平成19年 6月1日〜平成19年 6月20日 投句分
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互 選 句
第 30 回 披 講
6 月 分 添 削 と 寸 評
 
 平年より9日遅れで入った梅雨ですが、今年は雨が
少なく水不足が心配されています。
月日のたつのは早いもので今年も半年が過ぎました。
俳句も一歩一歩前に向かって進んで行きましょう。
今月もいい句が沢山あり大変うれしく思っています。
相変わらず私なりの添削と寸評をしますが悪しからず
ご了承ください。
  
番号    投 句 の 添 削 と 寸 評
1 蛍追う子等駆け行きぬ川辺道 峰 生
<添削> 蛍追ふ子等一心に駆け行きぬ
「蛍追う」「川辺」はやや付き過ぎです。「川辺道」を除けてみました。
 
2 早朝を歩く日課や明易し 彰 子
私の句です。健康維持のため毎日散歩をしています。
日が長くなったので早朝の散歩には好都合です。
爽やかな風に吹かれて心地よい。
 
3 年金も振り込め詐欺か梅雨の入り そらまめ
いい句です。世相俳句は作り難いものです。本当にひどい話です。
季語がよく効いています。
 
4 麦焼きの田圃一枚真っ黒に 媛 香
<添削> 麦焼きの田圃一枚薄明かり
説明になっています。そこで「真っ黒に」を「薄明かり」に替えて
夕方の景にしてみました。
 
5 門口の四葩色濃く迎えらる 石の花
<添削> 門口の赤い四葩に迎えらる
調子がよくありません。素直に詠んでみました。
 
6 眼を凝らしやっと見つけた青葉木菟 さつき
いい句です。眼を凝らして青葉木菟を見る。そしてやっと見つける。
さど嬉しかったことでしょう。
 
7 ほろ苦き我が青春や草苺
いい句です。良い思い出もあるでしょう。前向きに考え
ましょう。季語がよく効いています。
 
8 出会ひたる花火のやうな額の花 浩 風
<添削> 出会ひたる花火のやうな額の花
「花火」は季語です。このように詠むのはどうでしょうか。
考えてみてください。
 
9 枇杷の実の微かに揺れて単線路 楓 花
いい句です。枇杷がおいしそうです。単線路 で雰囲気がでています。
 
10 小さい手そっと差し伸べ蛍待つ 哲 朗
いい句です。手に蛍がきてくれるといいですね。微笑ましい光景。
 
11 アジサイも石手のダムも雨を待つ 千 柳
いい句です。雨が降ってくれるのを心から祈る。
 
12 紫陽花の七代つずく古き庭 まこと
<添削>紫陽花や七代つづく染め物屋
説明になるので「古き庭 」を替えてみました。
 
13 <添削> 闇夜でも親しくなれる蛍狩り 竹 豪
いい句です。顔はよく見えないが共通の楽しみで親しくなり話も弾む。
<添削> 闇夜でも親しくなれる蛍狩
「蛍狩」名詞の場合は送りかなはつけない。
 
14 父の日は牛乳のんで句に苦する そらまめ
<添削> 父の日は牛乳飲んで句に苦する
詩情の欠けると思います。考えてみてください。
 
15 潮風に耐えて古木や松落ち葉 石の花
いい句です。潮風に耐えてきた大木から強風にあおら
れて松葉が降ってくる。自然の営み。
<添削> 潮風に耐へて古木や松落葉
 
16 息はずみ寺の坂道濃あじさい 哲 朗
いい句です。
寺の坂道は結構きつい。しかし、沿道の紫陽花に心が和むのである。
<添削> 息はずむ寺の坂道濃あじさい
 
17 紫陽花は闇深くまで露天風呂 峰 生
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
18 お寺へと続く小径やほととぎす いなご
いい句です。裏参道の小径を行くとほととぎすが出迎えてくれる。心地よい。
 
19 田水張る電車逆さに走りおり まこと
いい句です。目のつけどころがおもしろい。
<添削> 田水張る電車逆さに走りをり
 
20 笛の音に歓声どっとプール開く 峰 生
<添削> 笛の音に歓声プール開きにて
下六になっています。調子がよくありません。このように詠んでみました。
 
21 賑はひの道の辺に咲く四葩かな 浩 風
<添削> 参道の坂に四葩の真盛り
「賑はひの道が」少しあいまい。このように詠んでみました。
 
22 空梅雨や湖底の古木に鷺一羽 石の花
<添削> 空梅雨や湖(うみ)の底なる大古木
中八になっています。このように詠んでみました。
「空梅雨」「湖底」「古木」「鷺一羽」と物が多過ぎます。
焦点をしぼり簡明に詠みましょう。
 
