
| 1月分 添 削 と 寸 評 | ||
| 若草句会は三年目を迎えました。今年も皆さんと一緒に楽しく一歩 | ||
| づつ前進していきたいと思っていますのでよろしくお願いします。 | ||
| 今年も私なりの添削と寸評をします。勉強不足のためうまくできま | ||
| せんが、ご了承ください。 | ||
| 季語は俳句の中でもっとも大事なものです。「季語で勝負」と言われ | ||
| るぐらいです。季語は必ず歳時記でその意味よく理解してください。 | ||
| それから原則として季重ねは避けてください。 | ||
| 番号 | 添 削 と 寸 評 | 俳 号 |
| 1 | 夫の干す布団に深く陽の匂ひ | さつき |
| <添削> ふんわりと陽の匂ひゐる干布団 | ||
| あれこれ言わずにこのように詠んでみました。 | ||
| 2 | 庭先に仲間を見つけた木瓜(ぼけ)一輪 | そらまめ |
| 句意がよく分かりません。悪しからず。中八になっています。 | ||
| 3 | 初句会今年こそはと誓ふ我 | 泉 |
| いい句です。初句会でみんなに宣言する。心意気良し。頑張りましょう。 | ||
| 4 | 甲冑を纏い太刀振る初泳ぎ | さつき |
| 勇壮でいい句です。今年も大いに頑張りましょう。 | ||
| 5 | 遠山に茜さしゐる冬帽子 | 彰 子 |
| 私の句です。茜さす遠山を眺めながら来し方を思う。 | ||
| 6 | 晩学の俳句楽しむ去年今年 | いなご |
| いい句です。大いに俳句を楽しんでください。 | ||
| 7 | 空っ風落ち葉走らせ何処までも | ゆづき |
| <添削> 何処までも葉っぱ走らす空っ風 | ||
| 「空っ風」「落ち葉」は冬の季語で季重ねになります。 | ||
| また、空っ風|落ち葉走らせ|何処までも|と三段切れになり調子が | ||
| 悪くなります。 | ||
| 8 | 正月や鶴舞い降りし伊予の里 | 泉 |
| <添削> ゆるゆると鶴舞ひ降りし伊予の里 | ||
| 「鶴」は冬の季語で季重ねになります。また「正月」「鶴」は付き | ||
| 過ぎです。鍋鶴でしたか、珍しく伊予に飛来してきました。来年 | ||
| もやって来るといいですね。 | ||
| 9 | 富士明けて羽衣舞ふと初謡ひ | 峰 生 |
| いい句です。初謡で朗々と謡う。元気でいる幸せに感謝するとともに | ||
| 今年も頑張ろうと誓うのである。 | ||
| 10 | 瀬戸の峰鳥雲に入る風車かな | 石の花 |
| <添削> 鳥雲に入るや風車の十五連 | ||
| かな止めの場合は途中で切らないで始めから終わりまで一気に | ||
| 詠みます。「鳥雲に入る」は春の季語です。 | ||
| 11 | 稜線の待ちに待ちたる初日かな | 浩 風 |
| <添削> 石鎚の日の出を拝すお元日 | ||
| 気持ちが強すぎます。俳句の場合は気持ちを押さえて表現しましょう。 | ||
| 添削句でも原句の気持ちは十分伝わると思います。 | ||
| 12 | 幸せの鐘鳴り止まぬ初詣 | 哲 朗 |
| いい句です。「幸せの鐘」はしまなみ海道沿いにある鐘でしょうか。 | ||
| 鐘を撞くために大勢の人が並んで待っている。今年1年の幸せを | ||
| 込めて思いっきり撞く。 | ||
| 13 | 風化せる句碑の字なぞりて凍て返る | コスモス |
| <添削> 風化せる句碑の字なぞる春隣 | ||
| 中八になっています。「風化」と「凍て返る」は淋しいので季語を替えて | ||
| みましたがいかがでしょうか。 | ||
| 14 | 九つの児の読む歌留多たどたどし | 楓 花 |
| <添削> 少年の朗々と読む歌留多会 | ||
| 常套句になっていておもしろくないと思います。このように詠んで | ||
| みました。 | ||
