平成17年6月1日〜平成17年6月20日 投句分
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互 選 句
第6回 披 講
6月分俳句の添削と寸評
いつものように私なりの偏見と独断に寄り添削と寸評をいたします。至らないところは
掲示板を活用してください。遠慮せずに掲示板へ投稿してください。
さて、早いもので若草句会が発足して半年が経ちました。発足にあたり数人の方には
強引に加入していただきました。その他の方もほとんどが俳句は初めてということでした。
句作りが思うようにならないときもあったと思いますが、よくここまでついてこられたと
思います。「継続は力なり」といいます。これからも続けてください。俳句は急にうまく
なるものではありません。長いスパンでみてください。一年後にはきっと俳句のよさが
分かってくると思います。そして俳句をやってきて良かったと思うようになります。
現にすこしずつ上達しています。
番号
1 突堤に青鷺一羽もの思い 
<添削> 突堤に青鷺一羽夏惜しむ 
   「鷺」は季語ではありません。またもの思いはどうかと思うので添削句のようにしてみました 
2 雨蛙雨が恋しと泣いている       
   いい句です。日照りがつづきます。雨蛙も雨が恋しいのでしょう。
3 空映し家映したる代田かな     
   いい句です。家は藁葺きでしょうか、のどかな田園風景です。
4 学び舎に歌は流れて夏は来ぬ
<添削> 学舎に歌の流るる五月晴  
   調子が悪いので添削句のようにしてみました。
5 湯上がりの項(うなじ)にそっと南風  
   いい句です。項はうなじの方がいいのか。艶めかしい風情です。
6 子だくさん餌を運ぶや親つばめ  
<添削> 曇り日の大忙しの親つばめ 
   三段切れになり、調子が悪いので添削句のようにしてみました。
7 梅雨晴れて餌をもとめし雀等は   
<添削> 梅雨晴間大忙しの親雀
   「梅雨晴れて」ですと説明になるので「梅雨晴間」にしました。
8 夕焼けにおおあくびして太公望   
<添削> 太公望あくびしてゐる大夕焼
   調子が悪いので添削句のようにしました。
9 巣立鳥落ちてもどかし飛べぬ羽根 
<添削> 巣立鳥落ちてもどかしおやつ時
   原句ですと説明になります。そしてあれこれ言ってごたごたします。俳句は簡潔がいいのです。
   そこで、「飛べぬ羽根」を除け「おやつ時」にしました。少しは簡潔になったでしょう。 
10 ここかしこ親子見てゐる田植かな
<添削> お田植を親子見てゐるここかしこ
<添削> そこここに親子見てゐる田植かな
   「ここかしこ」とは「ここやあしこ」という意味です。「ここかしこ」で小さくきれます。
   かな止めの場合は 一気に詠みたい。そこで「ここかしこ」を「そこここに」してみては。
   また「ここかしこ」を下五にもってきたほうが句が落ち着くように思います。素直ないい
   句になります。
11 青大将俺の行く手を阻みをり 
<添削> 青大将行く手を阻む帰り道 
   素直な句ですが、面白みが今一つ。「行くはよいよい帰りは怖い」です。
12 小判草風が小判の音作り   
   いい句です。小判の音とは澄んだ気持ちのよい音でしょうか。清々しい気分になる。
13 麦の秋川風ゆるく道遠し
<添削> 麦秋の川風ゆるむ散歩道 
   三段切れになります。したがって調子がよくありません。
14 月写り蛙コーラス田植え前
<添削> しんしんと月上りゐる田植時
<添削> 月映る蛙鳴きゐる隠し沼 
   「月」「蛙」「田植え」と季語です。「写る」は「映る」にしました。
15 遊覧船岩壁に立つ一羽の鵜
<添削> 離れ鵜の岸壁に立つ日暮時