23 雨蛙天に届かぬ祈りかな ゆづき
いい句です。雨蛙も懸命に鳴いている。しかし天までは届かない
のか雨は一向に降りそうにない。水不足が心配である。
 
24 始発電車過ぎて夏の日始まれり コスモス
いい句です。
始発電車が通り過ぎて行った。今日も一日中暑そうである。
 
25 タンポポは悲しからずや野辺に咲く 千 柳
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
26 河鹿なく友と別るる郷の駅
いい句です。河鹿がもの悲しく鳴いている。久しぶりに逢った
友との別れがつらい。
 
27 紫陽花を愛でる娘も二児の母 さつき
いい句です。紫陽花が好きな娘であったが、はや二児の母である。
月日のたつのは早いものである。
 
28 語り部の訛り言葉や額の花 彰 子
私の句です。額の花の咲いているお寺の縁側で語り
部が原爆の悲劇を話す。平和のありがたさをしみじみ感じる。
 
29 明星の子供のように蛍舞う そらまめ
いい句です。発想がユニ−クで面白いと思います。
<添削> 明星の子供のように蛍舞ふ
 
30 空梅雨や小島に灯り一つづつ 彰 子
私の句です。空梅雨を案じていると小島の灯りが一つづつ灯る。
 
31 濡れ落ち葉嫁に愛想をつかされて ゆづき
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
32 塀の上白き紫陽花顔出して 菜の花
<添削> 紫陽花に会釈を交はす旅始
説明になります。このように詠んでみました。
 
33 七変化色きわめおり昨夜の雨 まこと
<添削> 七変化色きわめゐる誕生日
下六になります。調子がよくありません。
私の先生は「紫陽花と雨は付き過ぎる」ので詠まない
ようにと言われました。
 
34 朝顔のしぼむ姿に我かさね ゆづき
<添削> 朝顔のしぼむいたわる老夫婦
思い入れが強いように思います。俳句は物に託して
思いを述べるものです。
 
35 特攻の掠れし碑文苔の花 さつき
いい句です。季語がよく効いています。平和のありがたさ
をつくづく想う。
 
36 老夫婦いたわり合って田植えかな 竹 豪
いい句です。和やかな微笑ましい光景。いつまでも
お元気で。
<添削> 老夫婦いたわり合って田植かな
名詞には送りかなは付けない。
 
37 夏場所はモンゴル力士の大舞台 菜の花
<添削> モンゴルの両横綱の五月場所
説明になっています。中八です。考えてみてください。
 
38 若葉風大吊橋のどまん中 浩 風
いい句です。九州の飯田高原にできた大吊り橋でしょうか。
若葉風がさわやかで心地よい。
 
39 ジギタリス花穂は五月の闇に伸ぶ 楓 花
いい句です。闇だと見えにくいので「闇に伸ぶ」を
「闇に浮く」にしてみました。
<添削> ジギタリス花穂は五月の闇に浮く
 
40  雨に濡れ寺一面の七変化 媛 香
<添削>奥伊予の寺一面の七変化
私の先生は紫陽花に雨は付くので詠まないようにと言われました。
 
41 一瞬にかける花火師闇の中 千 柳
<添削> 一瞬にかける花火師競ひあひ
「闇の中」では暗くて見えないのでこのように詠んでみました。
 
42 日々化粧濃くなる庭の四葩かな いなご
いい句です。「四葩」の変化を化粧に見立てたところがおもしろい。
 
43 放牧の牛の眸涼し草を食む 媛 香
いい句です。爽やかな光景が見えてくるようです。
 
44 夕暮れて水車はきしみ額の花 哲 朗
<添削> 暮れぎわの水車はきしむ額の花
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
 
45 旅立ちが梅雨入りとなりし中仙道 コスモス
<添削> 梅雨入りとなりし旅立ち中仙道
調子がよくないので上五と中七を入れ替えてみました。
 
46  黒揚羽庭うかがひて飛び行きぬ 楓 花
<添削> 黒揚羽庭うかがひて去りにけり
「飛び行きぬ」を「去りにけり」に替えてみましたが、いかがでしょうか。
 
47 手で囲む物干し竿の青蛙 いなご
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
48 お手植えが懐かしくなる田植えかな 竹 豪
いい句です。大山積神社のお手植え行事は有名です。
田植えの頃になるとお手植え行事を思い出すのである。
<添削> お手植えが懐かしくなる田植かな
 
49 ツアーにのり紫陽花街道モネの庭 菜の花
<添削> 紫陽花のツアーや土佐の碧い空
ツアーにのり|紫陽花街道|モネの庭|と三段切れになります。
また「ツアーにのり」とは言わないのではないでしょうか。
 
50 雨の情 色あざやかに七変化
<添削> 雨の情うつる四葩(よひら)の鮮やかに
「雨の情」で切れるのは問題だと思います。
 
51 切り口を叩いて活けし七変化 コスモス
<添削> 切り口をたたき紫陽花活けにけり
やや説明的なのでこのように断定的に詠んでみました。