める」と軽く切ってみました。
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15 大銀杏黄金に染めて秋の空 ゆづき
<添削> 銀杏黄葉蹴散らし電車曲がりいく
「大銀杏黄金に染めて」「秋の空」と季重ねのようになります。そこで
このように詠んでみました。
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16 壁色に迷う我が家や十二月 浩 風
<添削> 壁色に迷う我が家や笹子鳴く
詩情あるいは具象性に欠けるように思いますので、このように詠んで
みましたが、どんなもんでしょうか。
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17 夫婦してホットミルクや初時雨 楓 花
いい句です。安らぐひととき。いつまでも仲良く。
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18 スクランブル行き交う人の師走かな まこと
いい句です。師走ともなるとスクランブルを行き交う人も何かしら気ぜわ
しそう。事故のないように。
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19 早朝に霧笛響く瀬戸海峡 媛 香
<添削> 早朝に霧笛の響く寺の町 (尾道にて)
「瀬戸海峡」という言葉はありますか。また中六になっています。
「霧笛」「海峡」は付き過ぎるのでこのように詠んでみました。
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20 初しぼりあと幾とせと指を折る 千 柳
「初しぼり」は何のことでしょうか。季語にはないように思いますが。
考えてみてください。
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21 全山の紅葉映してダム眠る コスモス
いい句です。ひっそりと静まりかえったダム。全山の紅葉を映して美しい。
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22 年の瀬やトラベーターを大股で 哲 朗
いい句です。平凡な句ですが、年の瀬のあわただしい気分を素直に
詠んでいると思います。
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23 どっこいしょ同時で可笑しすす払い 峰 生
おもしろい句ですね。年をとってくるとよく「どっこいしょ」と言って
立ち上がりますがそれが同時だったという可笑しさ。
<添削> どっこいしょと同時で可笑し煤払ひ
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24 白装束紅葉に映ゆる高野山  泉 
<添削>1 高野の紅葉に映ゆる白装束
<添削>2 高野山の紅葉に映ゆる白装束
<添削>1 「高野」と言えば「高野山」の略。「白装束」は六音ですが、
名詞のときは許されます。
<添削>2 七七五にしてみました。
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25 父漬けし酒なつかしや花梨の実 楓 花
「花梨の実」は砂糖漬けや果実酒にするようです。「漬ける」とは
「水に漬ける」とか「漬け物」のことを言います。句意がよく分かりません。
考えてみてください。悪しからず。
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26 年賀状の印刷終わりホッとする 菜の花
<添削> 年賀状の印刷終はる鳥の声
俳句は感情を直に言わないで物に託して詠むものです。「ホッとする」
を「鳥の声」に替えてみました。
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27 石鎚の白銀染めて初茜 ゆづき
<添削> 石鎚の間近に見ゆる初茜
原句ですと説明になるのでこのように詠んでみました。
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28 富有柿の熟るるを待ちて鳥来る 竹 豪
<添削> 富有柿のたわわに実る留守の家
原句ですと説明的になり、また言い過ぎているのでこのように
詠んでみました。
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29 吊し柿耳たぶほどのやわらかさ いなご
<添削> 干柿の耳たぶほどになりにけり
切れが弱いのと説明になるのでこのように詠んでみました。
30 落葉踏む音そこにあり朝の道 哲 朗
<添削> 落葉踏む音のつきくる古墳山
「落葉踏む」「道」は付き過ぎ。また調子がよくないのでこのように
詠んでみました。
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31 伊佐爾波の木々の彩り秋ふかし ゆづき
<添削> 秋深し一山風の音ばかり
「伊佐爾波」では分かりません。秋ふかし」は「秋深し」としました。
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32 草ひきの背中に夕日モズが鳴く そらまめ
<添削> 草取りの背中に夕日や鳥の声
<添削> 落日の背中を染める鵙の声
「草取り」「草ぬしり」という夏の季語があり「草ひき」はどうかなと思います。
「鵙」は秋の季語です。
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33 蘭の花新築祝届きけり 浩 風
<添削> 胡蝶蘭とどく新築祝ひにと
「蘭」と言えば「蘭の花」のことです。調子がよくないのでこのように詠んで
みました。
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34 仏壇の母にしきびと菊も添え 竹 豪
<添削> 仏壇の母に手折りし千代見草
「樒に花」は季語になり、紛らわしいのでこのように詠んでみました。
「千代見草」は菊の異名。
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35 賀状書く君の笑顔を想ひつつ  泉 
いい句です。彼女への賀状でしょうか、賀状を書くのも楽しく心が弾む。
微笑ましい。
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36 苦吟中柚子湯が呼ぶも生返事 峰 生
句意が今ひとつ分かりません。悪しからず。
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37 12月投句終えたる安堵かな いなご
いい句です。12月は師走といってなんとなく気ぜわしい。
投句が終わってやれやれと思う。気持ちはよく分かります。
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38 金のなる木花のかんざしちりばめて 菜の花
季語がないように思いますが。
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39 年ごとの無情迅速口に出ず  泉 
季語がありません。考えてみてください。
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40 咳き多き待合室の人となり さつき
<添削> 咳き多き待合室の姫だるま
句意が今ひとつはっきりしないのでこのように詠んでみました。
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41 宝鐸の鳴る一山の底冷へに 彰 子
私の句です。吉備国分寺の五重の塔を拝して詠んだ句です。
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42 振り袖が携帯かざす紅葉狩り そらまめ
<添削> 振袖で携帯かざす紅葉狩
「振袖」は着物のことで、「振袖がかざす」とは言わないのではない
でしょうか。
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43 返事来ぬ友は逝去と知る師走 浩 風
いい句です。年をとってくると友人も一人二人と亡くなってゆき寂しい。
いつまでも元気でいたいものです。
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44 澄む湖畔燃ゆる紅葉に故郷(くに)偲ぶ 峰 生
<添削> 故郷想ふ湖のほとりの紅葉燃へ
秋の季語に「水澄む」というのがあります。紛らわしいので省きました。
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45 救急車夜の師走に谺して 哲 朗
<添削> 救急車つづく師走の深夜にて
私は「救急車谺して」は無理があるように思いますのでこのように
詠んでみました。
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46 石山の石切る音や年の暮 彰 子
私の句です。大島での句。石切る音が冴えわたる。感慨ひときり。
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47 奥院の紅葉且つ散る景極む コスモス
<添削> あかときの紅葉且つ散る奥の院
「奥院」という言葉はありません。「奥の院」としましょう。「景極む」は
省略したい。その方が余韻があってよいと思います。
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48 旅人も愚陀仏庵の秋惜しむ さつき
<添削> 秋惜む愚陀仏庵の一升瓶
「愚陀仏庵の秋惜しむ」について私はどうかと思うのでこのように詠んで
みました。
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49 娘の土産シーサー届く冬うらら  まこと
<添削> 冬うららシーサー届く娘の土産
「シーサー」とは沖縄土産の焼物の唐獅子像。亜熱帯の沖縄は冬でも
暖かい。調子がよくないので五七五を入れ替えてみました。
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50 年老いてテレビ楽しむ冬炬燵 石の花
<添削> 年老ひてテレビ楽しむ切炬燵
いい句です。春の季語に「春炬燵」というのがあります。「炬燵」は冬の
季語で「冬炬燵とは言いません。歳をとり体力も衰えてくると出無精に
なりがち。元気を」出して散歩でもしましょう。
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51 寺苑寂銀杏黄葉の散りつくす コスモス
<添削>  銀杏散りつくす寺苑のしばし寂
「寺苑寂」で切れるのはどうかと思いましてこのように詠んでみました。