番号 | 添 削 & 寸 評 | 俳 号 | |
1 | 母の日や宅急便の止まりをる | まこと | |
<添削> 母の日や宅急便のどっとくる | |||
止まりをるは面白くないのでこのように詠んでみました。宅急便が沢山届く。 | |||
2 | 白牡丹緋鯉の泳ぐ古刹池 | 石の花 | |
<添削> 古池の澄みきっている白牡丹 | |||
「緋鯉」は夏の季語です。「白牡丹」「緋鯉」「古刹池」と物が多すぎます。 | |||
焦点を絞りましょう。 | |||
3 | ミュウジアム窓からそそぐ葉桜よ | 菜の花 | |
<添削> 葉桜となる新装のミュ−ジアム | |||
「そそぐ葉桜よ」はどうかと思いますのでこのように詠んでみました。 | |||
4 | 纏われる一匹の蝿ついに打つ。 | コスモス | |
<添削> 一匹の蝿の纏はる夕餉時 | |||
気持ちは分かりますが言い過ぎで説明になります。「ついに打つ」 | |||
を省略しました。 | |||
5 | 暮れなずむ小樽運河に初夏の風 | 泉 | |
いい句です。爽やかなひととき。美しい小樽運河が眼に浮かんで | |||
きます。季語もよく効いています。 | |||
6 | 春の川塵埃の堰流しけり | コスモス | |
<添削> さまざまのもの流れゐる春の川 | |||
調子がよくありません。春の川ですからもう少しきれいに詠みたい | |||
ものです。 | |||
7 | 老妻と二人夕餉にえんど豆 | 竹 豪 | |
いい句です。楽しく会話をしながらの夕餉。私も豌豆は大好きです。 | |||
<添削> 老妻と二人夕餉の豆ご飯 | |||
8 | 野いちごに作業忘れるみかん山 | そらまめ | |
<添削> 野苺を頬ばる子規の訪ひし径 | |||
「いちご」は夏の季語。「みかん山」は冬の季語です。 | |||
9 | 蕗むきし指先黒くなりにけり | ||
<添削> 蕗煮るや配る近所の孫娘 | いなご | ||
常套句になりおもしろくありません。 | |||
10 | 葉桜の煌めく中に群れ雀 | 哲 朗 | |
<添削> 葉桜の中に啼き交ふ群れ雀 | |||
「葉桜の煌めく」というのはどうかなと思うのですが。「煌めく」を | |||
省略してみました。 | |||
11 | 葉桜やセールス口調板につく | まこと | |
<添削> 葉桜やセールス板につく口調 | |||
調子がよくないと思われるので入れ替えてみました。 | |||
12 | 禅寺や牡丹百花に魅せらるる | 哲 朗 | |
いい句です。お寺に豊麗な牡丹は合いますね。いつまでも見入る | |||
のである。お賽銭もあげましょうね。 | |||
<添削> 禅寺や牡丹百花に佇める | |||
「魅せらるる」は言い過ぎになるかと思いこのような句を詠んで | |||
みました。 | |||
13 | 葉桜にホルンのひびく石手川 | さつき | |
いい句です。葉桜にホルンの取り合わせがよい。気持ちのよい | |||
明るい句です。 | |||
14 | ぼうたんの一ひら拾い句帳閉ず | まこと | |
いい句です。吟行に行ったんですね。いい句ができましたか。 | |||
家に帰ってからも句作りを考えましょう。 | |||
15 | 一村にいのち吹き込む鯉のぼり | さつき | |
いい句です。最近では鯉のぼりを見かけなくなりましたね。 | |||
過疎村に久しぶりの鯉のぼりで村が生き返ったよう。 | |||
16 | 荒れ庭に一輪目立つ赤いバラ | 竹 豪 | |
いい句です。荒れ庭だけに赤い薔薇が目立つ。花の生命力。 | |||
<添削> 荒れ庭に一輪目立つ赤い薔薇 | |||
17 | ひかり受け輝きおりし柿若葉 | 浩 風 | |
<添削> 一茶訪ふ光輝く柿若葉 | |||
一茶が宿ったことのある旧家の柿若葉が美しい。 | |||