   三段切れになり調子が悪いのでこのようにしてみました。。
16 青紫蘇を刻んでいたり昼餉時 
<添削> 青紫蘇をとんとん刻む妻の留守
   原句ですとあまりおもしろくありません。「とんとん」と音をいれて料理を楽しでいる様子を
   表現しました。
17 潔く決めたき朝岩菲咲く   
   「潔く決めたき朝」が私にはよく分かりません。悪しからず。
18 つばくろや口をあけあけ親を待つ
<添削> つばくろや顔いっぱいに口を開け
   親を待つと言わなくても、餌を待っている子つばめの表情が分かります。  
19 風かをる首なし地蔵ちょこなんと    
   私の句です。ちょっとした哀れを感じました。
20 郭公のこゑや山毛欅樺岳樺(ぶな、かば、だけかんば)   
   私の句です。滑床渓谷の奥山に登ったときの状況で、自然林が鬱蒼としていました。
21 万緑に心なごみし山の寺  
   いい句です。静寂のなか、万緑の山寺に立ち清々し気分になっている。
22 森深く静けさ破る不如帰(ほととぎす)
<添削> 森深む静けさ破るほととぎす   
   「不如帰」を使いたいですか、大歳時の例句では使われていません。「時鳥」か「ほととぎす」
   ではいけませんか。「森深む」でかるく切ったほうが臨場感がでるように思います。
23 竹林のさはさは風の涼しさに
<添削> 夏始まりぬ竹林のさわさわと
   「さわさわ」は「風に吹かれているさま」ですから「風」は除けたい。 
24 掛け替ふる山水の軸夏座敷 
<添削> 夫好む軸に掛け替ふ夏座敷    
   説明的になるので添削句のようにしてみました。このほうが詩情がでてくると思います
25 下手な字で新茶おくると故里の母    
   いい句です。いつまでも子を思うお母さん。たどたどしい字が懐かしい。いつまでもお元気で。
26 山寺の隅に紫陽花ひそと咲き
<添削> 山寺の隅に群れゐる七変化   
   「山寺」と「ひそ」は付きます。逆に「群れる」としてもおもしろいと思います。深閑とした山寺に
   あじさいが彩りを添えているのです。「紫陽花」のことを「七変化」ともいいます。
27 鶏の背伸びしてゐる炎天下   
   私の句です。近所の鶏が猛暑にもかかわらず背筋をぴんと伸ばして元気を誇っている。見習いたい。
28 蝙蝠や空にはばたくシルエット
<添削> 蝙蝠の空にはばたくシルエット
   「蝙蝠や」と切るのがいいのか、かるく「蝙蝠の」とするのがいいのか。 
29 青梅を漬けて今年もホッとする
<添削> 青梅を漬けて娘に便り書く 
   添削句では動きを表現してみました。梅を漬け終わったことを伝える。 
30 紫陽花や蕾ふくらむ梅雨の入り
<添削> 紫陽花を剪るや子供の笑い声
>   「紫陽花」「梅雨」は季重ねです。     
31 病みて知る妻ありてこそ花菖蒲
<添削> 病みて知る妻の存在花菖蒲
   「病みて知る妻ありてこそ」少し分かりにくいので添削句ように断定しました。 
32 髪切って梅雨の長きに備えたる      
   いい句です。 気持ちがよく伝わってきます。髪を切って清々しい気分になり鬱陶しい
   梅雨を乗りきろうとしているのです。頑張ってください。
33 巣立鳥飛ぶかまえして飛びきれず  
   いい句です。飛ぶようで飛ばない巣立鳥を愛情の眼差しで見つめている。飛び去っていくと
   寂しくなることでしょう。「かまえ」と「構え」、どちらがいいでしょうか。この場合は後者を使いたい。
34 万緑の中に突っ立つ山頭火句碑
<添削> 万緑の中や自筆の子規の句碑
<添削> 山頭火句碑に佇む草いきれ
   五七七で調子がよくありません。そして「句碑が突っ立つ」はどうかと思います。また、
   山頭火でなくてもいいのではないでしょうか。  
