
| 4 月 分 添 削 と 寸 評 | ||
| 5月になります。私は1年のうち5月が一番好きです。5月は | ||
| いろんな花が咲き、自然の色彩も大きく変化して、生き生き | ||
| としてきます。人間が活動するのにもっともいい月です。 | ||
| したがって自然を詠む俳句にとっても一番いい月だと思います。 | ||
| 人生いきいきと生きると共に俳句も夢と希望をもって少しでも | ||
| 精進していきましょう。 | ||
| 今月もいい句が沢山あり大変うれしく思っています。 | ||
| いつものように私なりの添削と寸評をします。参考までに。 | ||
| 番号 | 投 句 の 添 削 と 寸 評 | 俳 号 |
| 1 | 春海を背に表彰台に向かう友 | 菜の花 |
| 「春海」という季語はありません。考えてみてください。 | ||
| 2 | 初耳の初恋のこと沈丁花 | 楓 花 |
| <添削> 初恋を初めて聞くや沈丁花 | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 3 | 沈丁花かほり豊かに誘われて | 泉 |
| <添削> 沈丁に誘はれ上る石の階 | ||
| 「沈丁花」はかほり豊かな花です。したがって「かほり豊か」は言い過ぎです。 | ||
| 4 | シクラメン門口飾り友を待つ | 石の花 |
| <添削> 友待つや門口飾るシクラメン | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 5 | 暮れの春男の料理申し込み | 浩 風 |
| 「暮れの春」とは春のまさに果てようとする意です。句意がよく分かりません。 | ||
| 悪しからず。 | ||
| 6 | 月蒼し馬橇の鈴の遠ざかり | 彰 子 |
| 私の句です。北海道開拓村で詠んだ句です。情緒たっぷりでした。 | ||
| 7 | 流氷が地球の危機を告げに来る | 千 柳 |
| <添削> 流氷の迫る地球の危機告げに | ||
| 説明的になるので、このように詠んでみました。 | ||
| 8 | 山深き一人静にあひにけり | 泉 |
| <添削> 難所越す一人静のそこここに | ||
| 調子がよくないのでこにように詠んでみました。 | ||
| 9 | 夕闇に妖しく匂う沈丁花 | 千 柳 |
| いい句です。「妖しく匂う」が沈丁花の匂いの感じをよく現しています。 | ||
| 10 | そこここに匂ひ満ちゐる沈丁花 | 彰 子 |
| 私の句です。沈丁花は匂いが強いので目立ちます。 | ||
| 11 | 大阿蘇の裾野にひそと花辛夷 | 楓 花 |
| いい句です。青々とした広大な阿蘇原野に白い花の辛夷が一本。 | ||
| 光景が目に浮かんできます。青と白のコントラストもいいですね。 | ||
| 12 | 暮色にもはっきり見ゆる辛夷かな | いなご |
| <添削> 暮れ際の空に乱るる辛夷かな | ||
| 言い過ぎです。見ゆるを言わなくても作者の意図は伝わります。 | ||
| 13 | 住み着きし同じ音色のホ−ホケキョ | 竹 豪 |
| いい句です。すっかり住み着いたのであろう。毎日同じところで啼く。 | ||
| 鶯の声を聞いているといい気分になる。 | ||
| 14 | 新緑の薫りむせぶ子規の里 | ゆづき |
| いい句です。松山は美しい所ですよね。子規もこの頃の松山をこよなく | ||
| 愛したことでしょう。 | ||
| <添削> 新緑の薫りにむせぶ子規の里 | ||
| 15 | 晩鐘に辛夷浮かべる仁王門 | 峰 生 |
| <添削> 暮れ際の辛夷浮かべる仁王門 | ||
| あれこれ物が多すぎ過ぎすっきりしません。「晩鐘」を削除しました。 | ||
| 16 | フリージア活けて一夜の旅に出る | 楓 花 |
| いい句です。気分よく旅に出る。きっと楽しい旅行になることでしょう。 | ||
| そしてフリージアの出迎えを待つのである。 | ||
| 17 | 春の風邪花粉症やら混んだバス | 峰 生 |
| 「春の風邪」「花粉症」春の季語です。考えてみてください。 | ||
| 18 | 空高く風に踊るや花辛夷 | 石の花 |
| いい句です。辛夷が大空に気持ちよく咲いている。心が華やぐ光景。 | ||
| 19 | 校庭に桜舞い散る投票日 | 菜の花 |
| 投票所は学校が多い。先般統一選挙が行われたが丁度桜が | ||
| 散る頃であった。素直ないい句です。 | ||
| 20 | 庭の隅ほのかに匂う沈丁花 | 竹 豪 |
| <添削> とっぷりと暮るるほのかに沈丁花 | ||
| 説明になります。沈丁花は香りの強いのが特徴なので「匂う」を | ||
| 省略してみました。 | ||
| 21 | 鐘一打空青きして辛夷咲く | 哲 朗 |
| <添削> 鐘一打空に乱るる花辛夷 | ||
| 説明的になるので中七を替えてみました。 | ||
| 22 | 桜咲く小さな島の砦かな | 彰 子 |
| 私の句です。しまなみ海道沿いの島の桜が満開でした。昔を偲ぶ。 | ||
| 23 | 這い這いはまず後ずさり孫の春 | そらまめ |
| いい句です。孫は目に入れても痛くないほど可愛いものです。 | ||
| 慈しむ様子が伝わってきます。 | ||
