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12月分添削と寸評 |
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今年の夏は本当に暑くまた残暑も厳しく秋の訪れが遅かったですね。 |
しかし気節は確実にやってきて師走ともなると我が家の山茶花は |
真っ盛りです。 早いもので若草句会が発足してから三年が立ちました。 |
相変らず私なりの添削と寸評をしてきましたが、皆様に支えられて楽しく |
過ごすことができありがたく思っています。来年もどうぞよろしくお願いします。 |
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番号 |
寸 評 と 添 削 |
1 |
一葉落つお仁王さまの仁王立ち |
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私の句です。仁王立ちのお仁王さまの前に桐の葉がふわりと落ちて秋の到来を感じる。 |
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2 |
年暮るる干支の置物バトンタッチ |
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<添削> 年逝くや干支の置物取りかえて |
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調子がよくないのでこのように詠んでみました。干支を取り替えて逝く年を惜しむ。 |
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3 |
プールにも銃魔が来たり年の暮 |
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<添削> プールにも銃魔が来たり年の暮 |
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詩的情緒に欠けると思います。考えてみて下さい。 |
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4 |
どこからか飛んで来たやら返り花 |
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<添削> 返り花どこから飛んで来たのやら |
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調子がよくないのでこのように詠んでみました。 |
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5 |
夕闇に紅葉映え来る灯をともす |
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情景がよく分りません。悪しからず。 |
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6 |
笹鳴きや妻を小声で呼びて待つ |
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いい句です。笹鳴きに妻と二人で耳を澄ませる。実感が出ています。 |
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「待つ」が省略できればさらに良くなります。 |
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7 |
おじぎしてつぎつぎ潜る鴨の群れ |
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いい句です。「おじぎして潜る」と言ったところが良い。 |
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8 |
一芸も忘年会に間に合わず |
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<添削> 一芸も今日のためにと年忘れ |
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詩情に欠けるのでこのように詠んでみました。うまく添削できなくて |
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御免なさい。 |
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9 |
菊花展菊詠む句にも賞が付く |
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説明的で何を詠みたいのかよく分かりません。悪しからず。 |
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10 |
大岩に二人凭りゐる雁の声 |
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私の句です。山頂での安らぎのひととき。 |
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11 |
忘年の句座に馴染みのチャボ来る |
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いい句です。句坐に馴染みのチャボがくるとは面白いですね。 |
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句会は楽しく終ったことでしょう。 |
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12 |
顔見世の矢来に二代目錦之助 |
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いい句です。二代目錦之助の顔見世興行の賑わいが見えるようです。 |
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13 |
年の瀬や餅つく音も寂れけり |
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<添削> 湯の町の餅つく音も寂れけり |
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「や」「けり」「かな」といった強い切字は二つ使わないように |
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しましょう。また「餅搗き」「年の瀬」は季重ねです。 |
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14 |
思い出の岬へつづく寒椿 |
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いい句です。初恋の頃の思い出か、新婚の頃の思い出か、寒椿が咲い |
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ていたあの頃が懐かしく思い出される。 |
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15 |
炉を吊す自在の講釈木彫鯛 |
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<添削> 炉に寄れば吊す自在の木彫鯛 |
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「炉を吊す」とはいかがなものでしょうか「。講釈」は省略したい。 |
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16 |
山茶花を散らして届く宅配便 |
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いい句です。宅配便に山茶花が散っているのでしょうか。宅配便は |
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古里の名物か。 |
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17 |
存(なが)らへば偽り多き年の暮れ |
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いい句です。今年の一語は「偽」でした。本当に安心のできない信頼 |
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のおけない世の中ですね。 |
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18 |
山茶花のピンクあでやかはいポーズ |
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<添削> ポーズとる紅山茶花のま正面 |
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調子がよくないのでこのように詠んでみました。 |
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19 |
おあたりと山の駅舎に長火鉢 |
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いい句です。長火鉢が暖かい。ほのぼのとした光景です。 |
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20 |
聖き風清き流れよ聖誕祭 |
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いい句です。清清しい句です。 |
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<添削> 清き風清き流れよ聖誕祭・・・・・・どちらが良いのでしょうか。 |
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21 |
種を採る急ぎて逝きし友のこと |
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いい句です。友から貰った花の種を採る。若くして亡くなった友が |
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偲ばれる。 |
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22 |
出雲路を妻とめぐりて冬うらら |
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いい句です。天候にも恵まれて楽しい旅行だったことでしょう。 |
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23 |
復元の「坊ちゃん列車」冬日差す |
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いい句です。「坊ちゃん列車」が美しく輝いている。 |
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24 |
闇求め流れ星観る寒さかな |
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<添削> 二人して流れ星観る寒さかな |
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「闇求め」はやや説明的なので省略してみました。 |
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25 |
紅葉谿スポットライトあびてをり |
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<添削> 谿紅葉スポットライトあびてをり |
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焦点をしぼってみました。紅葉が映える美しい光景。 |
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26 |
銀杏黄葉巨木の歴史を語る僧 |
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いい句です。老僧が巨木の銀杏を見上ながら熱心に語る。 |
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<添削> 銀杏黄葉の巨木の歴史語る僧 |
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27 |
水鳥の末広がりの水尾かな |
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いい句です。調子がいい句ですね。美しい光景が見えます。 |
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28 |
校庭に黄金を敷きて銀杏立つ |
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いい句です。一本の大銀杏が校庭を黄金染めている。 |