18 | 休刊日手持ち無沙太や初夏の朝 | 媛 香 | |
<添削> 休刊の手持ち無沙汰や夏はじめ | |||
「初夏の朝」はどうかなと思います。 | |||
「休刊日」で切れるのはどうかと思います。目覚めると真っ先に | |||
新聞を読む。しかし今日は休刊日だ。何だか拍子抜けする。 | |||
19 | 春風に吹雪く花びら散歩道 | ゆづき | |
いい句です。爽やかな句です。情景が浮かんできます。心も | |||
弾むことでしょう。 | |||
20 | 一本の千年桜花は葉に | 媛 香 | |
<添削> 葉桜の一樹に拠りて目を瞑る | |||
「花は葉に」は」季語になるかも。 | |||
大勢訪ねていた千年桜も若葉になり訪ねる人もいなくなる。 | |||
来年を楽しみにしよう。 | |||
21 | 春眠や時計の針の速きこと | 千 柳 | |
いい句です。春眠暁を覚えずといいます。しかし時間は刻々と | |||
刻まれていく。刻を大事にしましょう。 | |||
22 | 花みずきネオン間合いの雨に散る | 峰 生 | |
句意がよく分かりません。考えてみてください。 | |||
23 | 足さぐり竹の子を掘る雨あがり | そらまめ | |
<添削> 筍を探り掘りだす日曜日 | |||
「さぐる」は広辞苑によれば手足の感覚によって探す求めるとあ | |||
ります「。雨あがり」は付き過ぎるので替えました。 | |||
24 | 葉桜や齢(よわい)重ねてまた楽し | 石の花 | |
いい句です。お互いに歳をとってきた。いつまでも労りあいながら | |||
楽しい人生を過ごしていきましょう。 | |||
25 | 子規虚子の生まれし郷や若葉風 | 彰 子 | |
私の句です。若葉風が爽やかで心地よい。 | |||
26 | 卵抱く鳩と眼が合ふ青嵐 | 楓 花 | |
いい句です。鳩が懸命に卵を抱いている。作者は「青嵐」を | |||
気遣うているのである。 | |||
27 | 水切りの薊再びピンとして | いなご | |
いい句です。花を大事にする心遣い。蘇ってよかったですね。 | |||
28 | 青々といま葉桜の咲きほこり | 千 柳 | |
<添削> 葉桜となる清流の響きゐる | |||
あれこれ言い過ぎているし、調子が今ひとつ。 | |||
29 | リラの花手廻しオルガン鳴る舗道 | 楓 花 | |
<添削> 手廻しのオルガン響くリラの花 | |||
中八になっています。「オルガン」と「リラの花」の取り合わせがよい。 | |||
「舗道」を省略しました。 | |||
30 | スーパーに移動図書館初燕 | 媛 香 | |
いい句です。スーパーに移動図書館が来るんですね。私は見た | |||
ことがありません。客寄せの一方法なんでしょうか。季語が効い | |||
ています。 | |||
31 | いい日だね和尚自慢の牡丹園 | 峰 生 | |
<添削> 暮れなずむ和尚自慢の牡丹園 | |||
説明的になるので前五を替えてみました。 | |||
32 | 大輪の牡丹ゆさぶる鐘一打 | さつき | |
いい句です。願いを込めて思い切り鐘をついたのでしょう。牡丹 | |||
もそれに応えるよう。 | |||
33 | 母の日に贈りし服をよろこばる | 浩 風 | |
<添削> 母の日に贈る花柄ワンピ−ス | |||
「よろこばる」を言わなくても喜ぶ様子は伺えると思います。 | |||
母はいつまでも大事にしましょう。よい贈り物をされましたね。 | |||
34 | 柏餅豊かになりてそっぽ向き | ゆづき | |
<添削> 飽食になりそっぽ向く柏餅 | |||
「柏餅」で切れるのはどうかと思い。五七五を入れ替えてみました。 | |||
35 | 音のなき風に散りたるぼたんかな | いなご | |