| 15 | 下灘に水仙咲いたと友の便 | 竹 豪 |
| <添削> 水仙が咲いたと弾む妻の声 | ||
| 中八になっています。また地名は有名な地名以外は使わない方よい。 | ||
| 16 | 大凧や地上で操り宙に浮く | 媛 香 |
| <添削> 大凧の大歓声に舞い上がる | ||
| 情景が今ひとつはっきりしません。このように詠んでみました。 | ||
| 中八になっています。 | ||
| 17 | 戌走り亥を追いかけて除夜の鐘 | ゆづき |
| 景がよく分かりません。悪しからず。 | ||
| 18 | 乱立の風車をまわし風光る | 石の花 |
| <添削> 一連の風車まいゐる四温かな | ||
| 「風車」「風光る」は付き過ぎ。このように詠んでみました。 | ||
| 19 | 初詣おみくじ引いてはしゃぐ声 | 菜の花 |
| <添削> おみくじを引きてはしゃぐや初詣 | ||
| 調子がよくないので、上五を下五にもってきました。 | ||
| 20 | 子ら三人かわるがわるの破魔矢かな | まこと |
| いい句です。三人に一つの破魔矢。仲良くかわるがわるに持って帰る。 | ||
| 円満な家族の光景。 | ||
| 21 | 艀ゆく港にかもめ瀬戸の春 | 石の花 |
| <添削> 上げ潮の艀留まりの夜寒かな | ||
| あれこれ言い過ぎています。焦点をしぼり簡略化しましょう。 | ||
| 22 | 蛇口から若水迎え神棚へ | 千 柳 |
| <添削> 若水を汲む神鈴の鳴り響き | ||
| 「若水」とは元日の朝、初めに汲む水をいい、神聖な力を持つとして | ||
| 男の役目とされています。したがって蛇口からだと実感がでません。 | ||
| また「蛇口」「若水」は付き過ぎです。 | ||
| 23 | 訪れし大洲盆地に冬の霧 | 泉 |
| <添削> 母を訪ふ大洲盆地の冬の霧 | ||
| 「訪れし」では説明的になるのでこのように詠んでみました。 | ||
| 24 | 無言館届かぬ願い冬木立 | 媛 香 |
| 句意がよく分かりません。悪しからず。 | ||
| 25 | 一つある幸せ抱き今朝の春 | 楓 花 |
| <添削> 一つある幸せいだき筆初 | ||
| 具象にかけます。俳句は物に託して詠むものです。 | ||
| 季語を替えてみました。 | ||
| 26 | 母の忌や一年の微笑(えみ)返り花 | 媛 香 |
| 句意が今一つ分かりません。悪しからず。「母の忌」「返り花」は | ||
| 付き過ぎ。 | ||
| 27 | 冬ざるる砂丘や吾と妻の影 | 彰 子 |
| 私の句です。夕日が沈みゆく鳥取砂丘での句です。影が長く | ||
| 伸びていく、ちょとした感傷。 | ||
| 28 | 初雀鳩と睦みて餌を食む | コスモス |
| いい句です。元日の微笑ましい光景。 | ||
| 29 | 元気かと達筆で来る賀状かな | 浩 風 |
| <添削> 元気かと太字の母の年賀状 | ||
| 母は相変わらず元気そう。いつまでも元気でいてほしい。 | ||
| 30 | 書初めや融通無碍(むげ)の筆下ろす | さつき |
| 句意がよく分かりません。悪しからず。 | ||
| 31 | 電飾の役を終えたる冬木かな | コスモス |
| いい句です。今年も電飾の大役を果たし多くの人びとに喜ばれた。 | ||
| これからは大冬木となってしずかにこの冬を乗り切ろう。 | ||
| 32 | 茜さす庭に来ており初雀 | 哲 朗 |
| <添削> 茜さす庭に三羽の初雀 | ||
| 中七を替えてみました。この方がより具象性がでると思います。 | ||
| 33 | 汗みどろ切磋琢磨の寒稽古 | 峰 生 |
| <添削> 少年の汗みどろなる寒稽古 | ||
| 「汗みどろ」「切磋琢磨」「寒稽古」は言い過ぎです。「切磋琢磨」を省略 | ||
