平成19年11月 1日〜平成19年11月20日 投句分
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互 選 句
第 35回 披 講
          11月 添 削 と 寸 評
 
今月は若草句会が発足してから2年近くになりますが、いい句が大変
沢山あり、正直いって驚いています。皆さんの精進が確実に実ってい
ます。今後も精出してください。
 11月は暦の上では冬ですが、気候としては秋本番です。夜長に
句作りで時間を過ごすのもいいものです。
相変らず私なりの添削と寸評をします。ご了承ください。
  
番号     寸 評 & 添 削 俳 号
1 天高し神鈴の鳴り法螺の鳴り 彰 子
私の句です。出羽三山へ御参りしたときの句です。青空に法螺が
鳴り響いていました。
 
2 二百年経たる茶釜や文化の日 いなご
いい句です。由緒ある名器なのでしょう。その茶釜を使っての
茶会、いい茶会だったことでしょう。
 
3 穂薄や露天風呂より阿蘇五岳 コスモス
いい句です。露天風呂よりの阿蘇五岳の眺望がすばらしい。いい気分
になる。
 
4 鳥除けの工夫凝らして柿のれん 浩 風
いい句です。吊し柿がおいしそう。鳥除けのために凝った工夫をしている
のでしょう。どんな細工をしているのでしょうか。
広辞苑では「柿のれん」は「柿色にそめた暖簾。また「すだれ」とは
細い蘆または細く割った竹を糸で編み列ねて垂らすもの。とあります。
大歳時記の季語には「柿すだれ」があります。
<添削> 鳥除けの工夫凝らして柿すだれ
 
5 炉を囲み話の尽きぬ戦前派 さつき
いい句です。戦争の話でしょうか。尽きない話に夜も更ける。
今は平和でありがたい。
 
6 休耕田知るや知らずや泡立草 まこと
いい句です。泡立草ははびこるので嫌われますが泡立草に罪はあり
ません。泡立草は咲くときれいですよね。
 
7 小夜時雨つれづれのまま筆をとる  泉 
いい句です。どなたに送る手紙でしょうか、それとも習字の稽古でしょう
か。満ちたりたひととき。
 
8 黄落に埋もれてありし比翼塚 コスモス
いい句です。いい光景ですね。「黄落」と「比翼塚」の取り合せがよい。
「比翼塚」とは相思の男女を、いっしょに葬った塚のことです。
 
9 お茶席の子規の絶筆萩一枝  越
いい句です。子規は絵も上手でした。子規を偲んでのお茶席。いい
風情ですね。
 
10 初冬の日のやはらかし石地蔵  泉 
簡潔で素直ないい句です。石地蔵も心地好い穏やかな一日。
 
11 気がかりはその後の行方大かぼちゃ 楓 花
いい句です。大かぼちゃは大きさを競うものとして作られます。競技会
のあとは無用の長物で処分に困ることでしょう。その後の行方が気に
なりますね。
 
12 木犀の馥郁とした道続く 千 柳
いい句です。
<添削> 木犀の馥郁とした露地の奥
「道続く」を「露地の奥」と断定してみました。
 
13 秋の川鷺の子の足透き通る? 楓 花
いい句です。澄み切っている秋の川に鷺の子の足が美しく透きとうって
見え、しばし見詰めるのである。季語を下にもってきてみました。
<添削> 鷺の子の足透きとほる秋の川
 
14 戸無し門くぐりぬ桜紅葉かな  越
いい句です。咲いた桜はもちろん美しいが桜紅葉も美しいものです。
 
15 何事もなくて二人の卵酒 彰 子
私の句です。私は傘寿、家内は喜寿1年まえ。これからも仲良く
元気で平穏に暮らしていこう。
 
16 渋柿の色鮮やかや収穫す 浩 風
<添削> 渋柿の色鮮やかや白い雲
「収穫す」は付き過ぎになるのでこのようにしてみました。
収穫期を迎えた柿の色は鮮やかで鳥も寄ってくる。
 
17 一本のさくら紅葉や無人駅 媛 香
いい句です。一本のさくら紅葉が迎えてくれる無人駅。いつまでも咲き
続けてほしいと願う。
 
18 師走来る喪中の葉書に友しのぶ 菜の花
<添削> 師走来る喪中の葉書つぎつぎと
中八になっています。また「友しのぶ」は付くのでこのように詠んでみま
した。
 
19 青き星月より昇る秋の宵 そらまめ
いい句です。秋の美しい光景。しばし見とれる。
 
20 黒トマト色見て食欲今ひとつ 竹 豪
<添削> 黒トマト熟るる石鎚明らかに
詩情に乏しいと思います。私は「黒トマト」を知りません。トマトとしては異色の
色だが味はよいのではないでしょうか。トマトの向こうに石鎚がくっきりと見える。
 