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<添削> 校庭を黄金色なす大銀杏 やや簡明に詠んでみました。 |
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29 |
日本四季三季となりて秋がとぶ |
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詩情に欠けます。考えてみてください。 |
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30 |
まつすぐに来る晩年よ冬薔薇 |
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私の句です。時が過ぎるのは早いものであっと言う間に年をとる。 |
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これからも頑張って生きていこう。 |
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31 |
目を凝らすイルミネーションの並木道 |
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<添削> 目を凝らすイルミネーション真冬道 |
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季語がありません。中八です。 |
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32 |
山嶺に輝き見せる冬日暮れ |
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<添削> 山嶺に輝き見せる冬落暉 |
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<添削> 山嶺に輝き見せる冬日かな |
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「冬日暮れ」はいかがなものかと思います。 |
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33 |
客ひとり三津の渡しの夕時雨 |
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いい句です。「三津の渡し」は古くからあります。地元の人にとって |
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はなくてはならないものです。昔は手漕ぎだったそうで風情があった |
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ことでしょう。 |
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34 |
風に沿い波に沿いたる千鳥かな |
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いい句です。調子がいいですね。千鳥の自由闊達がうらやましい。 |
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35 |
はちまきをきりりと締めて義士祭 |
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いい句です。義士祭が盛大に行われるのでしょう。松山の興聖寺でも |
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毎年義士祭りが行われます。 |
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36 |
寒き日は金魚も餌を残しおり |
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<添削> 寒き日の餌を残しゐる金魚かな |
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<添削> 寒き日や金魚は餌を残しゐる |
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やや説明的なのでこのように詠んでみました。 |
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37 |
老人の船に連れ添う冬かもめ |
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いい句です。老人は冬かもめに勇気ずけられます。 |
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38 |
まな板の音とんとんと年暮るる |
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いい句です。女の人は年末はことさら忙しい。おせち料理を作っている |
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のでしょうか。 |
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<添削> まな板のとんとんとんと年暮るる 「音」を省略。 |
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39 |
紅葉山天守は南向きて立つ |
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<添削> 夕紅葉天守は南向きて立つ |
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「紅葉山」ですと説明的なので「夕紅葉」に替えてみました。 |
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40 |
一年の苦楽を映し紅葉す |
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<添削> 一年の苦楽うつして夕紅葉 |
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切れが弱いのでこのように詠んでみました。 |
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41 |
冬山の銀山間歩を通り抜く |
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<添削> 冬ざるる銀山間歩の鑿の跡 |
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説明的なのでこのように詠んでみました。 |
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「間歩」とは坑道のこと。鑿跡に苦労が偲ばれる。最近世界文化遺産 |
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に登録された石見銀山のことでしょうか。 |
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42 |
ふるさとの山黒々と眠りけり |
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いい句です。過疎となった古里、静寂をしみじみ感じる。 |
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43 |
忘年会ことしも馬鹿なことをした |
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<添削> 年忘れいつものおはこ披露する。 |
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詩情に欠けます。毎年人気があるおはこを披露する。 |
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44 |
ほのぼのと湯気のもつれるおでん鍋 |
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いい句です。「湯気のもつれる」と詠んだところがおもしろい。 |
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45 |
元旦や何を誓うや此の一年 |
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<添削> 元旦の神鈴強く鳴らしけり |
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物がありません。俳句は物に託して詠みましょう。 |
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46 |
福寿草そっと一鉢日だまりへ |
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いい句です。可憐な福寿草への思いやり。 |
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47 |
羅漢像岩屋に拝す冬椿 |
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<添削> 羅漢像岩屋に拝す松の内 |
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「羅漢像」「岩屋」「冬椿」と物が多すぎます。「冬椿」を省略 |
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しました。 |
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48 |
行商を終えし老婆の駅火鉢 |
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いい句です。行商で疲れた体を火鉢で暖める。ありがたいことで |
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ある。ほのぼのとした光景。 |
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49 |
紅葉谷赤い欄干浮かび来る |
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句意がよく分かりません。悪しからず。 |
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50 |
干し柿の皮むく妻の刃はみごと |
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<添削> 過疎となる妻の生家の吊し柿 |
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「干柿」とは渋柿の皮をむき、干して甘くしたものです。また |
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「刃はみごと」となると焦点が「干柿」から移ります。 |
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51 |
散りつくすまで掃かず置く銀杏黄葉 |
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<添削> 電車行く銀杏黄葉を蹴散らして |
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「銀杏黄葉」は七音で下五にもってくるのはどうかと思います。 |
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52 |
少子化や大人も交じる亥の子唄 |
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いい句です。実感です。少子化対策が急務です。 |
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<添削> ふるさとの大人も交じる亥の子唄 |
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「少子化や」を替えてみました。 |
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53 |
初詣幸せ願う五円玉 |
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いい句です。五円玉で願いが叶うとはありがたい。今年もいい年で |
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ありますように。 |
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54 |
かかりつけマスク嫌いも順を待つ |
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句意がよく分かりません。考えてみてください。 |