
| 10 月 分 添 削 と 寸 評 | ||
| 厳しかった残暑も10月になるとさすがに涼しくなってきました。 | ||
| スポ−ツの秋、芸術の秋と言いますが各種行事が盛んに行われ | ||
| ています。秋のさわやかな空気にふれて生気を養い作句に励んで | ||
| ください。今月も佳句がたくさんありました。 | ||
| 相変らず私流の添削と寸評をします。ご了承ください。 | ||
| 番号 | 添 削 と 寸 評 | |
| 1 | 十六夜や過ぎし十五の片思い | さつき |
| いい句です。 | ||
| 中学生のときの初恋の切なさ、今になると懐かしく思い出されます。 | ||
| 2 | おだてられへぼに負けるか草相撲 | 峰 生 |
| いい句です。おだてられやすい性格。それにしても負けて悔しい。 | ||
| 3 | 片方は電話のはしら稲木かな | まこと |
| 句意がよく分かりません。悪しからず。 | ||
| 4 | 青空に咲きこぼれおり金木犀 | いなご |
| いい句です。金木犀の素晴らしい香りに心が和みます。 | ||
| <添削> 青空に咲きこぼれゐる金木犀 | ||
| 5 | 神無月友を忍びて句集読む | さつき |
| いい句です。遺句集でしょうか。夜長に友を偲びながら句集を | ||
| 読む。 | ||
| 6 | 遊覧船佐渡の荒磯秋の濤(なみ) | 石の花 |
| <添削> 遊覧船ゆきかふ佐渡の秋日和 | ||
| 「船」「磯」「濤」同じようなものが並びます。省略しましょう。 | ||
| 7 | 右ひだり迷ひて止めぬ赤い羽根 | 楓 花 |
| いい句です。「赤い花」のシ−ズンになりました。人生、些細なことでも | ||
| 迷うことがありますよね。 | ||
| 8 | 満月を見上げる佐渡の露天風呂 | さつき |
| いい句です。満月を見上げる佐渡ヶ島での露天風呂、さぞいい気分だった | ||
| ことでしょう。幸せですね。 | ||
| 9 | 群衆のどよめき起きる鉢合わせ | ゆづき |
| <添削> 喚声の上がる神輿の鉢合わせ | ||
| 季語がありません。 | ||
| 10 | 栗飯を炊き終へて笑む母白寿 | 峰 生 |
| いい句です。白寿で台所に立つとは素晴らしい。満足気なお母さん | ||
| の顔が見えてきます。いつまでもお元気で。 | ||
| 11 | 眺むれば松山城の天高し | 菜の花 |
| <添削> 天高し松山城のはるかにて | ||
| 調子がよくありません。このように詠んでみました。 | ||
| 12 | 日出でてゆるり痩せ行く今朝の露 | 越 |
| <添削> 日の昇りゆるり痩せ行く露の玉 | ||
| 「日の出」とは朝日が昇りでることで、「日出でて」とは言わ | ||
| ないのでは。「今朝」を省略しました。 | ||
| 13 | 去りがたし花野の真中友と行く | 泉 |
| <添削> 落日の花野の中を友と行く | ||
| 俳句では気持はなるべく押えたいので「去りがたし」は省略しました。 | ||
| 添削句でも去りがたい気持ちは詠みとれと思います。 | ||
| 14 | 月出でて佐渡のいで湯に雲けむる | 石の花 |
| 句意がよく分かりません。悪しからず。 | ||
| 15 | 古簾目隠しにとて外さざる | コスモス |
| 「目隠しにとて外さざる」の意がよく分かりません。 | ||
| <添削> 伊予簾はずす遠くに神の山 | ||
| 16 | 金塊にふれて重たき秋深む | 浩 風 |
| <添削> 金塊にふるる秋日の射してをり | ||
| 「触れる」とは「ちょっとさわる」ことです。「ふれて重たき」 | ||
| はどんなものでしょうか。 | ||