| しました。「汗」は夏の季語ですが、「寒稽古」が強いので許されます。 | ||
| 34 | 花鰹雑煮の上でイナバウワ | 千 柳 |
| いい句です。花鰹がイナバウワとは面白いですね。現代的俳句です。 | ||
| 35 | 蝋梅の香がふとうれし庭を掃く | 峰 生 |
| <添削> 蝋梅のかをりや土塀崩れゐて | ||
| 俳句では「うれし」と思いを直接言わないで読む人にまかせるのです。 | ||
| 36 | 鬼瓦どっかと座るお元日 | 彰 子 |
| 私の句です。鬼瓦も清々しい気分で正月を迎える。 | ||
| 37 | 冬凪の水面に揺れるマストかな | そらまめ |
| <添削> 冬凪にマストゆうらりゆらりかな | ||
| 「凪」に「揺れる」はどうかと思いましてこのように詠んでみました。 | ||
| 38 | 寒空に星を見つめて句をひねる | 菜の花 |
| 素直ないい句です。熱心ですね。いい句ができましたか。風邪をひかない | ||
| ように気をつけてください。 | ||
| 39 | 干し魚の一つ一つに空っ風 | まこと |
| 「干し魚」「空っ風」は付き過ぎかなと思いますが、いい句です。 | ||
| 細やかな気遣いが伝わってきます。 | ||
| 40 | 初稽古帯締めぎゅっと結びけり | いなご |
| <添削> 黒帯をしっかと結ぶ初稽古 | ||
| 柔道の帯は「帯締め」とは言わないのではないでしょうか。 | ||
| 上五を下五にもってきました。今年も頑張りましょう。 | ||
| 41 | 爺ちゃんが見直されたる独楽廻し | 楓 花 |
| いい句です。爺ちゃんの得意満面の顔が見えるようです。 | ||
| 42 | 数聞きて支度始める雑煮かな | いなご |
| いい句です。みんなに食べる餅の数を聞いてから雑煮をつくる | ||
| と言う、どこの家庭でも見かける情景。 | ||
| 43 | 夕焼けに慌てたカメラ間に合わず | 竹 豪 |
| <添削> シャッターをしきりに切るや寒夕焼 | ||
| 詩情に欠けると思います。「夕焼」は夏の季語なので替えてみました。 | ||
| 44 | 年の瀬にホッカイロ貼って墓掃除 | 菜の花 |
| <添削> 年の瀬にホッカイロ貼って墓掃除 | ||
| 中八です。「年の瀬」「かいろ」は冬の季語「墓掃除」は秋の季語です。 | ||
| 考えてみてください。 | ||
| 45 | どんどの火願ひの紙を舞ひ上ぐる | 浩 風 |
| <添削> 願ひ文舞ひ上がゐるどんどの火 | ||
| 原句ですとやや説明的になるので上五を下五にもってきました。 | ||
| 勢いよく燃え上がるどんどが見えてくるようです。 | ||
| 46 | 御降りやわがふる里を包みけり | まこと |
| <添削> 御降りやむらさき深む豊後灘 | ||
| 「や、けり、かな」は強い切れ字です。二つ使うのは止めましょう。 | ||
| 47 | 水仙の匂い香し灘の海 | そらまめ |
| <添削> 海鳴りのしてゐる水仙匂ひゐて | ||
| 「灘の海」ではどこか分かりにくいと思います。 | ||
| 48 | 山茶花の散りて吾が庭赤く染め | 竹 豪 |
| <添削> 山茶花の散りばむ鐘の遠くより | ||
| 説明的なのでこのように詠んでみました。 | ||
| 49 | そっと手を火鉢に当たり列車待つ | 哲 朗 |
| <添削> 汽車待つや一人で当たる大火鉢 | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 50 | 年頭の誓いはお屠蘇までのもの | 千 柳 |
| <添削> 年頭の誓いはお屠蘇までのもの | ||
| 「年頭」「屠蘇」は新年の季語で季重ねになります。 | ||
| 考えてみてください。 | ||