6 月 分 添 削 と 寸 評 |
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平年より9日遅れで入った梅雨ですが、今年は雨が |
少なく水不足が心配されています。 |
月日のたつのは早いもので今年も半年が過ぎました。 |
俳句も一歩一歩前に向かって進んで行きましょう。 |
今月もいい句が沢山あり大変うれしく思っています。 |
相変わらず私なりの添削と寸評をしますが悪しからず |
ご了承ください。 |
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番号 |
投 句 の 添 削 と 寸 評 |
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1 |
蛍追う子等駆け行きぬ川辺道 |
峰 生 |
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<添削> 蛍追ふ子等一心に駆け行きぬ |
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「蛍追う」「川辺」はやや付き過ぎです。「川辺道」を除けてみました。 |
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2 |
早朝を歩く日課や明易し |
彰 子 |
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私の句です。健康維持のため毎日散歩をしています。 |
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日が長くなったので早朝の散歩には好都合です。 |
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爽やかな風に吹かれて心地よい。 |
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3 |
年金も振り込め詐欺か梅雨の入り |
そらまめ |
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いい句です。世相俳句は作り難いものです。本当にひどい話です。 |
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季語がよく効いています。 |
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4 |
麦焼きの田圃一枚真っ黒に |
媛 香 |
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<添削> 麦焼きの田圃一枚薄明かり |
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説明になっています。そこで「真っ黒に」を「薄明かり」に替えて |
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夕方の景にしてみました。 |
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5 |
門口の四葩色濃く迎えらる |
石の花 |
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<添削> 門口の赤い四葩に迎えらる |
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調子がよくありません。素直に詠んでみました。 |
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6 |
眼を凝らしやっと見つけた青葉木菟 |
さつき |
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いい句です。眼を凝らして青葉木菟を見る。そしてやっと見つける。 |
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さど嬉しかったことでしょう。 |
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7 |
ほろ苦き我が青春や草苺 |
泉 |
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いい句です。良い思い出もあるでしょう。前向きに考え |
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ましょう。季語がよく効いています。 |
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8 |
出会ひたる花火のやうな額の花 |
浩 風 |
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<添削> 出会ひたる花火のやうな額の花 |
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「花火」は季語です。このように詠むのはどうでしょうか。 |
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考えてみてください。 |
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9 |
枇杷の実の微かに揺れて単線路 |
楓 花 |
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いい句です。枇杷がおいしそうです。単線路 で雰囲気がでています。 |
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10 |
小さい手そっと差し伸べ蛍待つ |
哲 朗 |
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いい句です。手に蛍がきてくれるといいですね。微笑ましい光景。 |
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11 |
アジサイも石手のダムも雨を待つ |
千 柳 |
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いい句です。雨が降ってくれるのを心から祈る。 |
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12 |
紫陽花の七代つずく古き庭 |
まこと |
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<添削>紫陽花や七代つづく染め物屋 |
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説明になるので「古き庭 」を替えてみました。 |
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13 |
<添削> 闇夜でも親しくなれる蛍狩り |
竹 豪 |
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いい句です。顔はよく見えないが共通の楽しみで親しくなり話も弾む。 |
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<添削> 闇夜でも親しくなれる蛍狩 |
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「蛍狩」名詞の場合は送りかなはつけない。 |
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14 |
父の日は牛乳のんで句に苦する |
そらまめ |
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<添削> 父の日は牛乳飲んで句に苦する |
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詩情の欠けると思います。考えてみてください。 |
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15 |
潮風に耐えて古木や松落ち葉 |
石の花 |
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いい句です。潮風に耐えてきた大木から強風にあおら |
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れて松葉が降ってくる。自然の営み。 |
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<添削> 潮風に耐へて古木や松落葉 |
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16 |
息はずみ寺の坂道濃あじさい |
哲 朗 |
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いい句です。 |
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寺の坂道は結構きつい。しかし、沿道の紫陽花に心が和むのである。 |
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<添削> 息はずむ寺の坂道濃あじさい |
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17 |
紫陽花は闇深くまで露天風呂 |
峰 生 |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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18 |
お寺へと続く小径やほととぎす |
いなご |
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いい句です。裏参道の小径を行くとほととぎすが出迎えてくれる。心地よい。 |
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19 |
田水張る電車逆さに走りおり |
まこと |
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いい句です。目のつけどころがおもしろい。 |
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<添削> 田水張る電車逆さに走りをり |
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20 |
笛の音に歓声どっとプール開く |
峰 生 |
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<添削> 笛の音に歓声プール開きにて |
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下六になっています。調子がよくありません。このように詠んでみました。 |
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21 |
賑はひの道の辺に咲く四葩かな |
浩 風 |
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<添削> 参道の坂に四葩の真盛り |
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「賑はひの道が」少しあいまい。このように詠んでみました。 |
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22 |
空梅雨や湖底の古木に鷺一羽 |
石の花 |
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<添削> 空梅雨や湖(うみ)の底なる大古木 |
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中八になっています。このように詠んでみました。 |
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「空梅雨」「湖底」「古木」「鷺一羽」と物が多過ぎます。 |
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焦点をしぼり簡明に詠みましょう。 |
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23 |
雨蛙天に届かぬ祈りかな |
ゆづき |
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いい句です。雨蛙も懸命に鳴いている。しかし天までは届かない |
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のか雨は一向に降りそうにない。水不足が心配である。 |
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24 |
始発電車過ぎて夏の日始まれり |
コスモス |
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いい句です。 |
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始発電車が通り過ぎて行った。今日も一日中暑そうである。 |
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25 |
タンポポは悲しからずや野辺に咲く |