| 17 | 秋祭り足の痛みと肩の凝り | 千 柳 |
| <添削> 秋祭終ふ晩酌の老夫婦 | ||
| 情緒に欠けるように思います。 | ||
| 18 | 秋晴や畦道を行く縄電車 | いなご |
| いい句です。大人は農作業に大忙し。子供たちは縄電車でお遊び。 | ||
| 田園風景を上手く詠まれています。 | ||
| 19 | 昆布乾す襟裳岬や秋の暮れ | そらまめ |
| 「昆布乾す」は夏の季語で季重ねになります。 | ||
| <添削> 昆布乾す襟裳岬のお昼どき | ||
| 20 | 秋風や何をやるにも良い季節 | 竹 豪 |
| <添削> 湯の町をとうり過ぎゆく秋の風 | ||
| 具象性に欠けます。 | ||
| 21 | 月の背やかぐや見守るおきなあり | そらまめ |
| <添削> 名月やかぐや媛守る翁あり | ||
| 「かぐや姫」でなく「かぐや」でよいのかどうか。「竹取物語」 | ||
| 22 | 静かなり渓流青く秋気澄む | 菜の花 |
| <添削> 秋澄むや渓流に耳澄ましゐる | ||
| 調子が今ひとつなのでこのように詠んでみました。 | ||
| 23 | 静けさや銀杏落ちる宝厳寺 | 哲 朗 |
| いい句です。宝厳寺の静かなひととき。風情があります。 | ||
| 24 | 相寄りて音たて落ちる芋の露 | コスモス |
| 平明に表現されていい句です。。細やかな観察、そのとうりですね。 | ||
| 25 | 爽やかや浜辺に犬と戯れて | 哲 朗 |
| いい句です。浜辺で愛犬と戯れている心安らぐひととき。 | ||
| 26 | おしまいは線香花火闇深し | 楓 花 |
| <添削> おしまいは手花火闇の深まりて | ||
| 調子が今ひとつなのでこのように詠んでみました。 | ||
| 27 | 名月を露天風呂にて仰ぎけり | 浩 風 |
| <添削> 名月を露天の風呂に映しけり | ||
| 句になっていますが、露天風呂の句は平凡になりがちです。 | ||
| 28 | 田の隅の廃車置場やそぞろ寒 | いなご |
| いい句です。休耕田を廃車置場にしている。ガソリンが高騰するせいか、 | ||
| 廃車が多くなっている。これからは日に日に寒さが増してくる。 | ||
| 29 | きゃびらか神輿出揃う秋の空 | ゆずき |
| <添削> 新旧の神輿の揃ふ出で湯町 | ||
| 「きゃびらか」で分かるのでしょうか。「神輿」は夏の季語。 | ||
| 30 | 青蜜柑香りを愛す父なりき | 楓 花 |
| いい句です。丹精込めて作った蜜柑。蜜柑を慈しんでいる様子が | ||
| 伝わってきます。 | ||
| <添削> 青みかん香りを愛でる男親 | ||
| 31 | 城址のさくら古木の忘れ花 | 媛 香 |
| <添削> 返り咲くさくら古木や城の址 | ||
| やや説明的なのでこのように詠んでみました。 | ||
| 32 | 来年も来ると旋回去(い)ぬ燕 | まこと |
| いい句です。名残をおしんでいる情景がよく分かります。来年 | ||
| また会いましょう。 | ||
| 33 | 秋晴れや子供神輿の鈴が鳴る | 千 柳 |
| <添削> 新しき子供神輿の鈴の鳴る | ||
| 「神輿」は夏の季語。「秋晴れ」を省略しました。 | ||
| 34 | 飛行雲×を描きたる刈田かな | そらまめ |
| 句意がよく分かりません。悪しからず。 | ||
| 35 | 曼珠沙華燃え剣豪の生誕地 | 彰 子 |
| 私の句です。宮本武蔵の生誕地に曼珠沙華が燃えるように咲いて | ||
| いました。 | ||
| 36 | 一山を包む静寂星月夜 | 越 |