21 故郷の祠にそそぐ十三夜 さつき
いい句です。故郷の小さな祠にそそぐ十三夜。子供のころ神社で遊ん
だことが懐かしく思い出される。
 
22 石手寺や朝のしじまに鵙の声 哲 朗
いい句です。毎朝石手寺へお参りしているが今朝は鵙がしきりに啼いている。
 
23 山ほどの渋柿妻と皮を剥く 浩 風
いい句です。作っている柿か、貰った柿か、皮を剥くのは大変です。
しかし干柿ができるのが楽しみです。
 
24 四万十の沈下橋ゆく遠千鳥  泉 
いい句です。四万十の沈下橋は有名。沈下橋から千鳥を眺めるのど
かな光景。
 
25 名を付けてそのまま残す案山子かな まこと
いい句です。なんという名前でしょうか。田園風景のひとこま。
 
26 ペダル踏む眼下の海の秋日和 哲 朗
いい句です。「海の秋日和」はどうかと思って季語を替えてみました。
<添削> ペダル踏む眼下の海の秋夕焼
 
27 崖に一戸離れて一戸冬に入る 彰 子
私の句です。妻の実家は三崎半島の崖の上にあります。蜜柑の取
り入れが終ると冬に入ります。
 
28 案山子立つ僕のお下がり似合ってる 竹 豪
いい句です。微笑ましい楽しい句ですね。
 
29 寝転びて冬の日差しに目を閉じる 千 柳
いい句です。至福のひととき。
 
30 電車通過大揺れ小揺れの瓢棚 コスモス
<添削>電車行く大きく揺るる青瓢箪
大歳時記には「瓢棚」という季語はありません。中八です。このように
詠んでみました。
 
31 柚もらう両手に包み匂ひ嗅ぐ 竹 豪
<添削> 青柚を両手に享けて嗅ぎにけり
広辞苑では「嗅ぐ」とは「鼻でにおいを感ずる」とあります。
「もらう」と「匂ひ」を省略しました。
 
32 音もなくもみじ散る日々古き寺 峰 生
<添削> 音もなくもみじ散りゐる古刹かな
調子が良くないのでこのように詠んでみました。
 
33 哲学の小径に秋の水走る  越
いい句です。哲学の径には琵琶湖疏水が流れています。紅葉を映して
美しい。
 
34 おざわが党首辞任や帰り花 そらまめ
<添削> 政界の大騒動や帰り花
世相の俳句は作り難いものです。うまく添削できません。悪しからず。
 
35 時雨きて孫と手を取り小走りに 菜の花
<添削> しぐるるや孫と駆け出す寺の道
説明的なのでこのように詠んでみました。
 
36 父の忌に来しかた語る夜長かな まこと
いい句です。尊敬する父の背中をみて生きてきた。父の話になると尽き
ない。
 
37 水引の白き咲きをり伊予の奥 菜の花
<添削> 水引の咲きをり伊予の奥の奥
「白き」を省略しました。
 
38 秋の蝶風の動きに逆らえず 哲 朗
いい句です。秋の蝶はよわよわしくて哀れを感じる。頑張って。
 
39 寒波来る天気予報に衣類出す 石の花
<添削> 寒波来る衣類取り出す桐箪笥
説明的なのでこのように詠んでみました。
 
40 檀の実ミニ盆栽や展示品 媛 香
<添削> 逆光のミニ盆栽の檀の実
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
 
41 友が逝くレクイエム聞く野菊咲く そらまめ
<添削> 友逝くやレクイエム聞く野紺菊
カトリック教会でのミサ曲が悲しくながれる。調子がよくないのでこの
ように詠んでみました。
 
42 リハビリに杖を頼りの冬の道 石の花
いい句です。リハビリに頑張って早く元気になってください。
 
43 自転車の籠に一枚初紅葉??   楓 花
いい句です。自転車の籠にひらひらと初紅葉?。ペタルを踏むのも軽?
やか。
 
44 とろ火燃ゆ厨の隅でおでん煮る 石の花
<添削> 一人居の厨の隅でおでん煮る
説明的なので「とろ火燃ゆ」を替えてこのように詠んでみました。
 
45 秋惜しむ喜寿坂越えた妻ともに 峰 生
いい句です。妻と苦楽を共にしてきた。いつまでも元気で仲良く。
 
46 寒風山トンネル抜けて初紅葉 さつき
いい句です。長い長いトンネルを抜けると眼前の紅葉が目にしみる。
 
47 十三夜そっと寄せ合う肩と肩 千 柳
<添削> 肩と肩そっと寄せ合ふ十三夜
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
 
48 山粧うまっただ中を歩きけり いなご
いい句です。紅葉に堪能したことでしょう。
<添削> 山粧ふまっただ中を歩きけり
 
49 遙かなる蒜山三座山粧ふ 媛 香
いい句です。山粧ふ蒜山三座が目に見えるようです。
 
50 付いて来る鹿に手のひら見せにけり いなご
いい句です。実感を素直に詠んでいます。
 
51 石鎚に天日の朝いわし雲 峰 生
<添削> 石鎚に天日上るいわし雲
「天日」とは太陽のこと。「天日の朝」が気になります。