平成19年 4月1日〜平成19年 4月20日 投句分
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互 選 句
第 28 回 披 講
   4 月 分 添 削 と 寸 評    
 
5月になります。私は1年のうち5月が一番好きです。5月は
いろんな花が咲き、自然の色彩も大きく変化して、生き生き
としてきます。人間が活動するのにもっともいい月です。
したがって自然を詠む俳句にとっても一番いい月だと思います。
人生いきいきと生きると共に俳句も夢と希望をもって少しでも
精進していきましょう。
今月もいい句が沢山あり大変うれしく思っています。
いつものように私なりの添削と寸評をします。参考までに。
 
番号   投 句 の 添 削 と 寸 評 俳 号
1 春海を背に表彰台に向かう友 菜の花
「春海」という季語はありません。考えてみてください。
 
2 初耳の初恋のこと沈丁花 楓 花
<添削> 初恋を初めて聞くや沈丁花
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
 
3 沈丁花かほり豊かに誘われて  泉 
<添削> 沈丁に誘はれ上る石の階
「沈丁花」はかほり豊かな花です。したがって「かほり豊か」は言い過ぎです。
 
4 シクラメン門口飾り友を待つ 石の花
<添削> 友待つや門口飾るシクラメン
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
 
5 暮れの春男の料理申し込み 浩 風
「暮れの春」とは春のまさに果てようとする意です。句意がよく分かりません。
悪しからず。
 
6 月蒼し馬橇の鈴の遠ざかり 彰 子
私の句です。北海道開拓村で詠んだ句です。情緒たっぷりでした。
 
7 流氷が地球の危機を告げに来る 千 柳
<添削> 流氷の迫る地球の危機告げに
説明的になるので、このように詠んでみました。
 
8 山深き一人静にあひにけり  泉 
<添削> 難所越す一人静のそこここに
調子がよくないのでこにように詠んでみました。
 
9 夕闇に妖しく匂う沈丁花 千 柳
いい句です。「妖しく匂う」が沈丁花の匂いの感じをよく現しています。
 
10 そこここに匂ひ満ちゐる沈丁花 彰 子
私の句です。沈丁花は匂いが強いので目立ちます。
 
11 大阿蘇の裾野にひそと花辛夷 楓 花
いい句です。青々とした広大な阿蘇原野に白い花の辛夷が一本。
光景が目に浮かんできます。青と白のコントラストもいいですね。
 
12 暮色にもはっきり見ゆる辛夷かな  いなご
<添削> 暮れ際の空に乱るる辛夷かな 
言い過ぎです。見ゆるを言わなくても作者の意図は伝わります。
 
13 住み着きし同じ音色のホ−ホケキョ 竹 豪
いい句です。すっかり住み着いたのであろう。毎日同じところで啼く。
鶯の声を聞いているといい気分になる。
 
14 新緑の薫りむせぶ子規の里 ゆづき
いい句です。松山は美しい所ですよね。子規もこの頃の松山をこよなく
愛したことでしょう。
<添削> 新緑の薫りにむせぶ子規の里
 
15 晩鐘に辛夷浮かべる仁王門 峰 生
<添削> 暮れ際の辛夷浮かべる仁王門
あれこれ物が多すぎ過ぎすっきりしません。「晩鐘」を削除しました。
 
16 フリージア活けて一夜の旅に出る 楓 花
いい句です。気分よく旅に出る。きっと楽しい旅行になることでしょう。
そしてフリージアの出迎えを待つのである。
 
17 春の風邪花粉症やら混んだバス 峰 生
「春の風邪」「花粉症」春の季語です。考えてみてください。
 
18 空高く風に踊るや花辛夷 石の花
いい句です。辛夷が大空に気持ちよく咲いている。心が華やぐ光景。
 
19 校庭に桜舞い散る投票日 菜の花
投票所は学校が多い。先般統一選挙が行われたが丁度桜が
散る頃であった。素直ないい句です。
 
20 庭の隅ほのかに匂う沈丁花 竹 豪
<添削> とっぷりと暮るるほのかに沈丁花
説明になります。沈丁花は香りの強いのが特徴なので「匂う」を
省略してみました。
 
21 鐘一打空青きして辛夷咲く 哲 朗
<添削> 鐘一打空に乱るる花辛夷
説明的になるので中七を替えてみました。
 
22 桜咲く小さな島の砦かな 彰 子
私の句です。しまなみ海道沿いの島の桜が満開でした。昔を偲ぶ。
 
23 這い這いはまず後ずさり孫の春 そらまめ
いい句です。孫は目に入れても痛くないほど可愛いものです。
慈しむ様子が伝わってきます。
ただし「孫」は使わないようにと教わりました。
 