| いい句です。「一山」とは一つの山、または一つの大寺を言います。 | ||
| 静けさの中での星月夜が美しい。 | ||
| 37 | 月けむり露天の風呂や暗からず | 石の花 |
| 平凡で情緒がありません。考えて見て下さい。 | ||
| 38 | 天高しリバーサイドに走る夢 | 泉 |
| 句意がよく分かりません。悪しからず。 | ||
| 39 | 背に夕日道連れとなり秋遍路 | 哲 朗 |
| いい句です。夕日を背に浴びながら遍路は急いでいる。 | ||
| 40 | 水煙に待宵の月懸かりけり | 越 |
| いい句です。「水煙」とは塔の九輪の上部にある火焔形の装飾。 | ||
| 水煙に月がかかっているという情緒があっていいですね。 | ||
| 41 | ちちろ鳴く三鬼の生家跡に句碑 | 媛 香 |
| いい句です。「三鬼」は岡山県出身の俳人で新興俳句の旗手といわれ | ||
| ています。「三鬼」を慕っているように蟋蟀が啼く。 | ||
| 42 | 秋祭り粋でいなせなかき夫達 | ゆづき |
| <添削> 秋祭粋なかき夫の小休止 | ||
| 「粋」と「いなせ」は同義語だと思います。 | ||
| 43 | 子の笑顔神輿の群れの中におり | 千 柳 |
| いい句です。子供御輿でしょうか。御輿に興じている子供の笑顔が | ||
| かわいらしい。 | ||
| 44 | 露草の露ひかりゐる古戦場 | 彰 子 |
| 私の句です。東北の平泉で源義経に想いをはせながら詠みました。 | ||
| 45 | 外国に暮らす子思い秋刀魚焼く | まこと |
| いい句です。外国へいった子供が気になる母ごころ。季語がいい | ||
| ですね。 | ||
| <添削> 秋刀魚焼く異国に暮らす子を想ひ。 | ||
| 46 | 湧き水を掬ひ飲み干す初紅葉 | 媛 香 |
| いい句です。美しい光景。涌き水がおいしかったことでしょう。 | ||
| 47 | 豪農の館広大稲の秋 | 浩 風 |
| <添削> 豪農の並ぶ土蔵や稲の秋 | ||
| 「豪農の館広大」は抽象的なので、焦点をしぼってこのように詠んでみました。 | ||
| 48 | 衣更えどうしようかとこの暑さ | 竹 豪 |
| <添削> 七十の妻を見直す衣更 | ||
| 「衣更」「暑さ」は夏の季語です。具体的に物に託して詠みま | ||
| しょう。 | ||
| 49 | 関所今鉄道往来曼珠沙華 | コスモス |
| <添削> 曼珠沙華列車行き交う関所跡 | ||
| 「鉄道」とは列車を運転する施設のことで「鉄道往来」はどうかと思い | ||
| このように詠んでみました。 | ||
| 50 | 混浴に勇んで来たら足湯かな | 竹 豪 |
| <添削> 混浴のとばりに消ゆる十三夜 | ||
| 季語がありません。また情緒に欠けます。考えてみてください。 | ||
| 51 | 白鷺の舞ひて道後に湯の湧けり | 峰 生 |
| <添削> 白鷺の憩ふ出で湯の町はずれ | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 52 | 百舌鳥啼くや平家屋敷の自在鉤 | 彰 子 |
| 私の句です。奥祖谷の平家屋敷での一句です。 | ||
| 53 | 山つつむ風の爽やか詩(うた)詠まむ | 泉 |
| <添削> 詩(うた)詠まむ一山の風爽やかに | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 54 | 草紅葉し石鎚山の風の音 | 菜の花 |
| <添削> 風の日の石鎚山の紅葉かな | ||
| <添削> 石鎚の風吹きおろす渓紅葉 | ||
| 草紅葉と石鎚山の取合せはあわないように思います。 | ||