35 カルストや夏草原に羊かと     
   「羊かと」という意味がよく分かりません。悪しからず。
36 試運転のクーラーより落つ虫骸(むしむくろ)
<添削> 虫むくろ落つクーラーの試運転
   「クーラー」は比較的新しい季語で、歳時記によってはのっていません。おもしろい句だと
   思いますが、六八五になっています。
37 紫陽花の葉かげに蝶の雨やどり      
   「紫陽花」「蝶」は季重ねです。どちらか一つの季語で詠んでみてください。    
38 黒南風(くろはえ)が運ぶにおひはわらを焼く
<添削>  藁を焼く匂ひを運ぶ大南風
   「におひは」は「匂い」のことでしょう。「匂ひ」と漢字にしてください。「わら」も「藁」と漢字が
   いいと思います。明確になります。    
39 あじさいをパソコンにいれニンマリと
<添削>  紫陽花をパソコンにいれほくそ笑む
   新しい句でおもしろいと思います。自由に詠んでいいとは思いますが、俳句結社によっては
   問題になるかも。パソコンに紫陽花を取り込んで一人悦にいっている。            
40 紫陽花や一鉢ごとの七変化
<添削> 紫陽花や一鉢ごに違ふ色
   「紫陽花」のことを「七変化」ともいいます。従って季重ねになります。紫陽花は微妙に色が違います。    
41 暗闇にホタルの光すーっと飛び
<添削> 連れ立ちてホタル消えゆく闇の奥
   少し言い過ぎ。簡明にしましょう。家族連れのホタルが飛んでいる様子です。
42 水涸れてほたるの里や一つ消え
<添削> 故郷はほたるの里よ今宵また。
   「水涸れる」は冬の季語。したがって季重ねになります。水涸れてほたるの里が消えるのは
   当たり前になります。  
43 亡き父の本棚整理紙魚(しみ)にあい
<添削> 紙魚あとのとどめる父の愛読書 
   調子が悪いので直しました。  
   父は愛読家であった。沢山の蔵書を整理していたら紙魚にも出会ったのでしょう。
   父を懐かしく思いだす。
44 亡き父母と参りし寺に山躑躅  
<添削> 父母と訪ねし寺の七変化   
   亡き父母といわなくてもこれで分かると思います。父母と訪ねたときも紫陽花が一杯さいていた。
   思いだすのである。
45 雨をまつ真白きあじさいおじぎして
<添削> 紫陽花のおじぎしてゐる上天気 
   紫陽花の句には雨を使わないほうがいいそうです。それは付き過ぎるからです。
   「真白きあじさい」は中八になります。上天気で紫陽花も参っているのでしょう。   
46 恋猫に眉をしかめる独り者       
  面白い句です。恋猫にやっかんでいる独り者、みじめですね。早くいい人に巡り会うといいですね。
47 静けさにみずすましの輪幾重にも
<添削> まいまいの描く輪小さき風の中
   「静けさに」を「風の中」に替えてみました。考えてみて下さい。
48 入梅で水やり多忙花畑
<添削> 打ち水に忙しい夫の日曜日
   「お花畑」「水打つ」という季語があり、ちょっとまぎらわしい。「入梅で水やり多忙」は
   意味不明。日照り続きで、折角の日曜日も水やりで忙しい。
49 水張りて水無月の田の広さかな
<添削> 水無月の田んぼ広がる風の中
   「田水張る」という季語があります。そこで「水張りて」を除けました。
50 生まゴミを山でカラスの雛が待つ
<添削> 生ゴミを狙うカラスの鋭き眼
   俳句は詩的情緒を大事に考えます。感動するものを詠みましょう。
51 田水満ちよろず命の蘇る
<添削> 田水満ちよろずの命蘇る
   「よろず命」という言葉はないと思います。「よろずの命」としましょう。
   いい句です。心象的な俳句はむずかしです。私は苦手です。