千 柳 |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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26 |
河鹿なく友と別るる郷の駅 |
泉 |
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いい句です。河鹿がもの悲しく鳴いている。久しぶりに逢った |
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友との別れがつらい。 |
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27 |
紫陽花を愛でる娘も二児の母 |
さつき |
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いい句です。紫陽花が好きな娘であったが、はや二児の母である。 |
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月日のたつのは早いものである。 |
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28 |
語り部の訛り言葉や額の花 |
彰 子 |
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私の句です。額の花の咲いているお寺の縁側で語り |
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部が原爆の悲劇を話す。平和のありがたさをしみじみ感じる。 |
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29 |
明星の子供のように蛍舞う |
そらまめ |
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いい句です。発想がユニ−クで面白いと思います。 |
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<添削> 明星の子供のように蛍舞ふ |
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30 |
空梅雨や小島に灯り一つづつ |
彰 子 |
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私の句です。空梅雨を案じていると小島の灯りが一つづつ灯る。 |
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31 |
濡れ落ち葉嫁に愛想をつかされて |
ゆづき |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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32 |
塀の上白き紫陽花顔出して |
菜の花 |
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<添削> 紫陽花に会釈を交はす旅始 |
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説明になります。このように詠んでみました。 |
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33 |
七変化色きわめおり昨夜の雨 |
まこと |
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<添削> 七変化色きわめゐる誕生日 |
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下六になります。調子がよくありません。 |
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私の先生は「紫陽花と雨は付き過ぎる」ので詠まない |
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ようにと言われました。 |
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34 |
朝顔のしぼむ姿に我かさね |
ゆづき |
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<添削> 朝顔のしぼむいたわる老夫婦 |
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思い入れが強いように思います。俳句は物に託して |
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思いを述べるものです。 |
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35 |
特攻の掠れし碑文苔の花 |
さつき |
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いい句です。季語がよく効いています。平和のありがたさ |
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をつくづく想う。 |
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36 |
老夫婦いたわり合って田植えかな |
竹 豪 |
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いい句です。和やかな微笑ましい光景。いつまでも |
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お元気で。 |
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<添削> 老夫婦いたわり合って田植かな |
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名詞には送りかなは付けない。 |
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37 |
夏場所はモンゴル力士の大舞台 |
菜の花 |
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<添削> モンゴルの両横綱の五月場所 |
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説明になっています。中八です。考えてみてください。 |
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38 |
若葉風大吊橋のどまん中 |
浩 風 |
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いい句です。九州の飯田高原にできた大吊り橋でしょうか。 |
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若葉風がさわやかで心地よい。 |
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39 |
ジギタリス花穂は五月の闇に伸ぶ |
楓 花 |
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いい句です。闇だと見えにくいので「闇に伸ぶ」を |
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「闇に浮く」にしてみました。 |
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<添削> ジギタリス花穂は五月の闇に浮く |
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40 |
雨に濡れ寺一面の七変化 |
媛 香 |
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<添削>奥伊予の寺一面の七変化 |
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私の先生は紫陽花に雨は付くので詠まないようにと言われました。 |
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41 |
一瞬にかける花火師闇の中 |
千 柳 |
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<添削> 一瞬にかける花火師競ひあひ |
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「闇の中」では暗くて見えないのでこのように詠んでみました。 |
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42 |
日々化粧濃くなる庭の四葩かな |
いなご |
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いい句です。「四葩」の変化を化粧に見立てたところがおもしろい。 |
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43 |
放牧の牛の眸涼し草を食む |
媛 香 |
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いい句です。爽やかな光景が見えてくるようです。 |
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44 |
夕暮れて水車はきしみ額の花 |
哲 朗 |
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<添削> 暮れぎわの水車はきしむ額の花 |
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調子がよくないのでこのように詠んでみました。 |
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45 |
旅立ちが梅雨入りとなりし中仙道 |
コスモス |
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<添削> 梅雨入りとなりし旅立ち中仙道 |
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調子がよくないので上五と中七を入れ替えてみました。 |
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46 |
黒揚羽庭うかがひて飛び行きぬ |
楓 花 |
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<添削> 黒揚羽庭うかがひて去りにけり |
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「飛び行きぬ」を「去りにけり」に替えてみましたが、いかがでしょうか。 |
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47 |
手で囲む物干し竿の青蛙 |
いなご |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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48 |
お手植えが懐かしくなる田植えかな |
竹 豪 |
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いい句です。大山積神社のお手植え行事は有名です。 |
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田植えの頃になるとお手植え行事を思い出すのである。 |
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<添削> お手植えが懐かしくなる田植かな |
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49 |
ツアーにのり紫陽花街道モネの庭 |
菜の花 |
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<添削> 紫陽花のツアーや土佐の碧い空 |
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ツアーにのり|紫陽花街道|モネの庭|と三段切れになります。 |
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また「ツアーにのり」とは言わないのではないでしょうか。 |
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50 |
雨の情 色あざやかに七変化 |
泉 |
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<添削> 雨の情うつる四葩(よひら)の鮮やかに |
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「雨の情」で切れるのは問題だと思います。 |
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51 |
切り口を叩いて活けし七変化 |
コスモス |
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<添削> 切り口をたたき紫陽花活けにけり |
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やや説明的なのでこのように断定的に詠んでみました。 |