| ただし「孫」は使わないようにと教わりました。 | ||
| 24 | 沈丁の香に誘われて回り道 | まこと |
| いい句です。沈丁は香りが強いので遠くより匂ってくる。 | ||
| そこで回り道をして見に行くのです。 | ||
| 25 | つくし取り悲鳴に驚き蛇逃げる | そらまめ |
| 「つくし」は春の季語。「蛇」は夏の季語です。中八です。考えてみてください。 | ||
| 26 | 城山のライトアップや春の宵 | 泉 |
| <添削> 城山のライトアップや春時雨 | ||
| 「春の宵」は付き過ぎ。季語を替えてみました。 | ||
| 27 | 閉校の歴史を秘めし花辛夷 | まこと |
| いい句です。閉校になったが辛夷は毎年咲き誇る。昔が懐かしい。 | ||
| 28 | 健やかに育てと祈る武者人形 | ゆづき |
| いい句です。子供の成長を切に祈る親心。立派に成長してくれるといいですね。 | ||
| 29 | 菜の花の迷路でジャンケンかくれんぼ | 媛 香 |
| いい句です。微笑ましい情景が見えてきます。 | ||
| 30 | 百千鳥朝な夕なの散歩道 | いなご |
| いい句です。一日中鳥が啼いていて散歩するのが楽しい。幸せに感謝。 | ||
| 31 | 詩吟朗々池面を渡る青葉風 | コスムス |
| いい句です。詩吟が朗々とながれ、青葉風が吹き渡る。気分爽快。 | ||
| 32 | じゃが芋の新芽を枯らす忘れ霜 | そらまめ |
| 「じゃが芋」「忘れ霜」季重ねにならないでしょうか。考えてみてください。 | ||
| 33 | 風ありて徐々に調ふ花筏 | コスモス |
| いい句です。花筏は少しづつ形を作りながら流れていきます。 | ||
| よく観察されています。 | ||
| 34 | 青空に真白き花の辛夷かな | 浩 風 |
| <添削> 大空に咲きこぼれゐる辛夷かな | ||
| 言い過ぎです。「真白き」を省略してみました。 | ||
| 35 | 路地裏に夜風に匂う沈丁花 | 哲 朗 |
| <添削> 路地裏の静かに暮るる沈丁花 | ||
| 説明的になるので「匂う」を省略してみました。 | ||
| 36 | 目を閉じて「千の風」聞く春彼岸 | さつき |
| いい句です。「千の風」は最近のヒット曲。季語がよく効いています。 | ||
| 37 | 青い目もレンズ通して桜追う | 千 柳 |
| いい句です。外国人も桜は好きのようです。カメラは日本製。 | ||
| 38 | 寺の苑野点に春の日差しかな | さつき |
| <添削> キャンパスの野点に春の日差しかな | ||
| かな止めの場合、「寺の苑」で切るのはどうかと思います。 | ||
| 上五を替えてみました。 | ||
| 39 | 道の駅枝垂れ桜の幹ねじれ | 媛 香 |
| <添削> 千年の桜ねじれる道の駅 | ||
| 「道の駅」で切れるのが気になります。また幹は省略しました。 | ||
| 40 | 故郷の山麓の道辛夷咲く | 石の花 |
| <添削> 故郷の山麓(やまふところ)の辛夷かな | ||
| 「道」を省略しました。また調子が悪いのでこのように詠んでみました。 | ||
| 41 | 電線に鳶寄り添い春がすみ | 竹 豪 |
| いい句です。ほのぼのとした感じがでています。 | ||
| <添削> 電線に鳶より添ふ春霞 | ||
| 42 | 風吹きて辛夷散りけり我の身に | 浩 風 |
| <添削> 見つめれば辛夷散りそむ日暮時 | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 43 | 川風に吹かれて泳ぐ鯉のぼり | ゆづき |
| <添削> 川風に体寄せ合ふ鯉のぼり | ||
| 説明になるので「吹かれて泳ぐ」を省略しました。 | ||
| 44 | 子離れの一歩となりし四月かな | まこと |
| いい句です。入園児でしょうか。これで少しは子離れできると思う。 | ||
| 子供は親が思う以上に自立しているものです。 | ||
| 45 | 著莪の花飛沫に濡るる滝地蔵 | コスモス |
| 「飛沫に濡るる」が「著莪の花」と「滝地蔵」にかかります。 | ||
| 考えてみてください。 | ||
| 46 | 石手寺や朝の始まり百千鳥 | 哲 朗 |
| いい句です。毎朝お参りしている札所。鳥がしきりに啼いている。 | ||
| 今日も元気よく頑張ろう。 | ||
| <添削> 石手寺や朝の始まる百千鳥 | ||
| 47 | ティシュペーパー丸めたように辛夷咲く | 媛 香 |
| ユニークな句ですね。句としていいのかどうか私には分かりません。 | ||
| 48 | 久々の同級会や春惜しむ | いなご |
| <添削> 久々の同級会やはだら雪 | ||
| 句としておもしろ味がないように思います。季語を替えてみました。 | ||
| 49 | 入れ喰いの鱒に釣られて山の宿 | 峰 生 |
| 句意が分かりません。考えてみてください。 | ||
| 50 | 雨上がり眩い程の新緑よ | 菜の花 |
| <添削> 一山の新緑萌ゆる雨上がり | ||
| 調子がよくないので、このように詠んでみました。 | ||
| 51 | お裾分けあてにされゐる初蕨 | さつき |
| いい句です。初蕨は美味しいですよね。お裾分けを楽しみにされている。 | ||