いい句です。牡丹はしずかに散っていく。散ってもなを美しい。 | |||
<添削> 音のなき風に散りゆく牡丹かな | |||
36 | 藤棚に父母と過した日を見てる | 峰 生 | |
句意がよく分かりません。悪しからず。 | |||
37 | 世羅の里五万の花園芝桜 | 石の花 | |
<添削> 十万の芝桜行く世羅の里 | |||
世羅の里|五万の花園|芝桜|と三段切れになるのでこのよう | |||
に詠んでみました。 | |||
38 | 鯉のぼり西に泳いで雲を呼ぶ | そらまめ | |
句意がよく分かりません。悪しからず。 | |||
39 | 山里の藁葺き屋根に白牡丹 | 泉 | |
句意がよく分かりません。悪しからず。 | |||
40 | 葉桜にレンズを向ける人もなく | 千 柳 | |
<添削> 葉桜やしきりに覗くファインダ− | |||
常套句になっています。逆にしたほうがおもしろい句になるかなと | |||
思いこのように詠んでみました。 | |||
41 | 葉桜となる弘法の往きし径 | 彰 子 | |
私の句です。弘法大師が歩いた径を遍路する。葉桜が風に揺れて | |||
心地よい。心が癒される。 | |||
42 | 新緑の木々の下にて一服す | 浩 風 | |
<添削> 新緑や世間話の老ひ仲間 | |||
常套句になっています。新緑とは木々の若葉のこと。木々を省略しました。 | |||
43 | ピストルが響く街中凍り付く | ゆづき | |
「凍り付く」は冬の季語ですが、寒気のため物が凍ること、また、 | |||
凍るように感じることです。 | |||
句意が今ひとつ分かりません。考えてみてください。 | |||
44 | 葉桜の道抜けて行く耕耘機 | 楓 花 | |
いい句です。農村の一こま。これから農繁期に入り忙しくなる。 | |||
45 | 空へ漕ぐふらここの子の声高く | 哲 朗 | |
<添削> ふらここの子の歓声の高みより | |||
調子が少し悪いのとやや説明的なのでこのように詠んでみました。 | |||
46 | 満開を過ぎて染み入る目に青葉 | 竹 豪 | |
満開とは桜のことのようですが、無理があると思います。考えてみて下さい。 | |||
47 | うぐひすの声や天孫降臨地 | 彰 子 | |
私の句です。高千穂の神域でうぐいすがしきりに啼いていて | |||
清々しい気分になりました。 | |||
48 | 世羅高原山全体がピンク色 | 菜の花 | |
<添削> 世羅高原全山ピンク色の初夏 芝桜公園にて | |||
季語がありません。考えてみてください。 | |||
49 | さんぽ道新樹さわさわ音たてて | 泉 | |
<添削> 故里のポプラ新樹のさわさわと | |||
「さわさわ」とは音を立てるさまを言うものです。「さんぽ道」では | |||
おもしろくないので替えてみました。 | |||
50 | 薔薇展に人とカメラでムンムンと | 菜の花 | |
<添削> 薔薇展のむんむん人の滞り | |||
人がむんむんするのは分かりますが、カメラがむんむんすると | |||
言いますかね。薔薇展のむんむん匂うさまにしてみました。 | |||
51 | 人の居て貸家札垂る春隣 | コスモス | |
いい句です。面白いところに目を付けられましたね。季語が効いています。 |
5 月 分 添 削 と 寸 評
精進していきましょう。
したがって自然を詠む俳句にとっても一番いい月だと思います。
今月もいい句が沢山あり大変うれしく思っています。
いろんな花が咲き、自然の色彩も大きく変化して、生き生き
としてきます。人間が活動するのにもっともいい月です。
人生いきいきと生きると共に俳句も夢と希望をもって少しでも
いつものように私なりの添削と寸評をします。参考までに。