24 沈丁の香に誘われて回り道 まこと
いい句です。沈丁は香りが強いので遠くより匂ってくる。
そこで回り道をして見に行くのです。
 
25 つくし取り悲鳴に驚き蛇逃げる そらまめ
「つくし」は春の季語。「蛇」は夏の季語です。中八です。考えてみてください。
 
26 城山のライトアップや春の宵  泉 
<添削> 城山のライトアップや春時雨
「春の宵」は付き過ぎ。季語を替えてみました。
 
27 閉校の歴史を秘めし花辛夷 まこと
いい句です。閉校になったが辛夷は毎年咲き誇る。昔が懐かしい。
 
28 健やかに育てと祈る武者人形 ゆづき
いい句です。子供の成長を切に祈る親心。立派に成長してくれるといいですね。
 
29 菜の花の迷路でジャンケンかくれんぼ 媛 香
いい句です。微笑ましい情景が見えてきます。
 
30 百千鳥朝な夕なの散歩道 いなご
いい句です。一日中鳥が啼いていて散歩するのが楽しい。幸せに感謝。
 
31 詩吟朗々池面を渡る青葉風 コスムス
いい句です。詩吟が朗々とながれ、青葉風が吹き渡る。気分爽快。
 
32 じゃが芋の新芽を枯らす忘れ霜 そらまめ
「じゃが芋」「忘れ霜」季重ねにならないでしょうか。考えてみてください。
 
33 風ありて徐々に調ふ花筏 コスモス
いい句です。花筏は少しづつ形を作りながら流れていきます。
よく観察されています。
 
34 青空に真白き花の辛夷かな 浩 風
<添削> 大空に咲きこぼれゐる辛夷かな
言い過ぎです。「真白き」を省略してみました。
 
35 路地裏に夜風に匂う沈丁花 哲 朗
<添削> 路地裏の静かに暮るる沈丁花
説明的になるので「匂う」を省略してみました。
 
36 目を閉じて「千の風」聞く春彼岸 さつき
いい句です。「千の風」は最近のヒット曲。季語がよく効いています。
 
37 青い目もレンズ通して桜追う 千 柳
いい句です。外国人も桜は好きのようです。カメラは日本製。
 
38 寺の苑野点に春の日差しかな さつき
<添削> キャンパスの野点に春の日差しかな
かな止めの場合、「寺の苑」で切るのはどうかと思います。
上五を替えてみました。
 
39 道の駅枝垂れ桜の幹ねじれ 媛 香
<添削> 千年の桜ねじれる道の駅
「道の駅」で切れるのが気になります。また幹は省略しました。
 
40 故郷の山麓の道辛夷咲く 石の花
<添削> 故郷の山麓(やまふところ)の辛夷かな
「道」を省略しました。また調子が悪いのでこのように詠んでみました。
 
41 電線に鳶寄り添い春がすみ   竹 豪
いい句です。ほのぼのとした感じがでています。
<添削> 電線に鳶より添ふ春霞  
 
42 風吹きて辛夷散りけり我の身に 浩 風
<添削> 見つめれば辛夷散りそむ日暮時
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
 
43 川風に吹かれて泳ぐ鯉のぼり ゆづき
<添削> 川風に体寄せ合ふ鯉のぼり
説明になるので「吹かれて泳ぐ」を省略しました。
 
44 子離れの一歩となりし四月かな まこと
いい句です。入園児でしょうか。これで少しは子離れできると思う。
子供は親が思う以上に自立しているものです。
 
45 著莪の花飛沫に濡るる滝地蔵 コスモス
「飛沫に濡るる」が「著莪の花」と「滝地蔵」にかかります。
考えてみてください。
 
46 石手寺や朝の始まり百千鳥 哲 朗
いい句です。毎朝お参りしている札所。鳥がしきりに啼いている。
今日も元気よく頑張ろう。
<添削> 石手寺や朝の始まる百千鳥
 
47 ティシュペーパー丸めたように辛夷咲く 媛 香
ユニークな句ですね。句としていいのかどうか私には分かりません。
 
48 久々の同級会や春惜しむ いなご
<添削> 久々の同級会やはだら雪
句としておもしろ味がないように思います。季語を替えてみました。
 
49 入れ喰いの鱒に釣られて山の宿 峰 生
句意が分かりません。考えてみてください。
 
50 雨上がり眩い程の新緑よ 菜の花
<添削> 一山の新緑萌ゆる雨上がり
調子がよくないので、このように詠んでみました。
 
51 お裾分けあてにされゐる初蕨 さつき
いい句です。初蕨は美味しいですよね。お裾分けを楽しみにされている。